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Posted by ミリタリーブログ at

2016年02月28日

トレーニングに必要なリアリティーとは?(4)


 このトピックではこれまで、
第1段階:標的が如何なる向きにあっても正確に撃ち抜くべきところを撃ち抜くことが出来る。
第2段階:様々な距離や高さや角度にある複数の標的を撃つことが出来る。
第3段階:撃つべき標的を撃ってはならないものとを瞬時に判断して正しく対応することが出来る。
といった3つの種類のリアリティーを持たせたトレーニングを紹介してきました。勿論、これらは停止間だけでなく移動間にて行うことが、よりトレーニングにリアリティーを追及することが可能となりますが、最後にもう1つ行うべきトレーニングがあります。それが、フォース・オン・フォースです。

 フォース・オン・フォースとは、訓練弾を撃つための専用のパーツに換装した銃やエアガンなどを用いて、生きている人間を相手に行う実戦的シナリオトレーニングのことです。映像装置を用いたシミュレーターにはFATS、EST2000、GICSSなど色々な物がありますが、これらを用いたシナリオ訓練で実施出来るのは上記の第3段階のトレーニングです。映像シミュレーターでは自分が撃たれた場合はいわゆる「ゲームオーバー」的な終わり方でシナリオが終了しますので物理的な実感がありません。反面フォース・オン・フォース訓練では、自分がミスを犯したら相手に刺されたり撃たれたりします(訓練では勿論トレーニング用のラバーナイフなどを使います)。この実際に撃たれる・刺される感覚が実は非常に大事で、訓練生には物理的だけでなく精神的に衝撃を与えることになります。この「衝撃」こそがフォース・オン・フォース訓練の最も重要なポイントであり、この「衝撃」があるからこそ実戦で生き残るためにどうすべきだったのか?何が間違っていたのか?などをこれまで以上に真剣に考えて次の訓練への課題を見出すことに繋がります。

 ではサバイバル・ゲームはフォース・オン・フォース訓練の代わりになるのか?答えは「否」です。習得すべき戦術的・技術的な目標が設定され、それを試されるシチュエーションがシナリオとして提供され、そのシナリオが正しい方向に進んでいるのかを常に監視しながらシナリオから逸脱した動きがあった場合に訓練を中断したり、訓練生側と仮想敵側の動きを中立的な立場でモニターして中立かつ公平な立場から評価出来る統裁官(演習管理者)が存在することがフォース・オン・フォース訓練には必要不可欠ですが、サバイバル・ゲームにはそれらが存在しないからです。強いて言えば、一部の部隊で訓練用エアガンなどを用いて訓練生と対抗役に分けて行われている「実戦的訓練」も、正しいやり方で行われていない場合はただのサバイバル・ゲームと同じです。訓練生は何も学べないまま無駄に時間を過ごして1日を終えるだけです。

 CQBは屋内外を問わず敵との交戦距離が近いことから、瞬時の判断と条件反射的な対処が求められます。これらは訓練を通じて鍛えられますが、やり方や順序を間違えると混乱を生じさせて習得させるには余計な時間を費やすことになります。リアリティーを追及したトレーニングを実施する際には、トレーニングの内容だけに偏らずその進め方にも注意する必要があります。その最も簡単な方法が、これまで述べて来た第1から第3段階の訓練と、今回述べた第4段階であるフォース・オン・フォース訓練です。部隊は新陳代謝を繰り返して成長する生き物です。新しい細胞にいきなり第4段階を踏ませることは成長に繋がらず妨げにしかなりません。基礎無くして家屋が建たないのと同じです。トレーニングにリアリティーを追及することは重要ですが、追及の仕方を誤ると全くの逆効果しかないことを理解しておいて下さい。
終わり
  

Posted by Shadow Warriors Training at 18:52小ネタ

2016年02月21日

トレーニングに必要なリアリティーとは?(3)


 バリケードを正しく使い、状況に応じて様々な姿勢を駆使して色々な場所に配置された標的に当てることが出来るのであれば、次の段階は撃つ・撃たないの状況判断になります。通常、射場では標的は全て撃ってよい(撃つべき)的ですが、現実世界では味方や第三者といった敵以外もその場で複雑に動き回ります。警察官や警備任務に就く自衛官であれば普段から「戦場」となり得る場所に敵以外の人間が入り組む可能性が高いですが、それ以外の場合でも戦闘が市街地で行われるとなれば民間人が「戦場」に存在する確率は高くなりますので、瞬時に「撃つ・撃たない(Shoot/No Shoot)」の判断を取れるか否かが自身や部隊、加えてそこに居る民間人の生存に強く影響します。

 撃つ・撃たないの判断と射撃を行うには、上の写真の様な標的を使うことが最も簡単です。この写真では、手の平を見せて攻撃の意志がないことを示すマーキングのある「撃ってはならない」ものと、それ以外の「撃つべき」標的とに分けていますが、逆に何もマーキングのない「撃ってはならない」ものと、銃やナイフなどのマーキングが施された「撃つべき」標的とに分ける方法も可能です。この様なドリルを行う上での1つ目のポイントは、射手に目隠しをさせたり後ろ向きに待機させるなどしてこれら2種類の設置場所を毎回変化させて、射撃する直前までどこにどの的があるのか射手に分からせないようにすることです。そして2つ目のポイントとしては、時間制限を設けたり、複数の射手に挑戦させてタイムを競わせるなどして、瞬時の状況認識能力が必要となるようにドリルをコントロールすることです。

