2018年11月25日

戦術・作戦の柔軟性について(3)

戦術・作戦の柔軟性について(3)
 一度成功したパターンを過信するとどの様な目に遭うか?例を挙げるならば、1993年10月3日から4日にかけての出来事が良い例でしょう。お分かりかと思いますが、ソマリア・モガディシュ(モガディシオ)で米軍のタスクフォース・レンジャーがソマリアの民兵から奇襲攻撃を受けた件です。

 この日が来るまで米軍部隊は同様の急襲作戦を6度実施していました。しかしながら、1度として違う戦術を取ることはなく、全く同じ戦術のまま7度目の出撃を行いました。当然、敵勢力はそれまでの6度の作戦を研究していました。この戦闘から時間が経った後、ワシントン・ポスト紙が当時のソマリア民兵のリーダーにインタビューを行いましたが、そこで彼は通常は2度使ったら3度目はしないのが鉄則であるにも関わらず、米兵が6度も同じ手を使ったことから彼らが過信していたことを見抜いていたと述べました。

 恐らく、正規軍対民兵という非対称戦であったことから、米軍が敵の能力を過小評価していたこともあったと思います。また、それまでのパナマ、グレナダや湾岸戦争での戦闘とは異なり、民間人と民兵が入り乱れる市街地という新しい戦闘環境に十分に対応出来ていなかったことも要因であったと思います。

 兵士も部隊も、銃撃戦の最中に技術レベルを向上させることは出来ません。兵士や部隊はそれまでに訓練された知識や技術でしか戦えません。よって、平時において如何にバリエーション豊かな技術や戦術を訓練を出来るかが、兵士や部隊の戦闘能力に繋がります。

 因みに、軍隊は先の戦争についての訓練しか出来ない、とも言われています。これは、自分達が経験した戦闘について研究と訓練を重ねるものの、新しい脅威や戦闘環境に関する研究は想像力や人手が足りないことから疎かになる、という意味です。これを考えると、米軍は湾岸戦争以降は正規軍を相手にした戦闘を経験していませんので、仮に近い将来何処かの国の正規軍と武力衝突することになれば、開戦当初は後手に回るかも知れません。米海兵隊が英海兵隊を相手に模擬戦闘訓練を行うことを計画していますが、恐らくこの問題への研究も含めているのでしょう。

 柔軟性・臨機応変さは想像力次第です。固い頭で同じ戦術しか訓練出来ない、同じ事しか考えられないようでは、生存率が下がることは歴史が証明しています。
終わり



Posted by Shadow Warriors Training at 21:36 │小ネタ