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Posted by ミリタリーブログ at

2022年07月24日

警備について(2)


 では今回の事件において、負傷した警護対象者の救護と犯人の制圧・確保は適切に行われたのか?正直言って結果オーライであり、今回の対応例は決して教科書とすることは出来ません。その理由は、二次攻撃への対処能力が見られなかったからです。

 犯人を確保した後、警備要員や他の選挙スタッフなどが現場周辺の人や車の動きを止めてはいましたが、あの人数では仮に波状攻撃を受けた場合は持ち堪えられません。もちろん現職の総理や各国首脳と同じ程度の脅威レベルに晒されていないとしても、逮捕された犯人がローンウルフでなかったとしたら?逮捕された犯人は囮であり、聴衆の中に主攻が潜んでいたら?


 もう一つは緊急医療体制にあります。色々な人間の思惑や利権が複雑に絡み合う「選挙」といった戦いの中で、今回の様な暗殺までは行かなくとも襲撃事件は過去にも存在しています。そのような襲撃があった場合、負傷した警護対象者が更なる負傷を負わない様にするためには速やかにより安全な場所へ移動させる必要があります。もし一次救命に多少の時間を必要とするのであれば、その間は警護チームで回りを囲む必要があります。何故か?上で述べたように、二次攻撃の可能性が残っているからです。

 警護チーム全員が1人の犯人の制圧・確保に集中している。救護チーム全員が負傷者にだけ集中している。これでは警護担当と救護担当がそれぞれ1名ずつ存在することと本質的に変わりがありません。複数の目で異なる物(と者)を見て、複数の頭であらゆる事を想定して次の行動への対策を練ることが出来てこそ、初めてチームとしての存在意義が生まれます。Target Fixationと呼ばれますが、一点に集中してしまうと、自分で自分の視野や思考を狭めてしまうことになります。


 単独犯によるローンウルフ的な犯行であったことが不幸中の幸いでしたが、高い脅威レベルに置かれている対象者を警護するPSDチームでも練度が低いと同じ問題を起こします。特にPSDチームを必要とするような警護対象者の場合、襲撃を計画する相手側の武装レベル、人数、そして戦術は今回の犯行の様なものとは桁違いです。

 なお最後に、一般人として今回のような襲撃事件の現場に居合わせてしまった場合、何が起こったのかを気にして野次馬的にその場に留まっていると波状攻撃の餌食になる危険性が高まります。流れ弾だけでなく、爆発物を用いた二次攻撃も想定されますので、生存率を上げるには速やかに現場から離れて下さい。

終わり
  

Posted by Shadow Warriors Training at 14:14小ネタ

2022年07月11日

警備について(1)


 本来であれば射撃術に関するブログを書く予定でしたが、頭の狂った気違いによる安倍晋三元総理の暗殺事件を受けて、トピックを変更することにしました。

 動員する警備要員の規模が本当に必要なのか?脅威見積もりは本当に正しいのか?警備任務では費用対効果が常に問われます。選挙はパブリック・イメージを重視しますので、制服・私服を含め大勢の警察官で対象者を囲むことはしません。しかし、今回の応援演説は急遽決まったこととは言え、背後に隙を生じさせたことは疑う余地もありません。

 暗殺の予兆や情報を掴んで事前に抑えることは可能ですが、実行そのものを抑えることは残念ながら不可能です。ですがTarget Hardeningを行うことで実行を延期させたり諦めさせることは可能です。Target Hardeningとは簡単に言えば警備態勢の強化ですが、多くの制服警察官の姿を見せたり、入場時の手荷物検査を実施なども含まれます。現に今回の犯人は岡山での演説時には手荷物検査が行われていたことから実行を諦めたと供述しています。

 しかしながら発生してしまった場合、何が出来るのか?大きく分けては警護対象者の救護と犯人の確保です。今回の事件では犯人の確保は素早く行われましたが、1981年3月に発生したレーガン大統領暗殺未遂事件を思い出させる感じでした。狙撃は別として、確実に被弾させるために犯人は至近距離まで近づこうとします。よって、射撃による応戦よりも突進してタックルする制圧が最も素早く効果的です。また、多数の聴衆が周囲にいる状況では警護員も射撃は出来ません。


(2)へ続く
  

Posted by Shadow Warriors Training at 00:38小ネタ