2023年07月23日

新製品の実用性

新製品の実用性
 近年は戦争の影響もあり、装備品は新製品が市場に溢れています。支給品はその国のドクトリンを基にした戦術・戦闘での使用を想定して設計・生産されているため、訓練のレベルをはるかに超えた実戦環境や、そもそもあった軍事ドクトリンの範疇を超えた領域での戦闘(アジアや北欧諸国の軍隊がアフリカや中東の砂漠に展開するなど)を経験すると、支給品には様々な不具合が見つかります。勿論、組織としてそれら不具合は現場から司令部へとフィードバックされますが、軍隊(警察も)は組織が馬鹿デカいので、改変や改革などのスピードが遅いのが難点です。

 軍隊では個別の要求に応じたカスタマイズは費用対効果の問題から現実的ではありませんが、民間業者は一定レベルのニーズがあれば製品化させる柔軟性とスピードを有しています。よって、民間業者の方が現場のフィードバックを直接反映した製品をいち早く市場に出すことが出来ます。ですが、それらフィードバックは必ずしも全ての部隊や隊員のニーズに合致するものではないことを理解しておく必要があります。例を挙げるなら、某有名インストラクターが考案したスリングを銃側のスイベルに取り付けるための、クイックディスコネクト式のリングがあります。これは彼が経験した船上という作戦環境でのニーズを基に設計された製品であることから、野戦環境ではクイックディスコネクト機能が全く使い物になりませんでした。

 ユーザーはその製品の新旧だけでなく、自らが展開する作戦地域に適しているか否か(例えば、積雪地域ではベルクロの表面に雪が付着して接合性が損なわれます)、自らが行動する作戦内容に適しているかをしっかりと見極める「目」を持つことが要求されます。

 さて、前置きが長くなりましたが、最近では装備品と同じかそれ以上のスピードで医療品も新製品が市場に発表されています。この度North American Rescue社から経鼻エアウェイの発売が発表されましたが、この製品の特長はパッケージ内にて既に潤滑剤が塗布された状態の経鼻エアウェイが封入されていることにあります。

新製品の実用性
 ですが、「これは便利!」と手放しで喜ぶには少し早いかも知れません。経鼻エアウェイを訓練でも用いた経験がある方は分かると思いますが、グローブをした状態で潤滑剤のパッケージを開けて経鼻エアウェイに塗布することは非常に細かい作業です。よって、潤滑剤が既に塗布されているのはその手間が省けて良いように思われますが、経験がある方は同時に滑り易さが逆に邪魔になることが分かるかと思います。

 新製品を身に着けたり手にするだけで満足するマニアは別として、自身や仲間の命を場合によっては装備品の性能に預ける可能性のあるプロにとっては、自身でしっかりと試して実証を重ねてから導入するか否かを判断することが求められます。



Posted by Shadow Warriors Training at 23:50 │小ネタ