2020年04月05日

戦術と先進技術の関係について(4)

戦術と先進技術の関係について(4)
 また代替案は常に複数を用意しておくことに越したことはありません。このブログでも以前に紹介していますが、Primary、Alternate、Contingency、Emergencyの4つの頭文字からなるPACEプランと呼ばれるものがあります。このPACEプランを行動前に準備し、共有し、訓練していなければ、高価なセンサーが故障しただけの理由で部隊の動きが完全にストップしてしまうことに繋がりかねません。近年ではGPS機能が一般的とななり過ぎたことから、欧米の若い兵士は地図とコンパスを用いたランド・ナビゲーション能力が低いことが指摘されています。勿論GPC装置の故障や誤作動といった問題は認識され共有もされてはいるのですが、代替案としての地図判読の訓練に時間が割かれていないことが原因です。

 先進技術は確かに戦術の幅を広げ、優位性を高めてくれます。しかしながら、先進技術が戦術そのものを取って代わることはありません。先進技術は戦術を補完するものとして理解しておく必要があり、最新の機器が無くとも戦える戦術を普段から訓練しておかなければ、たった一つの機器の故障で部隊全体が被害を被ることに繋がりかねます。

 2017年の夏にBravo Company USAがYoutubeで配信した「The Capability」(https://www.youtube.com/watch?v=3yReIGUV9UE)という動画をご覧になったかと思いますが、この動画ではそのようなセンサーの類やケムライトを例にしたマーキングは行われていません。掃討済みの部屋と未完の部屋との区別が分かり難い中、採られていた戦術は至ってシンプルなものです。

 ・一度立ち去った部屋に再び立ち入る際は、再度ルームクリアの手順を踏む。
 ・支配地域として残す部屋には隊員を配置しておく。
 ・全ての部屋をクリアした後は廊下の両端に隊員を配置することでフロア全体を支配地域とする。
 ・階段の上下と踊り場に隊員を配置することで階段の上から下までを支配地域とする。

 作戦地域の確認には航空写真を用いていますが、建物を占拠するにあたっては何ら特別な先進技術を用いることはしていません。原始的なやり方だけで建物内の脅威を排除し占拠するといった目的を達成しています。この映像では小隊程度の規模の部隊で急襲していますが、人数が少ない場合は少ない人数に適した戦術を用いれば先進技術に頼る必要はありません。

 先進技術はあくまでも戦術を補完する存在です。装備に文句を言っても結局官品しか手に入りません。重要なのは心構えと戦術です。

終わり



Posted by Shadow Warriors Training at 10:12 │小ネタ