2017年02月19日

リーダーシップとトレーニングについて(2)

リーダーシップとトレーニングについて(2)
 では、LP(レッスンプラン)が前回述べた3点を満たしたのであれば、次に何を準備するのか?先ず必要なことは、個々の訓練項目やドリルに明確な評価基準を設けることです。やるべきこと・やってはいけないことを明確に列記して、訓練を受ける者がそれら基準に達したか否かを判定する材料とします。これがないと、「とりあえず与えられた時間を使って色々やりました」で終わってしまいます。訓練の目的は決められた時限数を履修することではなく、訓練項目の持つ課題をこなして知識・技術を習得させることにあります。よって、教えっぱなし・やらせっぱなしでは意味がありません。訓練生のパフォーマンスを評価する基準を設け記録することで、訓練生の理解度・習得度を判別しなければなりません。

 これには2つの利点があります。1つ目は個々の訓練生が受けた訓練の内容とパフォーマンスを記録として残せることです。幾ら訓練を重ねてたところで記録が残っていない様であれば、書類上では全く訓練をしていない事と同じになります。知識的・技術的に優れた隊員を育てたところで公式な訓練記録がないようであれば、書類上では彼らは元々優れていたか、個人の努力で上達したと思われても仕方がありません。一見するとこの「書類上での記録」は馬鹿げているように思えますが、後に公務中に実力を行使する状況が発生した場合、その状況で隊員が行った行為(或は行わなかった行為)が裁判で争われることになるからです。その際に一切の訓練記録が無いのであれば、それは訓練すら無かったと結論付けられても反論する材料がなく、隊員だけでなく組織にも法的責任といった大きなダメージが与えられます。

 もう1つは訓練生の抱える問題の改善に繋がることです。パフォーマンスの内容を細かく評価することで、「何が間違っていたか」を明確に指導陣で共有するだけでなく、訓練生も見えることになります。ここでの細かい評価は決して訓練生の間違いを指摘して叱責するための材料ではありません。ここでの評価結果は、訓練生に間違いを気付かせ、再訓練に必要なポイントを絞ることにあります。

 なお、その際は一方的に間違っていたポイントを説明するのではなく、自分が何をどうしたか?何故そうしたか?を訓練生の口で語らせることが重要です。人間は間違いを一方的に指摘されると反感を抱いたり心を閉ざしたりします。また、一方的に言われた内容は脳裏に深く(長く)残りません。反対に自分で思い起させたり考え直させ、自らの行動と思考を再考証させると、正しいことに気付いた場合にその内容が強烈に脳裏に残ります。教官は単に正解を教えるだけの存在ではなく、間違いの中から正解を導き出す手助けをする存在でなくてはなりません。心理学の専門家である必要はありませんが、教わる側の心理を理解する必要はあります。

 従って、指導者やコーチを育成するには、教える内容を決めるだけで終わるのではなく、教え方により重きを置くことが重要になります。
(3)へ続く



Posted by Shadow Warriors Training at 22:15 │トレーニング哲学