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Posted by ミリタリーブログ at

2022年01月23日

レッドドットサイトについて (2)


 ドットサイトの優位性として最も顕著なものが、視野の広さです。アイロンサイトによる射撃の場合、両目を開けた状態で照準を定めるには一定の訓練を要します。ですが、ドットサイトを用いた場合は格段に短い訓練時間で両目を開けた状態での照準を体得することが出来ます。人間は情報の9割近くを視覚から得ることから、運転でも射撃でも広い視野を持つことがより多くの情報を入手・処理するために必要です。そして射撃の際に特に重要なのは、標的の前後左右の確認です。標的の近傍に撃ってはいけない者がいるか否かの識別を怠ると、不意に動かれた場合に撃ってはいけない者を傷つけたり最悪のケースでは殺してしまうことになりかねません。従って、両目を開けた状態での射撃に適したドットサイトは、アイロンサイトを用いた射撃に比べて広い周辺視野を得ることが優位性の1つです。

 そしてもう1つの優位性は、目線を集中させる焦点距離です。アイロンサイトの場合、リアサイト・フロントサイト・標的を一直線上に並べてイメージを重ねた後はフロントサイトに視点を定めた状態が正しい「照準」となりますので、標的はぼやけて見えている状態になります。これに対しドットサイトの場合、標的に視点を集中したまま目線にサイトを持ってくることでドットが標的に重なりますので、標的はクリアに見えている状態が保てます。


 上の写真で示した例から分かるように、標的がクリアに見えているか否かの差は顕著です。ただ単に紙やスチールの標的に向かって弾を発射して当たった当たらなかったを競い合うだけの場合はこの差は大した問題にはなりませんが、こちらに危害を加えようとしている自由意志を有した生きた人間と撃ち合う場合は相手がクリアに見えているか否かは大きな問題です。特に警察の現場では、射撃の合法性だけでなく合意性が常に問われますが、その合意性の争点となるものの1つが、相手が脅威であったか否かです。武器を持っていたのか?どのような武器であったのか?こちらが銃を指向して警告を与えても相手は武器を捨てることがなかったのか?その様なことが問われますが、フロントサイトに視点が集中していた場合と、ドットが重なった脅威に視点が集中していた場合とでは、見えるものが格段に違います。

 3つ目の優位性は、脅威の認識・識別から照準までの速さです。アイロンサイトの場合、脅威に焦点を合わせながら銃を抜きますが、銃が目線の位置に合わさった段階で視点はリアサイトのフォーカスされます。次いでリアサイトの隙間にフロントサイトを見つけてフロントサイトに視点がフォーカスされます。リアサイトの隙間に正しくフロントサイトが位置している状態で標的=脅威に重ね合わせますが、最終的な撃発時には再びフロントサイトに視点を集中させる必要があります。

 ですが、ドットサイトの場合は、脅威にフォーカスしたまま抜いた銃を目線の位置に合わせることでドットが標的=脅威に重なります。このプロセスの短さは照準の速さに顕著に影響し、脅威の識別から撃発までの速さは生存率に確実に影響します。

(3)へ続く
  

Posted by Shadow Warriors Training at 22:22小ネタ

2022年01月09日

レッドドットサイトについて


 遅ればせながら、新年あけましておめでとうございます。新年早々オペレーションの関係で臨時休業しておりましたが、2022年のトレーニング受付け態勢が整いましたので、本年も引き続きよろしくお願いします。

 今年もコロナウイルスの影響でトレーニングを受けたくても受けれない方が多いかと思いますので、SWTにて公式なトレーニングコースとして教えていないものの時折質問などを頂くトピックをこのブログを通じて「リモートトレーニング」の様な形で提供させて頂こうかと思います。ということで2022年最初のブログはピストル用のレッドドットサイトについてです。

 小銃にはAimpointなどのドットサイトが広く普及していますが、拳銃用については10年程前から市場には紹介されてきていたものの急速に広まったのはここ数年のことかと思います。小銃用に比べて小型であることからMicro Red Dot Sight (MRDS)と称されており、欧米の警察や軍隊の一部の部隊では標準装備となってきています。

 よくある勘違いとして、欧米の部隊が使っている武器や装備品を有していなければ同じレベルの部隊として認識されない、という考え方がありますが全くもって誤りです。太古より人類は硬いもので叩いたり、尖ったもので刺したり、鋭いもので切るなどして、「敵」と戦うことを続けてきました。


銃を使って撃ち合うようになったのは近世からになりますが、戦いの本質は普遍的です。刃物や銃器などは全て戦いにおいて敵に大きなダメージを与えるための「道具」であり、望遠タイプの照準器や、ドットやレティクルタイプの照準器はその目的をより効果的に達成するための補完的な役割を果たす「付属品」になります。

 従って、「道具」や「付属品」の有無や良し悪しで部隊のレベルは判断されるべきではなく、それらを効果的に使いこなして戦術的優位性を発揮することが出来る戦士の訓練レベルにて部隊のレベルは判断されるべきです。つまり、本当の「武器」とはよく訓練された戦士(兵士や警察官など、WarriorやFighterなどと称される者たち)のことです。

 話が少し脱線しましたが、今回のブログでまず言っておきたい事は、MRDSが必ずしも標準装備である必要はないという事です。あくまでも戦いを有利にするためのデバイスの1つであるといった事を理解しておいて下さい。

(2)へ続く
  

Posted by Shadow Warriors Training at 18:22小ネタ