 加えて、現実世界では必ずしも敵と味方や第三者が横並びになるとは限りません。また、自分と標的との間に撃ってはならない者が居ないのか?標的に命中した弾丸が標的を貫通しても後方に人的被害が出ないのか?を絶えず確認してから引き金を引くことが要求されます。そこで、写真の様に奥行きのある配置にする、つまり撃つべき標的と撃ってはならない標的を射手の位置から見て直線上に重なるように配置すると、よりトレーニングにリアリティーを持たせることが可能となります。標的の種類を変えるだけでは「撃つ・撃たない」の「識別」だけのトレーニングしか出来ませんが、標的の位置を複雑化させると「撃てる・撃てない」といった「判断」もトレーニングする事が出来ます。高価なシミュレーターや実弾射撃が出来る環境がなくとも、エアガンと安全が確保された区画されたエリアさえあれば、プロに要求される「識別」や「判断」が要求されるリアルなトレーニングを実施することが可能です。
(4)へ続く
  

Posted by Shadow Warriors Training at 19:23小ネタ

2016年02月14日

トレーニングに必要なリアリティーとは?(2)


 では、標的が状況に応じて様々な角度で床面に対して設置されることに適応した次の段階として射撃訓練にリアリティーを追求する方法はあるのか?次に考え方を変えて欲しいのは、自分が標的に対して位置する際の角度です。伝統的な射場の構成は右から左へ等間隔で標的が並んでおり、射手も同じように並んでいます。このやり方では射手は自身の正面にある標的しか撃ちません。しかし、このやり方でしか訓練していない場合、「標的に必ず正対しなければならない」との偏った図式が無意識のうちに脳内に埋め込まれてしまい、結果として正面の標的以外は他の射手の標的であると勝手に認識しがちになります。

 しかし、現実世界では味方と共に複数の相手と闘う状況において、周辺の遮蔽物や植生などの配置によってはそれぞれの正面にいるはずの敵は見えないが、仲間の正面にいる敵は自分の斜め方向に見えている場合も考えられます。その様な場合は互いの銃火が交差するいわゆるクロスファイアーにて敵と戦わざるを得ません。従って、正対する標的に正しく命中させることが出来るのであれば、次の段階のトレーニングとしては正面だけでなく斜め方向や横方向にある標的への射撃を訓練する必要があります。

 それを実現させる為の最一般的かつ簡単な方法は、写真のような複数標的への射撃があります。最初は同じ大きさの的を等間隔に設置しますが、上達するにつれて標的間の間隔を不均等にしたり、高さを不均一にしたり、標的の大きさを変えたりするなどして、変化を持たせます。それらを左から順番に撃ったり、番号をランダムにつけて1番から順番に撃ったりとすることで、異なる方向・高さにある標的の認識や次の標的への素早い照準といった実戦的な環境に少しでも近づけたリアリティーを追及することが可能となります。
(3)へ続く

  

Posted by Shadow Warriors Training at 22:14小ネタ

2016年02月07日

トレーニングに必要なリアリティーとは?(1)


 トレーニングはただ単に昔から引き継がれた内容を業務的に継続させるものではありません。現実世界での事件や戦術のトレンドを研究し、それに対抗するための技術や知識を身に付けさせることが求められます。SWTにトレーニングを受けに来られる警察官や自衛官は良い意味でそれぞれの組織のやり方に馴染んでおられますが、悪く言うと組織が提供する訓練から脱却するには外からの助言を必要とされています。勿論SWTのトレーニングを受けに来られる方々は柔軟な考え方と開かれた心を持っており、従来のトレーニングとは180°異なるやり方を示しても十分に付いてきて習得するだけの適応力を持っています。

 よくあるケースが、ターゲットを斜めに掲示したりすると違和感を覚えるようです。確かに警察でも自衛隊でも標的は真直ぐ貼り付けて、人型標的であれば地面に対し垂直に立てた状態で射撃訓練を行います。しかし、現実世界で必ずしも標的である敵兵やテロリストなどが真直ぐに立っているとは限りません。地面に這い蹲って駐車車両の影から攻撃してきたり、窓から体の極一部だけを露出させて大部分を強固な壁で護るように斜めに立っていたりと、生きている人間を相手に闘う場合は相手が直立不動の姿勢で立っている方がむしろ不自然です。

 伝統的とも言える射撃訓練では人型標的であれブルズアイ標的であれ、出来るだけ的の中心に着弾させて高い点数を取ることが目的と化しています。しかし、現実世界における生きた人間を相手にした撃ち合いでは必ずしも身体の中心を狙うとは限りません。現実世界での目的は「生存」することであり、その手段として必要な事は、相手の体勢を問わず撃つべきところに着弾させることにあります。よって、貼り付けられた標的の向きが真直ぐであろうが、斜めであろうが、真横であろうが、高い点数を取ることを目的としないタクティカル・トレーニングにおいては何ら問題がないと考え方を瞬時に切り替えれるか否か?インストラクターの立場から言えば、切り替えさせることが出来るのか?がリアリティーを追及する上で重要となります。
(2)へ続く
  

Posted by Shadow Warriors Training at 23:57小ネタ