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Posted by ミリタリーブログ at

2017年05月29日

プロ用コース追加、及び装備品レンタルについて


お知らせ#1: プロ用コースに新しいコースを追加しました。

 ウェポン・コースのレベル2の次の段階にあたる、Close Quarters Gunfight (CQG・近接戦闘射撃)コースです。これまではレベル2の次はSUT-Bでしたが、チーム戦術よりも個人レベルでの戦技の向上を目的として、云わばレベル3的な内容のコースを作成しました。

 CQGでは、各自がレベル2までで習得したマインドセットやテクニック、戦術が身に付いているかを「テスト」する内容のドリルに加え、レベル1・2だけでは時間的にカバー出来なかったテクニックや戦術を訓練します。また、個人レベルでのコーナリングやエントリーといったCQBテクニックも訓練します。詳しくはこちらをご覧下さい。


お知らせ#2: プロ用コースで装備品のレンタルを始めました。

 トレーニングには興味があるけど、マイエアガンを持っていない。とりあえずレベル1だけでもお試しで受けてみたい。仕事に役立つ技術は習得したいけど、エアガンなんか買ったら嫁さんに殺される。などなど色々あるでしょうから、ピストル用レンタル装備品とライフル用レンタル装備品を揃えました。

 ライフル用レンタル装備:
 ・SORD製チェストリグ
 ・EMDOM製マガジンポウチ
 ・MAXPEDITION製アドミンポウチ

 ピストル用レンタル装備:
 ・ATS製ウォーベルト(バックルはコブラバックルに替えています)
 ・ATS製マガジンポウチ
 ・ブラックホーク製シェルパ・ホルスター

*2019年1月より、装備品レンタルを中止しました


お知らせ#3: 6月の臨時休業について

 誠に勝手ながら6月14日から25日まで欧州遠征訓練に出ます。ヨーロッパにいる新しい仲間の紹介もあり、ドイツとチェコで訓練してきます。その間、お申し込みのメールを受け付ける態勢は取れていますが、タイムリーに返信出来るかは申し訳ありませんが保障出来ません。訓練スケジュールや疲労度にもよりますが、ご連絡頂きました順に出来るだけ速やかに対応させて頂きますのでご了承願います。

 先方の許可が取れれば、訓練風景を撮影してきます。


 それでは、新コースや装備品レンタルを含め、皆様からのお申し込みをお待ち致しております。  

Posted by Shadow Warriors Training at 22:26お知らせ

2017年05月26日

ターゲット・ハードニングとは?(1)


 先日イギリス・マンチェスター市で発生した爆破テロの後に、ロンドン市内をパトロールする警察官と兵士の様子です。国家のテロに対する確固たる姿勢が見れる、非常に「絵」になる光景です。この様な態勢を見せることで、次の事件の抑止に繋がるといった考え方がありますが、実際のところ効果としてはYESでもありNOでもあります。

 何も警備体制が敷かれていない施設よりも、非武装でも警備員が常駐する建物の方がテロ攻撃を受け難かったり、警棒だけを所持している警備員が就く施設よりも、臨時的であっても警察官が警戒にあたる施設の方がテロ攻撃を受け難いのは統計的に見て事実です。この様にテロ攻撃や犯罪などの標的になり易いソフト・ターゲットを、警備体制・反撃態勢を整えて攻撃を受け難くさせることを、ターゲット・ハードニング(発音的にはターゲット・ハーデニング/Target Hardening)と言います。

 そもそもテロリストは被害規模を大きくしてメディアの注目を集めることを目的としていますので、連中にとっての作戦の成否はどれだけ多くの人を犠牲に出来るかに係っています。そのため、商業施設・交通の要所・観光地といった人が多く集まったり行き来する場所が標的(ターゲット)として狙われますが、この写真のような「見せる警備」を行うことで、テロリストを人の集まりに近づき難くすることが期待出来ます。限定的ではあるものの抑止効果として一定の効果があることから、先に述べた実際の効果としては「YES」と言えます。

 反面、当初よりテロリストが警察官や軍人を標的としている場合には、反撃態勢を高めることで被害の規模を最小限にすることは期待出来ても、テロ攻撃そのものを抑止することはあまり期待出来ません。よって、この様なケースでは実際の効果は「NO」と成らざるを得ません。

 戒厳令を敷いて全ての交差点、駅、空港、港、政府施設、商業施設に重武装の警察部隊や軍隊を配置すれば、テロリストの行動は制限され結果として抑止効果が発揮されます。ですが民間人の日常にも支障が出ることと、物理的に人数が足りないので不可能です。そこでターゲット・ハードニングでは先に述べた大多数の人が集まる場所や交通の要所、攻撃の標的とされやすいシンボル的なランドマーク(ウエストミンスター大聖堂が写真の例です)、攻撃を受けた際の二次被害が懸念されるインフラ施設や化学工場などに優先的に警備部隊を配置します。

