2022年11月28日

野外衛生:負傷と病気について(2)

野外衛生:負傷と病気について(2)
 戦場における感染症と聞いて一番に思いつくものは破傷風であるかと思いますが、これに対しては予防接種があります。軍隊では派遣先で起こり得る疫病などに対しては存在し得る予防接種は全て義務付けるのが通常であり、自衛隊でも海外派遣の前に複数の予防接種を隊員に対し接種します。しかし、残念ながら全てを防げる訳ではありません。

 病気の大部分は小型哺乳類や昆虫などの野生動物が媒介生物となりますが、米軍は二次世界中にはDDT(ジクロロジフェニルトリクロロエタン)の散布によって蚊を殺虫することでマラリアの症例を大幅に減らしました。米軍は現在では環境への影響などからDDTを使用していませんが、代わりに忌避剤であるペルメトリンの成分が染み込んだ戦闘服を着用し、露出する皮膚にはディートを成分とする忌避剤を塗布することで蚊などの吸血害虫が媒介となる疫病から隊員を守っています。戦闘服は繰り返し洗濯することでペルメトリン成分が抜けてしまいますが、これはスプレーを施すことで繰り返し効果を持たせることが出来ます。因みにペルメトリンやディートは日本国内でも日常的に用いられている薬品であり、市販の虫除け剤の成分です。

 ペルメトリンを成分としたスプレーと、ディートを成分とした皮膚用の昆虫忌避剤の組み合わせは安価であると同時に簡易であることから、アフリカや東南アジアなで活動する特殊作戦部隊にとって最も効果的とされています。また、それらを共に訓練する同盟軍部隊にも供給することで、彼らを疫病などから守ることで戦力維持に繋がり、加えて同盟軍部隊が疫病の予防を真剣に考える様になるとその社会全体の疫病への対策に対する意識や能力が向上することとなり、いわゆるハーツアンドマインド(民心獲得)の1つが達成されて有効な関係を維持することに繋がるとされています。たかが虫除けの話しですが、隊員の健康を守るために基本を疎かにすることだけでなく、それを同盟国との関係性にまで視野に入れて行動することが米軍の特殊作戦部隊には期待されています。

 因みにコンバット・ライフハックの1つを紹介しますが、カモフラージュクリームを塗る際に虫除け剤と混ぜて伸ばすことで、虫除け成分を有するカモフラージュを皮膚に施すことが可能となります。なお、目の周辺と額にはカモフラージュクリーム(またはドーラン)だけを塗布する必要があります。その理由は、頭や額から流れ落ちた汗が目に入ることがありますので、目には刺激が強い虫除け剤成分が汗と共に目に入らない様にするためです。

終わり





Posted by Shadow Warriors Training at 00:02 │小ネタ