2013年09月02日

This is my safety.

This is my safety.
 映画「Blackhawk Down」の一場面にて、「これが俺の安全装置だ」とデルタ隊員が銃の安全装置ではなく自分の人差し指のことをそう呼んでいましたが、これは半分正解で半分不正解です。実は、安全装置は3つ存在します。それらは、機械的・生物的・心理的の3つです。今回は、それらが何であるのか説明しましょう。

 機械的安全装置とは、銃についている安全装置のことです。グロックのように内部セーフティー機構があるものや、他の銃のように外部セーフティー機構があるものなど、多種多様ですが、これらは「機械的」に引き金と撃鉄を切り離すものです。

 生物的安全装置とは、射手のトリガー・フィンガーのことです。映画の中のデルタ隊員はこのことを「俺の安全装置」と言っていました。機械的安全装置が解除された銃を手にしても、引き金を引かない限り弾は出ませんので、引き金を引く指が「生物的」安全装置となりますが、実はこれだけで話を片付けるのには早すぎます。

 銃器安全4則を思い出して下さい。「標的に照準を合わせて、明確な射撃の意思が決定されるまで、引き金に指をかけないこと」とありましたね。という事は、「明確な射撃の意思」と「引き金を引く」ことを決定した射手の意思こそが究極の安全装置と言えるのです。その明確な意思なくして、機械的安全装置を解除することも、生物的安全装置である指を引き金にかけることもないのです。これが3つ目の心理的安全装置の正体です。

 ハイリスクな訓練などでは、時として味方の銃口の前を横切ることがあります。後ろにいる者も、銃口を別の方向に向けるいとまがないことから、そのままにしています。確かに銃器安全4則には違反していますが、彼らが置かれている状況はそれよりも戦術的な要件が優先されているからです。では、なぜ前方の射手は平然と味方の銃口の前を横切ることが出来るのでしょうか?それは銃の安全装置が解除されていても、後方の射手が明確な意思を持って、引き金から指を離していることを知っているからです。共に訓練してきた仲だからこそ成り立つ信頼がそこにあるのです。

 耳元で仲間の銃口が火を噴くのは、緊張しますが他では体験できない貴重な経験となります。イヤプロを付けた状態ですが、実際に耳元で銃が激発するとどの程度の音が発するのかは流石に警察や軍の射撃では経験出来ません。また、仲間の銃口に顔を向けた状態で至近距離で激発すると、火薬カスやガスが顔に当たりますが、それも通常の訓練では決して経験できるものではありません。その火炎・音・衝撃に恐れることなく、仲間を信じて行動を継続することが出来なければ、近接戦闘、特に屋内での戦いに勝つことは出来ません。

 訓練では時として「管理された」危険な状態を作り出すことが必要です。準備なしでいきなり現場で経験するのと、一度訓練で経験したのでは、現場での行動に大きな差(特に心理的影響)が生じます。部隊が生き残るには、隊員個人の高い安全意識や技術だけでなく、その大部分はチームワークにあります。



Posted by Shadow Warriors Training at 11:28 │小ネタ