2018年12月25日
コンフォートゾーン(2)
世間では特殊部隊員は一般部隊では教わらない特別な射撃技術や武器の取り扱いを学んでいると誤解されている様ですが、実際はそんなことはありません。確かに外国製武器の取り扱いの訓練は受けますが、射撃技術に関しては一般部隊で訓練する内容と同じです。違うのは、射撃技術の基本を疎かにすることなく、身体に染み付くまで演練を繰り返しているか否かです。
射撃の基礎としては照準(サイティング)、撃発(トリガーコントロール)、フォロースルーの3つがあり、それらを高いレベルで発揮し続けるためには、拳銃では握り(グリッピング)、小銃や機関けん銃では構え(特に肩づけ)が重要です。特殊部隊では、昼夜や天候の違いは勿論、自身が身に付ける装備品の違いや様々な射撃姿勢においてもこれらの基礎に加えて弾倉交換や故障排除などの基本動作を繰り返し演練することにより、如何なる状況においても考えることなく条件反射的に身体が常に正しく動ける様にしています。
そうして射撃に関してのコンフォートゾーンを広げることによって、戦闘間においては動きやコミュニケーションなどの戦術的なことにより多く脳の回転を使えるようになっていきます。戦闘間において各自に求められるものはシュート、ムーブ、コミュニケートの3つです。それぞれに3分の1ずつ頭を使うよりも、シュートに関しては身体が無条件で反応してくれることにより後の2つに集中することが出来るのとでは、頭だけでなく心の余裕が生まれます。
2018年も残すところあと1週間となりました。皆さんは射撃技術だけに限らずチームワークやマネージメントなど何か自身のコンフォートゾーンを広げることが出来ましたか?2019年の目標は定まりましたか?皆様が残り1週間を無事に過ごし、新たな1年を迎えられることを願い、今年のブログ更新を締めくくらせて頂きます。
終わり
2018年12月09日
コンフォートゾーン(1)
射撃の世界におけるコンフォートゾーンとは、個人が現状の技術レベルのまま無理することなく出来る範囲内で発揮出来るスピードや命中精度が例となります。しかしながら、このコンフォートゾーンは悪い言い方をすれば「ぬるま湯」になります。ぬるま湯は居心地がよく、人を駄目にします。熱すぎず、冷た過ぎず。居心地がいいので、そのままそこから動こうとしない人が多いのが現状です。このぬるま湯状態は何も射撃に限らず、社内プレゼンの技術やコーディネート業務のレベルなど多岐の分野でも同じことが言えます。
射撃に話を戻しますが、今発揮出来るスピードや命中精度に満足(慢心)して高みを目指さない場合は、今の技術レベル以上の上達は残念ながら見込めません。高みを目指すには今のコンフォートゾーンから脱却する必要があります(言い方の変えれば今よりもコンフォートゾーンを広げる必要があります)。しかし、脱却にせよ拡大にせよ、やり方を誤ると全く意味のない結果をもたらしてしまいます。
スピードの追求にせよ精度の向上にせよ、基本を疎かにしては意味がありません。例えば、滅茶苦茶な照準やトリガーコントロールであるにも関わらず単に合図から激発までのスピードが早まっただけでは意味がありません。この例の場合における技術目標は射撃速度の向上です。しかし戦術的な目的は戦闘間において命中精度を維持しつつ射撃速度を向上させる、であったはずです。よって、単なる数値的な目標だけを追い求めると、結果として本来の目的を見失ってしまうことになります。
(2)へ続く