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Posted by ミリタリーブログ at

2015年11月29日

テロ攻撃からのサバイバル(2)


 現場にたまたま居合わせた民間人としてテロの犠牲者になることを必死で逃れ生き残るには、敵の弾が届かない(又は、敵の命中精度が落ちる)場所まで逃げるか、敵の弾を防ぐ強固な遮蔽物の陰に隠れるか、一般的には選択肢はこの2つです。何れも不可能でテロリストが眼前まで迫っていたら?最後の手段は持ち物やその場にある物を手あたり次第に活用して、反撃するしかありません。アクティブ・シューターへの対応策である「Escape, Shelter in, Fight back」と同じです。ただし、反撃するなら中途半端なことは避けるべきです。素手であろうが道具を使おうが、テロリストの戦闘能力を奪うまで徹底的にやる必要があります。

 逃げる際はどこまで逃げるべきか?具体的な距離を示すことは不可能ですが、離れられるだけ離れるべきです。被害を免れた人々が警察の張った規制線の外側に集まって惨事の犠牲者に対して涙を流している光景がよくニュース映像などで見られますが、爆処理が現場の安全を確保しない限りその場に留まるのは危険過ぎます。最近の自爆テロのケースでは、離れた位置から攻撃の様子を観察し、自爆の失敗が確認された際にリモート起爆することを任務とした遠隔起爆係りの存在が確認されています。また、多くの人が一時的な避難場所として使用するであろうと思われる場所に予め爆発物を仕掛けておき、最初の現場から避難してきた人が集まったのを確認して起爆させる2次的な爆発物(Secondary Device)もテロリストの戦術として確認されています。よって、逃げるなら現場からとことん遠くまで逃げ切るのが鉄則です。

 そして逃げるにせよ隠れるにせよ戦うにせよ、自身が傷を負った場合を想定して最低限の救急処置が出来る様に訓練を受け、普段から救急キットを携帯しておく必要があります。現場に上の写真のような武装警官隊が駆け付けるのは第1報から相当な時間が経過してからです。更に彼らによる対処が終わらない限り、下の写真のような救急チームは規制エリア内に入ってきません。
 

 現場の安全が確保され救急隊が到着するまでは、自分の身の回りにある物と自分の持つスキルだけでなんとかしなければなりません。私はアメリカだけでなく頻繁に海外に行きますが、日本とは勝手が違い何が起こるか分かりませんので、最低限のコンバット・ライフセーバー・キットは常にカバンに入れて持ち歩いています。幸いにしてこれまでにテロやアクティブ・シューターに巻き込まれた経験はありませんが、事が起こってからどうするか考えるのでは遅すぎますので、普段からリスクを予想して対応策を練り、最低限の対処が出来る準備をしています。人生でその様な惨事に遭う確率はもしかすると1%にも満たないかも知れませんが、その1%が明日起こらない保障はゼロだからです。

 民間人としてテロの犠牲者にならないように行動するにせよ、軍人や警察官としてテロリストと対峙するにせよ、根底にある目標は同じ「生き残る」ことです。その為に必要な基本中の基本は、本人の心構え(Mindset)です。これがなければ、準備も対応も始まりませんし出来ません。この心構えがない状態が俗に言う「平和ボケ」です。サバイバルに最低限必要なものは「心構え」です。「心構え」なしでは、メディカルキットといった道具も「Escape, Shelter in, Fight back」といった戦術も全く役に立ちません。
終わり
  

Posted by Shadow Warriors Training at 21:00小ネタ

2015年11月22日

テロ攻撃からのサバイバル(1)


 パリで発生したテロから1週間が経ちましたが、別の都市での攻撃が予測されるとの具体的な情報が流れてヨーロッパのあちこちで警戒レベルが上げられています。アメリカ人からは「民間人が普段銃を携行しないから、反撃が出来ないんだ」との声も聞こえてきます。銃器所持の合法化を望む人の間では「こういった事態に巻き込まれた際に、周りの人を助けるために銃が必要だ」との声も上がっています。しかしこれらは私に言わせればナンセンスです。その理由は、
 1)攻撃を受けた時点で既に後手に回っているので、1人のアクティブ・シューター相手ならまだしも、複数のテロリストによる連携された攻撃に対しては戦術を理解していない民間人には到底無理である。(注:射撃が上手いのと戦術を理解しているのは、全く別次元の話です。)
 2)パニックに陥った群集の渦中にいながら、動き回るテロリストに対して逃げ惑う人々の間をぬって正確にバイタルエリアに命中させる技術は、射的場で紙の的の中心に弾を当てる遊びとは全く別次元の技術が必要である。(例えば、上の写真のこちら側に自動小銃を乱射しているテロリストがいて、写真の向こう側から射撃して正確に命中させれるかどうか考えてみて下さい。)
 3)銃器を携帯していた複数の民間人が応戦を開始したところで、自分以外の銃を撃っている者が敵なのか味方なのかを判別するのは極めて困難である。
です。反撃は全ての選択肢を失った場合に行う、命を懸けた最後の手段であることを理解すべきです。