 当然、主要箇所に集中配備することでターゲット・ハードニングが成されないソフト・ターゲットのままのとなる箇所も出てきます。しかしその様な場所は、元々人の行き来が少なかったり、シンボル的な意味合いがない等、テロリストにとってメディアの注目を浴びない場所ですので、100%起こり得ない保障はありませんが統計学的に見て攻撃を受けるリスクが低い場所であると判断された場所になります。
(2)に続く
  

Posted by Shadow Warriors Training at 22:33小ネタ

2017年05月21日

MACTACについて(4)


 ではこのシリーズの最終回として、2015年11月13日に発生したパリ市内におけるISIS戦闘員による攻撃を詳しく見て行きたいと思います。少々長くなりますが、お付き合い下さい。

 この事件は短時間のうちに合計7ヶ所にて攻撃が行われ、特にスタジアム、バタクラン劇場、劇場周辺エリアの3ヶ所にて特徴的な攻撃がなされました。使用された武器は銃器と爆発物、結果として130名の命が奪われると共に350名以上が負傷する結果となりました。

 まずはスタジアム(Stade de France)での爆発事件について。ここでの特徴としては、爆発による建物の崩壊や、初回の爆発による市民・観客の大量殺戮はテロリストの戦術になかったことです。1つ目の爆発は2120時に、スタジアム入り口(Gate D)にて自爆ベストの存在がスタジアムの警備員に発見されたことを契機に起こりました。2つ目の爆発はそこから程近い別の入り口(Gate H)にて2130時に発生。そして3つ目がスタジアムから約400m離れた地点にて2153時に起爆されました。なぜ3回に分けて別の場所にて起爆させる戦術が採られたのか?それは爆発によるパニックで逃げ惑う群集を狙い撃ちにするためです。1撃目の爆発を知って逃げ出した群集を2撃目で殺傷し、更に2撃目の爆発を知ってそれとは反対側に逃げる群衆を3撃目で殺傷することがテロリストの戦術でした。

 しかしフランス政府と警察当局はスタジアム内にてサッカーの試合が続行中であったことを好機と捉え、観客には詳細を伝えぬまま(パニックを起こさせないために)、3つ目の爆発前であるハーフタイムに入る直前に、観客に知れることなくスタジアムの全ての入り口を封鎖するといった「シェルター・イン」を実施しました。よって、観客がテロリストが当初描いていた計画とおりに動くことなく、結果としてスタジアムでの爆発事件での観客の死傷は避けられました。勿論この判断は「賭け」の要素も含んでいます。何故ならスタジアム内にテロリストの仲間が浸透しており、内部でも自爆ベストを起爆する恐れもあるからです。しかし入り口での厳重なセキュリティーチェックを行っていたことによりスタジアム内には爆発物・銃器の持ち込みはないと判断されたことから、避難ではなく敵を中に入れない「シェルター・イン」が行われ、結果として観客が爆破物の犠牲になることは避けられました。


 次に劇場周辺エリアでの襲撃事件について。このエリアでは銃器を所持した複数のテロリスト車両で移動しながら次々と無差別発砲を行いました。最初は2125時に2軒のレストランにて発砲、次に2132時に500m程先のカフェにて発砲、続いて2136時に先のカフェから2km程離れた場所のバーにて発砲、更に2140時に別のカフェにて自爆テロ(この自爆による死者はなかったとの報告)、そして同時刻に銃で武装したテロリストが劇場に侵入。これが一連の流れでした。

 直線距離にして僅か3km程の位置に点在する5ヶ所を次々と移動を続けながら市民を無差別に攻撃してきた、これこそがMACTACの定義に当てはまる新たな脅威の特徴です。複数のメンバーが別々の場所で活動を開始し、最終的な攻撃の前に集結した2008年のムンバイでの事件と同じパターンです。

 そしてテロリストにとってフィナーレの場に運悪く選ばれたのがバタクラン劇場でした。2140時に劇場前に停車した別の車から自爆ベルトを着用した3名のテロリストが降り、劇場内に侵入すると同時に無差別発砲を開始しました。その後はご存知の通り、約3時間の包囲の末の警察部隊による突入によって1名射殺・2名自爆という結果となりました。なお劇場内では89名の観客が命を奪われました。

 事件当日の速報では当初劇場内には60から100名ほどが「人質」となっていると報道されていましたが、真相はどうだったのでしょうか?実は今回のバタクラン劇場での事件は旧来の「立て篭もり」や「人質事件」とは全く異なるものです。敵が狂信者であっても2002年にモスクワで発生した劇場占拠事件のように、人質事件では他人の命に危険が及ぶことを匂わせておいて何かしらの要求をメディアなどを通じて広く世間に出すことで注目を浴びることが犯人の「目的」です。この様な事件では人質を取ることはその為の「手段」です。ところが、バタクラン劇場では警察部隊やメディアに対して一切の要求は出されておらず、シリア空爆への報復を謳いながら観客を殺害することだけが「目的」でした。これは言ってみれば、犯人の数や武装の規模が大きな1つのアクティブ・シューター事件であり、テロリストの動きを早急に止める以外に不運にもその場に居合わせ逃げ出す術を失った観客の命を助ける方法はありませんでした。


