2014年09月21日

恐ろしや、旧東側

恐ろしや、旧東側
 各国の軍人や警察官と訓練をすると、政治や文化などによる戦術や訓練の違いを垣間見ることが出来ます。政治的背景や法律といったものは戦略や戦術に影響を与え、文化や教育といったものは訓練手法に影響を与えます。仮想敵国のそのような背景を研究し、戦術や訓練方法(Tactics, Training and Procedure/TTP)を研究することは、いざ対峙した際に相手の次の一手を読むための手助けとなります。従って、戦術的優位に立つためには、情報部門による分析結果に基づき相手のやり方に対応する手法を訓練することが生存への1つの道となります。

 少し分かりにくい書き方をしたかも知れませんが、例として上げるなら航空自衛隊のアグレッサー部隊です。彼らはF-15を使用しますが、動き方や攻撃のパターン等はミグやスホーイ戦闘機のそれに基づいていることから、対峙するパイロットは実戦を交えずとも仮想敵の動き方を理解することが出来るようになります。米軍が巨額の予算と人員を割いてでも他国の政治や文化を研究する部門を持ち続ける理由はここにあります。何も特殊部隊による浸透作戦のためだけでなく、一般部隊による侵攻作戦でも有利に立つためです。

 少々堅苦しい話から始まりましたが、この文化による訓練の違いを私が過去の訓練で知り合ったポーランド陸軍特殊部隊(GROM)の隊員を例にして書きたいと思います。ポーランドは一昔前はワルシャワ条約機構の加盟国でしたが、ソ連崩壊後の1999年3月にNATO(北大西洋条約機構)に加盟し、近年は急速に装備や訓練も西欧化しました。写真はアフガニスタンでのGROMの隊員です(私の知り合いとは違います)が、ご覧のように英米の特殊部隊員と遜色のない充実した装備を有しています。しかし、装備が近代化されたとは言え、バックボーンたる文化やマインドセットは東側のものが引き継がれており、それが戦闘のやり方に如実に反映された事例がありました。

 アメリカでのとあるCQB訓練で一部のターゲットに致死性の高い命中弾が少なかったことを教官陣に指摘されました。以後、我々訓練生は最後に部屋を出る者が確実に敵性勢力の無力化を確認するといったプロシージャの下で訓練を継続しました。アメリカ人は有効弾が足りないターゲットには去り際に追加で射撃し、ドイツ人は律儀に無力化したターゲットを床に寝かせて「無力化成功」を示し、私は刀の国の民族を代表してターゲットの喉元にナイフを数回突き立てました。バディーごとに散り散りになったいた部隊が建物の外で合流した際に、各バディーごとに完全な無力化を確認し合いましたが、その時GROMの隊員が左手に何かを持っていることに気付きました。

 彼はバディーと掃討した部屋の全てのターゲットの首をナイフで切って、頭の部分を「無力化の証」として持って出てきたのです。それを見た我々西側の人間は「東側怖ぇ~!」、「冷戦が冷戦のまま終わって良かった」とポーランド流の徹底したやり方を見て口々に感想を言っていました。米陸軍特殊部隊の元隊員は「あいつ残忍だな」と言ってましたが、世界で一番戦争している国の特殊部隊員がよくそんな事を言えるなと突っ込まれると「俺たちは任務を遂行しているだけで、残忍なことはしていない」と言い張ってました。

 それを考えると我が国の周りにある未だ東側かつ共産・社会主義の国家ではどうなんでしょうか・・・



Posted by Shadow Warriors Training at 12:47 │小ネタ