スポンサーサイト


上記の広告は1ヶ月以上記事の更新がないブログに表示されます。
新しい記事を書くことで、こちらの広告の表示を消すことができます。  
Posted by ミリタリーブログ at

2019年03月25日

対IED戦術(2)

 対IED戦術に必要な装備の配備の特徴的な例としては、MRAPなどの対IED効果の高い車両の配備が挙げられます。この様な車両を配備するだけでは装置を起爆前に無力化させることには繋がりませんが、爆発被害を軽減し、乗員の死傷のリスクを低減することに大きな効果を奏します。勿論、闇雲に装甲の分厚い車両を設計すれば良い訳ではありません。走行性と防御力のバランスをとるためには、必要以上の装甲は不要となりますので、敵のIED戦術のトレンドを的確に把握する研究が機能しなければ、効果的な装甲車両の開発は税金の無駄遣いだけでなく人員の死傷に繋がってしまいます。

 部隊の訓練の一例としては、直近の事例からIEDが仕掛けられやすポイントを情報共有することが挙げられます。

 上の写真では道路が右にカーブしていますが、右側は斜面になっており、カーブの手前からはその斜面の向こう側を見ることが出来ません。IEDの設置場所としては、この様なカーブの死角が頻繁に選ばれています。また、直線の道路では、デコイとして故障車両などをわざと放置しておいて、それをかわそうと車線変更することを見越して路肩にIEDを設置する戦術が頻繁に取られています。


 因みに先程のような舗装路と上の写真の様な田舎道とどちらがIED攻撃のリスクが高いと思いますか?

 舗装路の場合は路肩や放置車両などにIEDを仕掛けるしか隠す方法がありませんが、未舗装路は道路の真ん中でも路肩でもIEDを埋設することが容易であることから、IED攻撃のリスクは高まります。また、この写真の様に路肩に植え込みがある場合は、その植え込みの中に隠すことも簡単です。よって、カーブの先の見通しは悪いが路面と路肩の状態を目視確認しやすい舗装路よりも、隠し場所が多い上の写真の様な未舗装路の方がIED攻撃のリスクは高くなります。
(3)へ続く
  

Posted by Shadow Warriors Training at 00:07小ネタ

2019年03月10日

対IED戦術(1)


 前回までのシリーズでISISによるテロ攻撃のパターンの1つにIED攻撃があると述べましたが、今回は対IED戦術について開示出来る範囲で書いていきます。米軍を始めNATO諸国における今日の対IED戦術は、①装置の無力化、②部隊の訓練、そして③敵ネットワークへの攻撃、という3本柱から成り立っています。

 ①装置の無力化には、対IED戦術に必要な装備の配備、起爆前の無力化もしくは爆発被害の軽減、爆破効果と死傷者の低減、そしてトレンドの把握と対策の研究が含まれます。

 ②部隊の訓練には、現場の各部隊に対して対IED戦術に必要な訓練プログラムの作成と提供、戦場における事例の迅速な共有、そして統合組織を介した他軍種との事例の共有が含まれます。

 ③敵ネットワークへの攻撃には、発見された装置の解析と鑑識を含めた敵ネットワークの解明のための戦果拡張、並びに戦術レベルから戦略レベルまでに至る作戦及び情報部隊による解析された情報の融合が含まれます。


 イラク・アフガン戦までも、IEDを無力化する任務はそれを専門とする爆処理班(EOD)が担当していました。これはイラク・アフガン戦以降も同じです。ですが、それまではEOD内部でしか事例の共有はされておらず、また他軍種のEODとの合同訓練でも実施されない限り、他軍種とのEODとの情報交換の正規のパイプはありませんでした。更に、以前でも装置の解析は行われていたものの、その特徴のデータベース化や世界の別の場所での事例との比較については大々的かつ組織的には行われていませんでした。

 イラク・アフガン戦では多国籍部隊による作戦が展開されたことから、米軍内だけでなく、NATO軍やその他の同盟諸国との情報の共有化が部隊の生存性の向上に繋がるとされたことで、組織だった対IED戦術の確立が加速されました。
(2)へ続く
  

Posted by Shadow Warriors Training at 22:13小ネタ