2022年06月05日

ウクライナ侵攻に見る情報戦・心理戦について(2)

ウクライナ侵攻に見る情報戦・心理戦について(2)
 相手の考えや行動を揺さぶるための心理戦に不可欠なのが情報であり、それを操作するのが情報戦となります。前回述べた様に、情報には誤情報、偽情報、対立意見などが含まれます。国の立場を守るために正しい情報を提供し続けることは重要ですが、それは防御的な情報の使い方に過ぎません。攻撃には正しい情報に加えて、誤情報、偽情報、対立意見が巧みに用いられます。

 平時の状況を見ても分かるように、中国の海洋進出に関し当の中国政府は自身に非があることは一切発せず、日本や米国を批判し続けることに徹しています。明らかな嘘や欺瞞であることは当事国としては明白ですが、アフリカなどの遠い第三国にしてみればどちらが真実か分からないため、インフラ整備や金融政策などで手助けをされれば偽情報であるにも関わらずそれが真実であると信用してしまう。そして国連総会などにおいて中国よりの意見を述べたり投票などで中国をサポートする側にまわる。情報戦による結果の一例です。

 つまり情報戦で重要なことは、情報の質、量やタイミングだけでなく、敵対的な情報が牽引力を得る前に関与することにあります。情報が信じられるか否かは誰が何を発するかだけでなく、受け手である外部の観察者によって裏付けられた場合に信頼性を生み出します。

 今回のウクライナ侵攻においてロシアの情報戦キャンペーンは偽情報を国の内外に発しています。加えて外部から入る都合の情報を制限することにも力を入れています。平時の中国や北朝鮮とほぼ変わりません。ですが、それよりも強いイニチアチブ(主導権、牽引力)を持って自国や敵国にだけでなく諸外国に対して迅速に関与したのはウクライナ側から発せられる情報でした。破壊したロシア軍の戦車の映像や撃墜したロシア軍の戦闘ヘリの画像、更には国内に残り強いリーダーシップを発揮する大統領自身の姿を発信することで国内に対しては士気を鼓舞し、ロシア軍に破壊された学校、病院、住居の映像を発信することで国際社会に対してはロシア軍による暴挙を知らしめる。既に普段からロシアの国営メディアが流す情報に懐疑的であったことから、ウクライナ側が出す対ロシア情報は西側社会を中心に早い速度で受け入れられ浸透しました。その結果ウクライナは、西側社会からの膨大な額にのぼる軍事援助を引き出すことに成功しています。

(3)へ続く



Posted by Shadow Warriors Training at 23:44 │小ネタ