2021年03月07日

ルームサーチ/ルームクリアリングについて(1)

ルームサーチ/ルームクリアリングについて(1)
 近年ではどの国の軍隊でも兵士(特に歩兵)に対してルームクリアリングの技術を訓練することが一般的になっています。しかしながら、その訓練が効率的に行われているかと聞かれると、残念なことに必ずしもそうではないのが現実です。多くの訓練の現場では、建物の個々の構造的な特徴に合わせた戦術、技術、手順(Tactics, Techniques, Procedure / TTP)を教えていますが、問題としては1つの構造に対するTTPが必ずしも異なる他の構造の建物にも適用出来るとは限らないことです。

 TTPとは個別の問題に対する対処法の様なものであり、全ての戦況に対し単一のTTPで対処出来るものではありません。CQBにはCQBのTTPがあり、野戦には野戦のTTPがあり、警備には警備のTTPがあります。加えて、武器や装備の進化に対応させたり、敵の新たな戦術への対抗策としてTTPは改変されることから、言ってみればTTPには「消費期限」があります。よって、単にボタンフック・エントリーやリミテッド・ペネトレーションのやり方を学んだだけの兵士は、それらを学んだ特定の状況下でのTTPについては理解しているものの、他の状況下で効果的に戦えるかについては疑問が残ります。また、この問題はSWATなどの警察特殊部隊にも多く見受けられるのが現状です。

 ボタンフックやリミテッド・ペネトレーションを教える事が問題ではありません。それらはTechniquesとProcedureに該当するものであり、要件が合致する場面では適用されるべき技術や手順です。問題はTacticsの部分の教え方が疎かになっているケースがあることです。Tactics(戦術)を理解するには、自分自身や部隊が行動する前に、その行動の理由と原則を知っておく必要があります。原則が教えられ、それに基づいた訓練がされている場合、兵士は異なる構造の建物や部屋に対しても適切に対応することが出来ます。しかしならが、技術一辺倒の訓練しかされていない場合、訓練されていない構造や環境の建物では効果的に戦えません。

 そこで今回のシリーズでは、CQB戦術の基礎となるルームサーチ/ルームクリアリングにおける原則を紹介したいと思います。

(2)へ続く



Posted by Shadow Warriors Training at 23:26 │小ネタ