2020年10月04日

トランスフォーメーション(2)

トランスフォーメーション(2)
 GWOTが進むにつれて特殊部隊のニーズが次々と増えたのは事実です。そもそもどこの国の軍隊でも一般部隊は他国の正規軍部隊とぶつかるための訓練をしていますので、対テロや対反乱作戦(COIN/Counter Insurgency)に特化した訓練は受けていないか受けていても限定的です。イラクやアフガンでは正規軍やそれに相当する武装兵力との衝突は極々最初の段階だけであり、その後は現在に至るまでISやタリバンといったゲリラ戦を主戦法とするテロ・武装組織と戦いです。

 このギャップが米軍を始めとした同盟国の軍隊の軍事ドクトリンに変化(変更)をもたらしました。その一例が、特殊部隊と一般部隊との間にあるCOINに対する訓練・装備レベルのギャップを埋める事でした。米軍ではAsymmetric Warfare Groupが立ち上げられ、一般部隊に対する対テロ・COIN戦術に関する専門的な訓練が施されてきました。もう一つの例が、現地政府軍や警察部隊の訓練を特殊部隊や一般部隊が分担して(ある意味バラバラに)担当していた状況を改善させ、特殊部隊を本来の特殊作戦に従事させるために、米軍が立ち上げたSecurity Force Assistance Brigade(SFAB)です。英軍も同様の任務に従事するSpecialised Infantry Groupを立ち上げられ、この流れは米軍と特に関係が密なNATO全体に波及しNATO軍の間でもSecurity Force Assistanceに関する訓練や組織改革が実施されています。

 米軍ではこのSFABの誕生により、特殊部隊による他国部隊に対する訓練に変化が起こりました。これまでは特殊部隊も他国の一般部隊を訓練することがありました(特殊作戦ドクトリンの一つのForeign Internal Defenseと呼ばれる分野です)が、新し米軍のドクトリンに従えば、これからは一般部隊への訓練はSFABが担当し、特殊部隊は他国の特殊部隊への訓練のみを担当する図式と変わりました。何でもかんでも特殊部隊頼みとしていた体制を変えて負担軽減を目的とした動きですが、中南米における対麻薬戦でも特殊部隊に代わりSFABが担当することとなり、特殊部隊の中では懸念される声が出ている様です。

トランスフォーメーション(2)
 沖縄に駐屯する陸軍特殊部隊員による、自衛隊の例の部隊に対するFIDの一幕です。

(3)に続く



Posted by Shadow Warriors Training at 13:53 │小ネタ