 アクティブ・シューターやテロ攻撃から身を護るために最も重要であるものの、実に多くの人々が自ら放棄しているものがあります。それは警戒心です。なにもビクビクしながら壁を背にして常に周りを見ていろとは言いません。街を歩いていようが、レストランで食事を摂っていようが、スマホを見入っていたり、会話に夢中で周りの異常に気付かないと次の行動に移るまでの初動が遅れてしまいます。いや、初動が遅れる程度ならまだましでしょう。気付かないことで最初の標的になってしまう可能性が高いかも知れません。

 そして異常に気付いたのであれば、悩んだり躊躇したりすることなく、さっさと行動を開始すること。身を護るための最善の方法は、その場から素早く逃げることです。気付くのが遅いとパニックに陥った群集に巻き込まれて、右往左往することになります。他人を助けたい気持ちは分かりますが、「自分は死んでも良いから誰かを助けたい」との強い気持ちがないのであれば、民間人は逃げるのが第1の選択肢です。

 もし敵が近付き過ぎて逃げることが難しいのであれば、強固な壁などに囲われた場所に逃げ込んで、バリケードなどを配置して敵の侵入を防ぐのが第2の選択肢です。例えば、レストランで食事中に襲われて正面入り口から逃げることが時間的に無理と判断した場合、ただ単に床に伏せて事が過ぎるのを待ちますか?私なら厨房を抜けて裏口へと進むか、ホールではなく厨房に隠れます。人は日頃から刷り込まれた行動や考え方の通りにしか行動出来ない生き物です。「関係者以外立入禁止」と書かれている扉は開けてはいけないと自分で自分の脳裏に刷り込んでいると、緊急時の避難ルートとしてその扉を開けることは選択肢として脳が認識しません。

 ここで私が挙げた厨房の例は、「客が入れない」場所ではなく「客が通常は入らない」場所である、と少し世間とは異なる考え方を普段から持つ必要性を述べています。また、第1の選択肢を選んで逃げる場合でも、「公園内車両通行禁止」となっている公園を抜けきった方がいち早く脅威から離れることが出来るのであれば、躊躇することなく公園を車両で突っ切ることを普段から想定しておく必要があります。ルールや法律を厳格に守って命を失うのと、ルールや法律を破ったことを後々責められるが生き延びたのと、どちらが自分にとって良いかを天秤に掛けて下さい。答えは決まっていると思いますが。

 「無抵抗な人間には攻撃はしてこないはず」や、「話せば分かるはず」などといった考え方は脳内に虫が湧いたご都合主義の連中が自らの理想論を述べる際に語る妄想です。アクティブ・シューターやテロリストは人をコントロールすることを望みます。よって無抵抗な人間は格好の餌となります。連中にとっては、中途半端に反撃する者も無抵抗な者も殺害対象であることを忘れないことです。また、交渉して理解を得ることを選択肢として考えている能天気な連中に次の質問を投げかけます。「何語で?」

(2)へ続く
  

Posted by Shadow Warriors Training at 23:31小ネタ

2015年11月14日

フランス非常事態宣言


 またしても聖戦の犠牲者が出ました。パリ市内で発生した同時多発テロにより、フランス全土に非常事態宣言が出され軍も動員されています。世界各地で狂信的なイスラム教徒や原理主義者による一般市民を標的としてテロ行為が後を絶ちませんが、こうなれば結局オサマ・ビン・ラディンを始めとした原理主義者のリーダー達を排除したのは何のためであったのか疑問が残るのも無理ではありません。当初は一部地域での激しい運動であったジハードも今や全世界規模で広がりを見せ、各地で単独の事件や複数のグループが共謀した事件が頻発するようになってしまいました。

