2014年09月01日

ガラス越しの射撃

ガラス越しの射撃
 車のフロントガラスは、2枚の単板ガラスの間にPVB(ポリビニールブチラール)の中間膜が挟まれた「合わせガラス」と呼ばれる構造になっています。これにより飛散物などが当たったりしても完全に砕け散ることがなく一部にひび割れが生じる程度に収まることから、引き続き運転が可能であるとされています。ところがガラス越しに射撃するとなると、この合わせガラスが非常に厄介な存在となります。

 そもそも弾丸は僅かでも何らかの障害物に当たることでその弾道が変化します。そしてフロントガラスは垂直でなく角度がついており、弾性のある中間膜が挟まれています。この角度を有するガラスを突き抜ける際に弾丸は運動エネルギーと回転を僅かですが奪われます。よって、よほどの至近距離でない限り、フロントガラス越しに撃った弾は狙ったとおりに飛びません。この現象は車のガラスだけでなく建物のガラスでも同じであり、狙撃の際はガラス面に垂直に当たった(貫通した)としても、その先で同じ弾道を維持する保障はありません。

 これを深く逆方向から考えると、車両移動中にアンブッシュを受けた際にそもそも自分の車のフロントガラス越しに撃つ必要性に疑問が生じるはずです。そこで対応策の前に想定を考えます。

 第1想定は、攻撃を受けたが人員・車両ともに作戦継続が可能である場合です。この場合の対処方法は簡単です。アクセルを吹かして危険地帯からいち早く離脱するのが得策です。応戦は可能であれば試みますが、砂漠地帯や草原地帯など遠くまで見通しが効く場合を除き、応戦せずとも何らかの遮蔽物の陰には直ぐに入れるはずです。

 第2想定は、攻撃を受けて車両が走行不能に陥った場合です。この場合は速やかに下車して徒歩にて離脱する必要があります。下車途中でガラス越しに撃つこともありますが、撃っても数発です。車は格好の的になりますので、1秒でも早く下車する必要があります。ただし、敵との間にある程度の距離があれば、下車することなく走行可能な別の車両に押し出してもらう(状況が許せば牽引してもらう)と言ったオプションがあります。

 第3想定は、至近距離(5m以内)から攻撃を受けた場合です。このケースでは特にエンジンが停止している状況ではガラス越しに射撃する必要が高いですが、エンジンが動いている場合にあっては非常に有効な別の戦術があります。ただし、この「有効な戦術」はこのブログで説明することは出来ません。考えれば簡単に答えは出ることですが、不特定多数が閲覧するブログで説明するには不適切であると判断してのことです。よって気になる方はプロコースを受講して下さい。この件の対処法はプロにしか開示しておりません。

 という事で、SWTではVehicle Tacticsコースの実施のために、廃車が備え付けられたフィールドを探しています。通常のフィールドでどうしてもトレーニングがしたいと言われる場合は、受講生の車を使わせて頂きます。ただし、傷や凹みがついても責任は一切取りませんので悪しからず。



Posted by Shadow Warriors Training at 00:10 │小ネタ