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Posted by ミリタリーブログ at

2020年04月27日

UF PROによるトラッキング技術の紹介ビデオについて


 スロベニアにあるタクティカルウェアのブランドであるUF PROが、この度Youtubeでタクティカル・トラッキングに関するビデオシリーズを公開します。前回はドイツに拠点を置くProject GeckoによるCQB訓練に関するビデオシリーズが公開されましたが、今回はトラッキング技術の紹介です。
https://www.youtube.com/watch?v=ylwhZ4LVMqc

 インストラクターは元オランダ海兵隊のトラッキングインストラクターであったボリス・フォス(Boris Vos)氏。現在はケニアに居住し、野生動物を違法ハンターから守りまた違法ハンターを追跡して逮捕する国立公園のパークレンジャーに対してトラッキング技術を教える仕事に就いています。2018年に行われたチェコの森林地帯におけるトラッキング訓練には私も参加しましたが、2夜3日のコースで非常に多くの事を学ぶことが出来ました。体力錬成のために登山する際には、先行する登山者や野生動物の痕跡、天候による痕跡の変化を見極めるなど、彼から学んだ技術を錆びさせないためにしています。

 今後、数回に渡って毎週月曜日に新しい動画が公開されるとのことですので、トラッキング技術に興味のある方はUF PROのYoutubeチャンネルをチェックしてみて下さい。https://www.youtube.com/user/ufprogear/videos

 注釈:SWTはUF PROとは何の関係もなく、紹介したところで1円にもなりません。信頼出来るインストラクターであることから、情報を共有しているだけです。  

Posted by Shadow Warriors Training at 10:05小ネタ

2020年04月19日

戦闘衛生について(1)


 COVID-19への対策として緊急事態宣言の対象地域が日本全土に拡大された事に伴い、SWTは現在も稼働中ではあるものの、積極的に全国各地へ出向いてトレーニングを提供することを特別な状況以外では自粛しております。また、お客様にあっては、トレーニングお申込みに先立ち、各所属機関が定める集会や旅行などに関する指針に従って頂きますよう、強くお願い致します。

 さて、連日の報道で医療崩壊という言葉が取り上げられていますが、これに関してTCCCの目線から今回のブログを書きたいと思います。TCCCの現場は常に「医療崩壊」のリスクと共存しています。しかしながら、これは後送先の医療機関における対応能力が原因ではありません。TCCCの現場では、負傷してから応急処置が開始されるまでのタイムラグと、救護開始後の医療資源の枯渇といったリスクに常に晒されます。

 ご存じの通りTCCCには、敵との交戦中の段階であるCare Under Fire(CUF)、敵からの直接的な脅威下に居ないもののCUFの状況へと再び戻る危険性のあるTactical Field Care(TFC)と、TFCの後に医療機関へ後送中のTactical Evacuation Care(TEC)の3段階があります。CUFの段階で出来ることは非常に限られており、その処置は負傷者本人が施すことになります。よって、この段階ではSelf-Aid(自己によるケア)で出来る範囲の事しか処置を施せません。

 例えば敵の攻撃を受けて大腿部に貫通銃傷を負った場合、負傷した隊員が先ずすべきことは何か?負傷部位の確認や止血帯の適用は不正解です。正解は、応戦し遮蔽物の陰に移動する、です。負傷者にとっては負傷そのものが脅威と思われがちですが、その負傷のケアも本人を含めた部隊の生存も敵を制圧することなくしては不可能です。脅威の排除、これこそがTCCCの現場で第一に行うべきことであり、よって衛生兵を始めCLS(Combat Lifesaver)資格を有する他の隊員も、敵を制圧するまでは全員一律に射手としての任務に従事します。もとい、射手としての任務のみに集中する必要があります。

 複数いる中で何故特定の隊員だけが撃たれたのか?闇雲に撃ってきた弾に運悪くたまたま当たった場合は別ですが、その理由は、撃たれた隊員が敵から見えていたからです。隠掩蔽を巧みに利用しながら移動していても、ほんの僅かなスキは出来てしまいます。伏撃にせよ遭遇戦にせよ、こちらが先に見えた敵から排除していくのと同様に、敵も先に見えた順に攻撃してきます。つまり、敵の初撃で負傷した隊員は、手近に遮蔽物となるものが大抵の場合ありません。

 TCCCでは全隊員に止血帯を用いたSelf-Aidを訓練しますが、この様な状況下では、負傷者自身が自らの負傷部位に対する適切なケアが出来難いといった問題があり、また初期処置中の更なる負傷のリスクもあります。よって、適切なケアが施されるまでのタイムラグが発生するのがTCCCの常であることを念頭に置いておく必要があります。

(2)へ続く
  

Posted by Shadow Warriors Training at 12:03小ネタ

2020年04月05日

戦術と先進技術の関係について(4)


 また代替案は常に複数を用意しておくことに越したことはありません。このブログでも以前に紹介していますが、Primary、Alternate、Contingency、Emergencyの4つの頭文字からなるPACEプランと呼ばれるものがあります。このPACEプランを行動前に準備し、共有し、訓練していなければ、高価なセンサーが故障しただけの理由で部隊の動きが完全にストップしてしまうことに繋がりかねません。近年ではGPS機能が一般的とななり過ぎたことから、欧米の若い兵士は地図とコンパスを用いたランド・ナビゲーション能力が低いことが指摘されています。勿論GPC装置の故障や誤作動といった問題は認識され共有もされてはいるのですが、代替案としての地図判読の訓練に時間が割かれていないことが原因です。

 先進技術は確かに戦術の幅を広げ、優位性を高めてくれます。しかしながら、先進技術が戦術そのものを取って代わることはありません。先進技術は戦術を補完するものとして理解しておく必要があり、最新の機器が無くとも戦える戦術を普段から訓練しておかなければ、たった一つの機器の故障で部隊全体が被害を被ることに繋がりかねます。

 2017年の夏にBravo Company USAがYoutubeで配信した「The Capability」(https://www.youtube.com/watch?v=3yReIGUV9UE)という動画をご覧になったかと思いますが、この動画ではそのようなセンサーの類やケムライトを例にしたマーキングは行われていません。掃討済みの部屋と未完の部屋との区別が分かり難い中、採られていた戦術は至ってシンプルなものです。

 ・一度立ち去った部屋に再び立ち入る際は、再度ルームクリアの手順を踏む。
 ・支配地域として残す部屋には隊員を配置しておく。
 ・全ての部屋をクリアした後は廊下の両端に隊員を配置することでフロア全体を支配地域とする。
 ・階段の上下と踊り場に隊員を配置することで階段の上から下までを支配地域とする。

 作戦地域の確認には航空写真を用いていますが、建物を占拠するにあたっては何ら特別な先進技術を用いることはしていません。原始的なやり方だけで建物内の脅威を排除し占拠するといった目的を達成しています。この映像では小隊程度の規模の部隊で急襲していますが、人数が少ない場合は少ない人数に適した戦術を用いれば先進技術に頼る必要はありません。

 先進技術はあくまでも戦術を補完する存在です。装備に文句を言っても結局官品しか手に入りません。重要なのは心構えと戦術です。

終わり
  

Posted by Shadow Warriors Training at 10:12小ネタ