2015年10月04日

ポリス・スナイパー(2)

ポリス・スナイパー(2)
 これらデータは自分の部隊がこれまで経験した事案から得ることは勿論、他の機関や部隊が経験した事案からも得ることが望ましいです。特に我が国には専門の第3者組織がありませんので、この様なデータの蓄積と共有には部隊や省庁の垣根を跨いだ日ごろからの現場レベルでの横の繋がりが必要です(因みにSWTのプロ用コースで合同トレーニングを実施している目的の1つは、この横の繋がりのきっかけを作るためです)。ただし、警察系の事案と軍隊系の事案とでは様相が異なりますので、参考程度に蓄積するに留め、そのまま取り入れることは避けるべきです。

 例えば前回の様なデータが得られたとした場合、データを基にした訓練プログラムを作成するとなれば、当然800m先の標的を撃つ訓練よりも100m以内の標的の特定された極小さな部位に確実に命中させるドリルが考えられます。次に必要なものは様々な角度から特にガラスを撃ち抜いて標的に命中させるドリルとなります。一般的なガラスに始まり、強化ガラス、アクリル板、自動車のフロントガラスなど、部隊の作戦地域(Area of Operations)に存在し得る全てが「実験/検証」対象となります。

 逆に、射距離や弾薬の違いに応じてどの様な物体が弾丸を貫通させないのかも知る必要があります。その目的は弾丸が人体を貫通した後に後方の人質などに被害を与えないためです。貫通した弾丸がさらに別の人体や物体に被害を及ぼすことをOver Penetrationと言います。また標的を貫通した後の弾道のことをTerminal Ballisticと呼びますが、自らが使用する銃器のTerminal Ballisticとそれから発生し得るOver Penetrationを知らなければ実際の現場で無用な被害を自らの手で発生させてしまうことになるからです。

 銃器安全4則の1つに「標的の前後及び周囲を確認すること」とありますが、これを怠るとOver Penetrationによる被害が発生します。射場での訓練では大抵の場合、標的だけがダウンレンジに置いてあるのが普通です。しかし現実世界ではそうはいきません。そこで少しでも現実的な状況を再現するために、複数の標的をランダムに配置します。撃つべき標的と撃ってはならないものを明確に区別すると共に、単に標的を撃つだけではその後方にある撃ってはならない標的に当たるように配置させるのがコツです。これにより射座から単純にダウンレンジに向けて弾を撃つのではなく、標的とその周囲を入念に観察して余計な被害を発生させないために最善の角度から撃てる位置(FFP)を自ら探すドリルが完成します。

(3)に続く



Posted by Shadow Warriors Training at 14:10 │小ネタ