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Posted by ミリタリーブログ at

2014年09月28日

2人組とは言え


 2人組に限らず部隊を半分に分けて、応戦する役割と移動する役割とを交替しながら部隊をある方向に動かす方法を交互躍進と言います。近接戦闘であれば移動間射撃により応戦と移動とを同時に行うことも状況によっては可能ですが、そうでない場合は味方の援護射撃なしに移動するのは自殺行為となります。

 射撃をする際には自分の銃だけを意識しがちですが、この様な戦術を取る際には仲間で1丁の銃を撃っているとの認識を持つ必要があります。つまり、どの様な状況下でも何れか一方が必ず射撃をしており、かつ、射撃と移動の役割を交替する際に「空白の時間」を作らずにいれば、敵から見れば弾が途切れることなく継続して射撃していることになります。弾が途切れる「空白の時間」を作らないことがことでの鍵であり、これを作ってしまうと逆に敵が射撃と移動を開始することになります。

 戦闘時には射撃・移動・連携(Shoot, Move, Communicate)のたった3つしかやることがありませんが、この「空白の時間」をいかに作らなくするかは個人の射撃技術でも移動のスピードでもありません。必要なのは「連携」です。いつ動くのか、いつ止まるのか、いつ撃つのか。味方と上手に連携しなければ敵にとってチャンスとなる「空白の時間」を作ってしまいます。

 勿論、射撃を続ければ弾切れを起こします。仲間のために弾切れを起こさないようにするには、効果的なタイミングで弾倉交換を実施する必要があります。また、移動する側の立場から見れば、仲間が援護射撃を続けている間しか移動出来ません。これが実際どの位の時間なのかを知る必要があります。

 いつ弾倉を交換するのか?移動にはどの位の時間が与えられているのか?役割交替のタイミングは?合図は?銃が故障した際の対処プランは?負傷した際の対処プランは?片方が先に全弾倉を撃ち尽くしたら?

 2人組とは言え、訓練を通じて見出すべきものは多くあります。これが4人組、分隊、小隊となれば更に複雑になってきますが、基本的には2人組でのパターンを基本形として考えれば良いので、如何に2人組での射撃と運動をマスターするかに係ってきます。そこで重要なのは先にも述べた「連携」です。しかし残念ながら、 コミュニケーションは最も重要な戦闘時の基本行動であるものの戦闘時に最も崩れやすいものです。普段の訓練ではこの事をしっかりと理解した上でそれぞれの問題点の解決方法を模索して下さい。  

Posted by Shadow Warriors Training at 21:14小ネタ

2014年09月21日

恐ろしや、旧東側


 各国の軍人や警察官と訓練をすると、政治や文化などによる戦術や訓練の違いを垣間見ることが出来ます。政治的背景や法律といったものは戦略や戦術に影響を与え、文化や教育といったものは訓練手法に影響を与えます。仮想敵国のそのような背景を研究し、戦術や訓練方法(Tactics, Training and Procedure/TTP)を研究することは、いざ対峙した際に相手の次の一手を読むための手助けとなります。従って、戦術的優位に立つためには、情報部門による分析結果に基づき相手のやり方に対応する手法を訓練することが生存への1つの道となります。

 少し分かりにくい書き方をしたかも知れませんが、例として上げるなら航空自衛隊のアグレッサー部隊です。彼らはF-15を使用しますが、動き方や攻撃のパターン等はミグやスホーイ戦闘機のそれに基づいていることから、対峙するパイロットは実戦を交えずとも仮想敵の動き方を理解することが出来るようになります。米軍が巨額の予算と人員を割いてでも他国の政治や文化を研究する部門を持ち続ける理由はここにあります。何も特殊部隊による浸透作戦のためだけでなく、一般部隊による侵攻作戦でも有利に立つためです。

 少々堅苦しい話から始まりましたが、この文化による訓練の違いを私が過去の訓練で知り合ったポーランド陸軍特殊部隊(GROM)の隊員を例にして書きたいと思います。ポーランドは一昔前はワルシャワ条約機構の加盟国でしたが、ソ連崩壊後の1999年3月にNATO(北大西洋条約機構)に加盟し、近年は急速に装備や訓練も西欧化しました。写真はアフガニスタンでのGROMの隊員です(私の知り合いとは違います)が、ご覧のように英米の特殊部隊員と遜色のない充実した装備を有しています。しかし、装備が近代化されたとは言え、バックボーンたる文化やマインドセットは東側のものが引き継がれており、それが戦闘のやり方に如実に反映された事例がありました。

