2017年02月28日
新コース追加しました

永らくお待たせ致しました。プロ用コースに新コースを追加しました。SUT-Basicの次のレベルで、伏撃・対伏撃に特化したコース(SUT-Ambush & Counter Ambush)です。
内容を簡単に言えば、
独立した、あるいは本隊から離れて行動する戦闘パトロール等に従事する小規模部隊に最低限必要とされる、伏撃に対する各種対処要領と、敵性勢力に対する伏撃・反撃要領
を訓練するコースです。
陸上戦闘技術を主として訓練する部隊以外に所属される方はもちろん、軍事訓練を受けたテロリストやゲリラが如何にして攻撃を計画・実行するかを学習したい公安職の方にもお勧め致します。
詳しくはこちらをどうぞ。
2017年02月19日
リーダーシップとトレーニングについて(2)

では、LP(レッスンプラン)が前回述べた3点を満たしたのであれば、次に何を準備するのか?先ず必要なことは、個々の訓練項目やドリルに明確な評価基準を設けることです。やるべきこと・やってはいけないことを明確に列記して、訓練を受ける者がそれら基準に達したか否かを判定する材料とします。これがないと、「とりあえず与えられた時間を使って色々やりました」で終わってしまいます。訓練の目的は決められた時限数を履修することではなく、訓練項目の持つ課題をこなして知識・技術を習得させることにあります。よって、教えっぱなし・やらせっぱなしでは意味がありません。訓練生のパフォーマンスを評価する基準を設け記録することで、訓練生の理解度・習得度を判別しなければなりません。
これには2つの利点があります。1つ目は個々の訓練生が受けた訓練の内容とパフォーマンスを記録として残せることです。幾ら訓練を重ねてたところで記録が残っていない様であれば、書類上では全く訓練をしていない事と同じになります。知識的・技術的に優れた隊員を育てたところで公式な訓練記録がないようであれば、書類上では彼らは元々優れていたか、個人の努力で上達したと思われても仕方がありません。一見するとこの「書類上での記録」は馬鹿げているように思えますが、後に公務中に実力を行使する状況が発生した場合、その状況で隊員が行った行為(或は行わなかった行為)が裁判で争われることになるからです。その際に一切の訓練記録が無いのであれば、それは訓練すら無かったと結論付けられても反論する材料がなく、隊員だけでなく組織にも法的責任といった大きなダメージが与えられます。
もう1つは訓練生の抱える問題の改善に繋がることです。パフォーマンスの内容を細かく評価することで、「何が間違っていたか」を明確に指導陣で共有するだけでなく、訓練生も見えることになります。ここでの細かい評価は決して訓練生の間違いを指摘して叱責するための材料ではありません。ここでの評価結果は、訓練生に間違いを気付かせ、再訓練に必要なポイントを絞ることにあります。
なお、その際は一方的に間違っていたポイントを説明するのではなく、自分が何をどうしたか?何故そうしたか?を訓練生の口で語らせることが重要です。人間は間違いを一方的に指摘されると反感を抱いたり心を閉ざしたりします。また、一方的に言われた内容は脳裏に深く(長く)残りません。反対に自分で思い起させたり考え直させ、自らの行動と思考を再考証させると、正しいことに気付いた場合にその内容が強烈に脳裏に残ります。教官は単に正解を教えるだけの存在ではなく、間違いの中から正解を導き出す手助けをする存在でなくてはなりません。心理学の専門家である必要はありませんが、教わる側の心理を理解する必要はあります。
従って、指導者やコーチを育成するには、教える内容を決めるだけで終わるのではなく、教え方により重きを置くことが重要になります。
(3)へ続く
2017年02月07日
リーダーシップとトレーニングについて(1)

トレーニングとリーダーシップには密接な関係性があります。ひとりの受けてとして訓練に参加しているとあまり気付かないことかも知れませんが、リーダーの立場に立つとその関係を痛感することになります。また、リーダーの立場にはないがトレーニングの内容やあり方について模索している人にとっては、自身のトレーニングへの考え方が他に伝わらないことや既存のリーダーのトレーニングに対する考え方・やり方にもどかしく感じたりしているかと思います。
これまでSWTでは、一般隊員から中堅隊員、そして初級幹部に至るまで多くの警察官・自衛官の方々にトレーニングを受けて頂きましたが、全員に共通して言えるのはトレーニングに前向きで、新しい内容に貪欲であるという事です。ただ同時に、所属する部隊でのトレーニングのやり方に疑問を感じていたり、内容ややり方に試行錯誤を繰り返されていることが見受けられます。そこで、リーダーやインストラクターを養成する様な大それたことは私には出来ませんので、もしかすると為になるかも知れないSWT的リーダーシップ論・教育論を述べさせて頂きたいと思います。
先ずは、リーダーシップとトレーニングの関係性について。必ずしもリーダーが全てのトレーニングを担当する必要はありません。リーダーシップの数ある重要な要素の1つに委任(Delegation)があります。隊歴の長い隊員や曹などは実体験が豊富であり、良いコーチやインストラクターに成り得ることがあります。そこで彼らに専門分野を任せることでより内容の深いことを全体に伝えることが期待出来ますが、問題はその内容と個々の素質です。リーダーは彼らの素質を分析し、人に物事を教えることが出来る人物かを見極めることが要求されます。人に物事を教えるに相応しい人物とは、一言で説明するのは難しいですが、強いて表すなら規律と研鑽と自己批判のバランスがとれた人物が該当すると思います。規律とは自らを律して口だけでなく行動によって他に見本を示すことであり、研鑽とは絶えず努力を怠らず知識と技術の維持と向上に努めることであり、自己批判とは自らの弱点を把握してその短所の克服に努めることです。
リーダーはその様な人物を見つけ出すか、訓練して作り上げることで、自らの分身として部隊のトレーニングを任せられる存在へと教育することが求められます。何故なら、彼らが豊富な知識と経験を有するだけでなく、リーダー自身が全てを担当するのは物理的にも不可能であるからです。人選が済めば次の段階は訓練/教育内容の確認と内容の統一化に努めます。トレーニングはその内容が最新の事象に関連しているか?自分たちの置かれた状況や法的根拠、能力などに沿っているか?自分たちが遭遇し得る現実的な状況を想定しているか?の3点を満たしている必要があります。よってリーダーは実際に部下にトレーニングを任せる前に、その内容をチェックし必要であれば修正する必要があります。これを怠ると、全くもって関連性も現実性もない内容の「お遊び」に部隊を付き合わせることになってしまいます。
(2)へ続く