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Posted by ミリタリーブログ at

2022年05月22日

ウクライナ侵攻に見る情報戦・心理戦について(1)


 この度のロシアによるウクライナ侵攻はTikTok戦争とも揶揄される様に、互いに情報を出し合う情報戦が活発に行われています。そこで今回は情報戦・心理戦について書いていこうと思います。

 先ずは心理戦について。心理作戦とは、敵性政府や勢力の意志や行動に影響を与えるものであり、特に相手の弱点に付け込んで、情報戦と一体化して実行されるものですが、いわゆる人心掌握(Hearts and Minds)をもって銃火を交えることなく勝利することを目的としています。

 湾岸戦争(Desert Storm)において米軍がイラク軍に投稿を促す宣伝工作を行ったことで、多数のイラク兵が米軍を中心として参加した多国籍軍に投降しました。その結果、イラク軍の将兵の犠牲も減り、人々が生活するエリアの破壊も軽減されました。そうすることで殺戮と破壊をもたらさずクウェートを解放した実績と印象を敵国だけでなく世界にも与えることが出来ました。因みに、米軍によるパナマ侵攻の際に立て籠もるノリエガ将軍の精神面を打ち砕いたのは、心理戦大隊による功績です。

 なお、人心掌握を戦術とする心理戦は戦時だけでなく、アメリカ大統領選挙の際にロシア側が偽情報を流すなどして選挙結果を左右させようとした例の様に平時から日常的に行われます。それには誤情報、偽情報、対立意見などによる印象操作などが含まれます。

 心理戦のステップとしては、第1にターゲット・オーディエンスが誰であるかを定めます(分析にはASCOPE/PMESIIといったものを用いたりしますが、話しが長くなるのでここでは割愛させて頂きます)。相手が決まれば第2ステップとして敵を投降させる。民間人を味方にして敵の行動に制限をかけるなど、心理戦の作戦目標を定めます。第3ステップは、心理戦を効果的に実行するための相手の脆弱性を特定します。敵国の住民を味方につけることを例とすれば、食糧難が最大の目的であれば食糧支援を行ったり、ライフラインが不安定であれば発電や給水システムの補修を行うなどします。そして第4ステップとして、相手の印象を操作するための情報の提供方法を定めます。食料支援やライフライン整備などの成果や実績などを発信するのであれば、新聞を介してか、テレビを用いるのか、SNSを利用するのか、ターゲット・オーディエンスごとに定めます。そして第5ステップとして情報提供に用いる「道具」を定めます。ビラ、ラジオメッセージ、TikTok動画など、オーディエンスと方法に応じて異なります。第6ステップは、相手の文化や法律などのタブーに触れないようにそれら「道具」の中身を精査します。このステップを誤ると宣伝工作が全く意味を成さず、逆に全てを敵に回すことになります。そして、第7ステップとして、情報提供に用いる「道具」を作成します。なお、「道具」として発信するメッセージは、相手への伝わりやすさ、簡潔性、口調などのチェック項目を満たす必要があります。それらを満たさないと、折角苦心してメッセージを流したにも関わらず、誰も聞かない、誰も応じないといったことになります。第8ステップは定めたターゲット・オーディエンスにメッセージを提供し、第9ステップとして短期的・中期的・長期的効果を評価し、最後に第10ステップとして効果に応じて「道具」を代えたりメッセージの内容を代えたりとアジャストします。

(2)へ続く
  

Posted by Shadow Warriors Training at 21:31小ネタ