2021年12月12日

Shooting 対 Fighting (6)

Shooting 対 Fighting (6)
 最後に、「正しいクセ」をインプットするためには、ドリルを構築する上で心理学や運動生理学を理解しておく必要があります。別に学位を得たり深い研究を極める必要はありませんが、少なくとも極限状態に人間に起こり得る生理学的な現象に関して知っておく必要があります。

 と言うのも、緊張や興奮などアドレナリンが必要以上に身体に作用する状況下では、人間は落ち着きを取り戻すまでの間は思考して行動することが出来ずに本能的な行動しか出来なくなってしまいます。またその間は、平時の状況と同じように自由に身体の全ての機能を使いこなせることが出来なくなります。よって、複雑な手順や動きを「クセ」として身体に覚えさせようとしても、どこかのレベルで限界がきてしまいます。

 作戦を計画する際にはKeep it stupid simple (KISS/バカでも分かるくらい単純に)とアドバイスされます。混沌とした状況において複雑な作戦は途中で漏れが発生したり動脈硬化を起こしたりして上手く機能しない経験則からのアドバイスですが、射撃訓練・戦闘訓練でも同じです。混乱した頭でも自動操縦的に目的を達成するために身体を動かすには、「クセ」として植え付ける手順や動きは複雑難解なものは捨てて極力単純明快なものとする必要があります。

 同じようで一部だけが異なる複数の手順は、必要な時に別の動きを思わず行ってしまう危険性があります。視覚や聴覚に頼る手順は、脳が一時的にフリーズした状況では何も見えず何も聞こえません。単に格好をつけるためだけであれば何も考えずに海外の有名インストラクターの真似事をしていればいいのですが、本当のタクティカル・トレーニングの目的は敵を倒して生き残ることですので、ドリルやLPを構築する際はShootingとFightingの違いをしっかりと理解し、いかにすればFightingに必要な要素が身体に植え付けられるかを研究する必要があります。

 最後にもう一度ご自身に問いてみて下さい。普段の訓練は単なるShootingが目的ですか?それともFightingを目的としていますか?

終わり



Posted by Shadow Warriors Training at 23:31 │小ネタ