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Posted by ミリタリーブログ at

2018年10月21日

戦術・作戦の柔軟性について(1)


 過去のブログで作戦計画には主となるものも含めて合計4つの案を用意しておくことを書きました。それらは、PACEプランと呼ばれ、それぞれPrimary、Alternate、ContingencyそしてEmergencyを意味します。全ての細かい事にこのPACEプランを持てという訳ではないですが、作戦計画はあくまでも大筋であり、絶えず変化する状況に応じて臨機応変に対応(または順応)していかないと、時間と戦力を無駄にしてしまうことに繋がります。

 第2案、第3案へと移行することは決して作戦の目標を変化させることではありません。例えば建物の奪取であったり人員の回収であったりと、作戦の目標は当初より変わることはありません。計画を変更させるということは、その目標を達成するためのやり方を変えるという事です。

 特にCQBでは状況の変化のスピードが速いことと交戦距離が近いことから、問題が起こってから考える余裕は殆どありません。よって、問題を予期し、それらへの対応策を事前に選択肢とすることが特にリーダーの立場に立つ者には求められます。そして、CQBにて最も厄介な場所であり下手をすると部隊への大きな損害を避けられないところが、階段です。

 階段は廊下と同じく次のフロアや部屋へと続く「通路」ですが、廊下と決定的に異なるのはそこでの戦いは3次元になることです。また、廊下では手近な部屋に身を隠すことも出来ますが、階段は逃げ場がありません。よって、階段の移動は極力速やかに行う必要があり、逆を言えば長い時間階段に身を置くことは避けるべきです。このため、廊下を次の部屋へと移動するための「道路」と表現するのであれば、階段は次のフロアへと移動するための「高速道路」と表現されるべきです。
(2)へ続く
  

Posted by Shadow Warriors Training at 22:09小ネタ

2018年10月08日

CQB戦術、ソロvs.チーム(5)


 接敵した際に後退することを良く思わない風潮があるのは事実です。少々の損害を出してでも前進を続けていくことで、全体として攻撃を継続させているイメージに繋がります。しかし、前進しながら損害を出し続ける様であればいずれ消耗し戦えなくなります。

 紙の標的を相手にCQB訓練をした気でいるだけでは、選択肢として後退する訓練を行うことは勿論、後退を選択肢として考えるマインドセットも訓練することは出来ません。CQB訓練は野戦よりも戦況の変化が激しく、また接敵距離も近いことから条件反射に近いレベルの反応や対処能力が求められます。そしてこの対処能力は紙の標的を相手にした訓練では養えません。紙の標的はあくまでも動きや技術といった基礎レベルのものを訓練するためのものであり、戦術を訓練するには自由意思を持った生きた人間を相手にする必要があります。

 自由意思を持った人間を相手に訓練弾を用いて撃ち合う訓練を経験すると、必ずしも前進を続けることが正しいと限らないことが体験として理解出来ます。一時的な後退は目標達成を遅らせることになるかも知れませんが、損害を食い止められるのであれば機は残ります。撃つことと撃たれないことと、生き延びるためにはどちらが重要か?この選択を誤ると、目標達成を焦るあまり必要以上に損害を生じさせ、結果として損害を出し過ぎたことで作戦目標を達成出来ずに終わることになりかねません。

 敵戦力の撃滅が作戦目標である場合、その目標は変わることはありません。少々の損害を出してでも突き進むのか、それとも危うければ一度下がって別の戦法や方向から戦うことを選択するかは目標を達成するための手段に過ぎません。目標に固執するあまり臨機応変に手段を選べなくなってしまっては、目標の達成はより難しくなります。そしてこの臨機応変さを身に付けるには生きた人間を相手としたForce-on-Force訓練が必要です。それを経験することで、初めてマインドセットの意味を理解することが出来ます。

終わり
  

Posted by Shadow Warriors Training at 23:45小ネタ