 アメリカでのとあるCQB訓練で一部のターゲットに致死性の高い命中弾が少なかったことを教官陣に指摘されました。以後、我々訓練生は最後に部屋を出る者が確実に敵性勢力の無力化を確認するといったプロシージャの下で訓練を継続しました。アメリカ人は有効弾が足りないターゲットには去り際に追加で射撃し、ドイツ人は律儀に無力化したターゲットを床に寝かせて「無力化成功」を示し、私は刀の国の民族を代表してターゲットの喉元にナイフを数回突き立てました。バディーごとに散り散りになったいた部隊が建物の外で合流した際に、各バディーごとに完全な無力化を確認し合いましたが、その時GROMの隊員が左手に何かを持っていることに気付きました。

 彼はバディーと掃討した部屋の全てのターゲットの首をナイフで切って、頭の部分を「無力化の証」として持って出てきたのです。それを見た我々西側の人間は「東側怖ぇ~!」、「冷戦が冷戦のまま終わって良かった」とポーランド流の徹底したやり方を見て口々に感想を言っていました。米陸軍特殊部隊の元隊員は「あいつ残忍だな」と言ってましたが、世界で一番戦争している国の特殊部隊員がよくそんな事を言えるなと突っ込まれると「俺たちは任務を遂行しているだけで、残忍なことはしていない」と言い張ってました。

 それを考えると我が国の周りにある未だ東側かつ共産・社会主義の国家ではどうなんでしょうか・・・  

Posted by Shadow Warriors Training at 12:47小ネタ

2014年09月01日

ガラス越しの射撃


 車のフロントガラスは、2枚の単板ガラスの間にPVB(ポリビニールブチラール)の中間膜が挟まれた「合わせガラス」と呼ばれる構造になっています。これにより飛散物などが当たったりしても完全に砕け散ることがなく一部にひび割れが生じる程度に収まることから、引き続き運転が可能であるとされています。ところがガラス越しに射撃するとなると、この合わせガラスが非常に厄介な存在となります。

 そもそも弾丸は僅かでも何らかの障害物に当たることでその弾道が変化します。そしてフロントガラスは垂直でなく角度がついており、弾性のある中間膜が挟まれています。この角度を有するガラスを突き抜ける際に弾丸は運動エネルギーと回転を僅かですが奪われます。よって、よほどの至近距離でない限り、フロントガラス越しに撃った弾は狙ったとおりに飛びません。この現象は車のガラスだけでなく建物のガラスでも同じであり、狙撃の際はガラス面に垂直に当たった(貫通した)としても、その先で同じ弾道を維持する保障はありません。

 これを深く逆方向から考えると、車両移動中にアンブッシュを受けた際にそもそも自分の車のフロントガラス越しに撃つ必要性に疑問が生じるはずです。そこで対応策の前に想定を考えます。

 第1想定は、攻撃を受けたが人員・車両ともに作戦継続が可能である場合です。この場合の対処方法は簡単です。アクセルを吹かして危険地帯からいち早く離脱するのが得策です。応戦は可能であれば試みますが、砂漠地帯や草原地帯など遠くまで見通しが効く場合を除き、応戦せずとも何らかの遮蔽物の陰には直ぐに入れるはずです。

 第2想定は、攻撃を受けて車両が走行不能に陥った場合です。この場合は速やかに下車して徒歩にて離脱する必要があります。下車途中でガラス越しに撃つこともありますが、撃っても数発です。車は格好の的になりますので、1秒でも早く下車する必要があります。ただし、敵との間にある程度の距離があれば、下車することなく走行可能な別の車両に押し出してもらう(状況が許せば牽引してもらう)と言ったオプションがあります。

 第3想定は、至近距離(5m以内)から攻撃を受けた場合です。このケースでは特にエンジンが停止している状況ではガラス越しに射撃する必要が高いですが、エンジンが動いている場合にあっては非常に有効な別の戦術があります。ただし、この「有効な戦術」はこのブログで説明することは出来ません。考えれば簡単に答えは出ることですが、不特定多数が閲覧するブログで説明するには不適切であると判断してのことです。よって気になる方はプロコースを受講して下さい。この件の対処法はプロにしか開示しておりません。

 という事で、SWTではVehicle Tacticsコースの実施のために、廃車が備え付けられたフィールドを探しています。通常のフィールドでどうしてもトレーニングがしたいと言われる場合は、受講生の車を使わせて頂きます。ただし、傷や凹みがついても責任は一切取りませんので悪しからず。  

Posted by Shadow Warriors Training at 00:10小ネタ