 では、何故フランスが狙われるのか?決して軍や警察が弱いために国そのものが「ソフト・ターゲット」に選ばれている訳ではありません。フランスがイスラム原理主義者グループに狙われる理由は、フランスが西側社会の象徴的存在であるからです。フランスのモットーである自由・平等・博愛の精神は、自由の国と呼ばれるアメリカの考え方の母体にもなっています。単に軍事的や政治的な意味合いを重視したテロであればアメリカが1番の標的に選ばれますが、近代的西側社会の「価値観」を敵対視した攻撃であることからその発祥であり象徴であるフランスが狙われ続けているのです。

 この事件の1ヶ月程前には、フランスとドイツの国家警察機関と情報機関との間において、フランス国内でのテロ計画が進行中であり攻撃は時間の問題であることが認識されていました。その端緒となったのは、潜在的テロリストやテロ支援者への捜査において、フランス軍の弾薬施設から盗難の報告が上がっていた爆薬を用いて製造された手製爆弾が不発の状態で発見されたことにあります。両国の専門機関は確実に攻撃が行われることを予測は出来ていたものの、実際の標的が民間人となるか軍・警察組織となるかについては確証を得られないまま13日の事件を迎えてしまいました。

 次回は民間人としての、乱射や爆発物への対処法について述べたいと思います。  

Posted by Shadow Warriors Training at 14:23小ネタ

2015年11月01日

戦術的選択(3)


 では何故、現場レベルではどこまで乱暴に扱えば銃が正常に作動しない程度まで壊れるのかを具体的に知らないのか?それは開発から配備に至る過程に問題があるからです。実戦的な考え方をベースに銃器を開発する際は、発注元の官庁が要求する諸元などを満たすだけでなく、使用する部隊の作戦環境や取扱い方まで考慮に入れます。銃器にとって劣悪な環境を再現して度重なるテストを繰り返すことで、実戦向けの銃が開発されます。

 反面、銃器マニアに毛が生えた程度のエンジニアが開発・設計した場合、形や格好といった戦闘に必要のない要素に重きが置かれ、ロクな耐久テストも経ないまま、結果として欠陥品の様な銃が配備されることになります。発注した官庁も諸元は満たしているので特に文句を言うこともなく易々と納品を認め、配備された部隊ではビニールテープで部品の脱落防止を図るといった軍隊の一般常識からはかけ離れた裏技を強いられることになります。なぜ開発から納品までの間に崖から落としたり、泥沼に落としたり、砂に埋もれさせたりといったテストが行われないのか?それは開発者も発注者もそこまでの劣悪な環境に銃が晒されることを想定していないからであり、裏を返せば、徹底して物品愛護を言い聞かせているのでその様な環境に銃が晒されるはずがないといった根拠のない自信を基に、開発担当者にその様なテストを要求する必要性も感じていないからです。

 SWTにはこれまで多くのプロの方々がトレーニングを受けに来て下さいました。彼らは皆、イザという時に「戦術的に正しい選択肢」を選べることを目指して、官庁の訓練では決して実施されないトレーニングを目当てに来て頂いています。非常に向上心の高い方ばかりで頭が下がるのですが、本音を言うとその目的を達成するためには、装備を開発する者・訓練を担当する者・訓練を基に装備を発注する者にトレーニングを受けて欲しいと思っています。その様な実戦的な訓練の経験がないことからどういったことが実際に起こり得るのかが分からず、そのフィードバックがないことからどの様な性能や諸元を求められるべきか分からず、その様な要求がないことからどの様にして製品を研究開発すれば良いのかが分からない。これが結果として、装備品の性能の限界が分からないまま腫物に触れるように扱わざるを得ない特殊な環境を生み出す1つの要因となっています。

 念の為に言っておきますが、私は税金で調達した装備品を乱暴に取り扱うことを推奨している訳ではありません。私は、必要に応じて考え方を変えないと物を大事にしてしまうことで命を粗末にしてしまう結果に繋がる危険性を指摘しているだけです。前にも述べたとおり、人間はパターンで行動する動物であり、刷り込まれた行動パターン以外は咄嗟の場合に取れません。物品愛護の精神は大事ですが、それよりも大事なものがあることも同様に述べて対処要領を訓練しておかないと、隊員にとって最も好ましくない結果が起こるのは目に見えています。まあ、いくら声を荒げても、我々下っ端の代わりはいくらでもいるとお考えでしょうから、結局のところ上層部にとっては関係のないことでしょうが...

終わり
  

Posted by Shadow Warriors Training at 22:26小ネタ