2021年05月31日

タクティカル・トレーニングの先にあるもの(2)

 タクティカル・トレーニングの目的は戦いに勝つための心構え、戦術、技を教えることであると前回述べましたが、これを訓練生に植え付けるためにはそれを目指して作成された訓練プログラムが必要なだけでなく、それを教える側にも責任があります。例えば、射撃時の狙点として「センターマス」という言葉を聞いた方は多いと思いますが、標的を撃つ場合はその「センターマス」を狙う様に説明するインストラクターが未だ存在します。標的を縦半分と横半分にした想像上の線を引き、2本の線が交差する点を狙点とする撃ち方が存在しますが、それは狙点と着弾点とがズレる可能性のある狙撃などの際にその「ズレ具合」を測りやすくするための狙い方であり、前述の2本の線が交差する点はセンターマスではありません。

 ではセンターマスとはどこか?下の写真の4名のセンターマスを示してみて下さい。
タクティカル・トレーニングの先にあるもの(2)
 明確に示せる方はいないでしょう。ぶっちゃけ私は無理です。そもそもセンターマスとはなんぞや?重心?体の中心?そうであれば腹の辺り?正直言って定義も曖昧です。また、腹の辺りであったとして、そこを撃ったところで瞬時に無力化することは残念ながら望めません。

 では下の写真のポイントマンと撃ち合いになった場合、どこを撃ちますか?
タクティカル・トレーニングの先にあるもの(2)
 体の中心や重心の辺りである腹を撃つ方はいますか?おそらく皆無でしょう。誰しもが相手を瞬時に無力化するには胸の上部から頭部にかけて撃つと思いますが、この実戦的な狙点とセオリー上の狙点であるセンターマスとの違いは、普段標的を相手にした訓練が実戦的であるか否か(命中精度だけを重視した検定射撃か、生存を意識した実戦的射撃か)の判断基準になります。

 タクティカル・トレーニングは戦いの場を想定した訓練であることから、訓練プログラムも教える側も「撃つ」だけでなく「撃ち合う」ことを想定している必要があります。

(3)へ続く



Posted by Shadow Warriors Training at 21:47 │トレーニング哲学