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Posted by ミリタリーブログ at

2021年11月22日

Shooting 対 Fighting (5)


 トレーニングにより果たして「正しいクセ」がインプットされているのか?極端な悪い例を紹介しましょう。

 以前FBIではピストルの検定項目にダブルタップでの射撃がありました。合図があればホルスターからピストルを抜き、標的に対しダブルタップで射撃し、ピストルをホルスターに収める。典型的なドリルの例ですが、これを繰り返すうちに一連の流れが脳裏と身体に染みついてしまい、実際の現場で武装強盗と撃ち合いになった際にFBIエージェントがダブルタップで強盗を撃った後に銃をホルスターに収めてしまいました。まだ強盗が無力化されていないにもかかわらずホルスターに銃を収めてしまったばかりに、そのFBIエージェントは強盗に撃たれて死亡しました。

 また、信じられない話ですが、格闘の末に犯人から銃を奪い取ったFBIエージェントが奪い取った銃を犯人に手渡してしまった事例もあります。これは普段の格闘訓練において奪い取ったナイフや銃を次のドリルのために訓練相手に返すことを繰り返していたことから、実戦の場においても無意識に身体がそうしてしまった事から起こりました。

 射撃訓練によく見られる「悪いクセ」の原因となる行為の例を挙げると、

・弾切れを起こした際に空弾倉を捨てて速やかに新しい弾倉を装填することなく、空弾倉をポケット、ダンプポーチ、マガジンポーチなどに入れる。
 →戦闘の継続より物品愛護を優先している。
・一発撃つごとに着弾を確認するために銃口を下げる。
 →敵の無力化よりも命中精度だけを気にしている。
・的を外した際に外したことを悔いたり反省するだけで終わる。
 →命中するまで撃ち続ける(敵を倒すまで撃ち続ける)マインドセットが植え付けられない。
・姿勢を変えたり移動することなく突っ立ったまま射撃する。
 →撃たれ難くすることを意識せず、撃つことだけを意識している。
・弾切れや故障が発生した際に、弾倉交換や故障排除だけを行っている。
 →撃たれ難くするために遮蔽を活用することを疎かにしている。

などがあります。普段の訓練は単なるShootingが目的ですか?それともFightingを目的としていますか?

(6)へ続く
  

Posted by Shadow Warriors Training at 00:38小ネタ

2021年11月11日

Shooting 対 Fighting (4)


 Fightingに必要なマインドセットを醸成するには、普段からFightingを意識してトレーニングする必要があります。「常在戦場」とよく言われますが、口先だけに終わることなく本当に殺し合いを生き残るために何が必要か常々意識しながらトレーニングをしなければ、極限の状況において満足できるパフォーマンスは発揮されません。

 では極限の状況下ではどのようなパフォーマンスが発揮されるべきなのか?遮蔽物の陰に入ったり、手元を見ずに弾倉交換を実施することで間隙を生じさせることなく攻撃を継続しり、攻撃と機動を効果的に織り交ぜたり、考えなくとも無意識のうちに身体が勝手に動くことを「オートパイロット(自動操縦)」と言いますが、身体が正しく自動操縦されるか否かは普段のトレーニングにかかっています。と言うのも、その様な行動は普段のトレーニングによって脳と体に染みついていることから自動的に発揮される訳で、その様な動きをトレーニングしていない場合は脳にも体にもその様な行動は「選択肢」として蓄積されていません。

 この蓄積された選択肢が生存に必要な「クセ」です。悲しいかな人間はパターンに支配された生き物です。例えば、着替えや運転など普段していることは深く考えずともスムーズに実行することが出来ますが、ロープレスキューなど普段あまり訓練しないことは考えながら動かないとスムーズな実行は困難です。

 海外のスクールでトレーニングを受けた時の話ですが、軍人や警察官(現職、元を含む)だけでなく民間人も混じった戦術コースの初日に森林地帯でパトロールをしていました。教官のタイミングで仕掛けられた爆薬が破裂しそれを合図にカウンターアンブッシュを実行するのがドリルの課題でしたが、民間人の参加者は射撃の腕前は素晴らしかったのですが全員がその場から射撃を開始するだけでした。反面、軍人・警察官の参加者は全員が身を伏せたり遮蔽物の陰に入りながら応戦を開始しました。このShootingとFightingの差は明らかで、軍人・警察官は普段の訓練から遮蔽と応戦を組み合わせることが「クセ」として染み付いていたから言われなくとも実行出来た訳です。ですが、1週間のトレーニングの中で何度も何度も様々な状況下でドリルを繰り返すことで、最終想定では民間人の参加者も遜色のない動きが出来るまでに至りました。

 これが彼らに長い期間「クセ」として染み付くか否かは継続的なトレーニングに委ねられるのですが、たった1週間の集中トレーニングでも「クセ」を染み付かせることは出来ます。しかしどの様な内容のトレーニングであれ、「正しいクセ」がインプットされるか否かといった問題は消えてなくなりません。

(5)へ続く
  

Posted by Shadow Warriors Training at 08:54小ネタ