 もし銃器だけでの犯行であればフランス警察当局はもっと早い段階で突入していたはずです。アクティブ・シューターによる犠牲者を減らす唯一の手はアクティブ・シューターを速やかに無力化することであることを彼らも理解しています。ですが彼らはそれが出来なかった。何故ならその前段階のスタジアムとカフェにて自爆攻撃が確認されていたことから、突入部隊を標的とした自爆テロが予期されたからです(結果的にも突入後にテロリストの1名は自爆しました)。では劇場に突入した部隊は、どの様な戦略・戦術を練っていたのか、或は練る必要があったのか?興味深いことだと思いますが、不特定多数が読むブログですので、戦略・戦術やハイテク装備などに関する情報を守る必要がありますので、言及することは控えさせて頂きます。
 *組織間・部隊間のOPSECに関しては以前述べたスタンスを崩しませんが、一般への情報開示については全く逆であり、開示すべきでない情報は何があっても出しません。

 以上が、パリ襲撃事件当日の動きと攻撃の特徴になります。ムンバイの事件とほぼ同じ戦術がとられており、ISIS等のイスラム過激派が西側に居住するシンパや西側に浸透、或は帰国した構成員に対して、どの様に西側諸国の大都市でテロを起こすかを示したマニュアルに沿っが襲撃パターンとなっています。この事件を契機に警察庁は各都道府県の銃器対策部隊に自動小銃の配備を決定しましたが、紙の標的を相手とした命中精度だけに主眼を置いた訓練でなく、逃げ惑う群集をかき分けながら標的へと距離を詰め、更なる犠牲者を出さないために少しでも早くテロリストを無力化するために必要なハイレベルな訓練が施されることを望みます。
終わり
  

Posted by Shadow Warriors Training at 17:53小ネタ

2017年05月14日

MACTACについて(3)


 更に、MACTACでは警察官に考え方と心構えの変化を余儀なくされます。これまでのアクティブシューター事件や立て篭もり事件における警察部隊到着後の犯人の行動は、投降したり自殺を図ったり、ある程度の抵抗(反撃)を行うといったパターンに分けることが出来ます。しかし、MACTACで対峙する敵は高度な訓練を受けたテロリストであって、場合によっては警察部隊よりも強力な火力を有しており、警察部隊に対して反撃してくることが十中八九確実です。連中は元から警察部隊を殺害・排除してでもテロ行為を計画通りに遂行することを作戦としており、その作戦の中において警察部隊との交戦は始めから想定・計画されています。その為、投降や自殺は期待出来ず、警察部隊は当初から強大な火力を有するテロリストの徹底抗戦を受ける「覚悟」を持って現場に赴く必要があります。

 従って、欧米ではアメリカのNTOAといった団体を始め、MACTACはSWAT用ではなく一般の警察官を対象としたトレーニングコースとして存在します。そこでは射撃や戦術だけではなく、重武装かつ死を覚悟し警察部隊の殺害を作戦目標の1つとするテロリストとやり合うための心構えも訓練します。そこでは場合によっては「逮捕」を目的とした警察官としてのメンタルを捨て、「脅威の排除」を目的とする軍人としてのメンタルを備える必要性を提起されます。そして訓練生がもしこのメンタルの切り替えを躊躇したり出来なかった場合は、コースの中で行われる想定訓練で必ずと言って良いほど「殉職」することになります。

 幸い日本国内ではパリやムンバイの事件の様なことは起きていませんが、未来は不確かです。起こるとも言えなければ、起こらないとも言えません。ただ確かなのは、「敵」が用いてくる新しい戦術に対応出来なければ、市民や仲間を守るどころではなく自分自身も守れないと言う事です。捜査や鑑識が新たなテクノロジーを用いた犯罪に対応し続けるのと同じで、地域課や機動隊も新たな脅威に対応し続けなければならない運命にあります。テロリストが国内に浸透を図り、このMACTACが定義するレベルの攻撃を2020年のオリンピックで企てないことを祈るばかりですが、残念ながら平和を希求するだけでは安全は確保されません。対処能力としては勿論、抑止力として対応策を講じなければ、敵にとってソフト・ターゲットと見なされます。
(4)へ続く
  

Posted by Shadow Warriors Training at 20:36小ネタ

2017年05月08日

MACTACについて(2)


 このMACTACでの問題・課題は、これまで高度な戦術訓練を受けてきたSWAT隊員だけでなく、一般の制服・私服警官もがこの新たな脅威に対応しなくてはならないということです。これまでは単独のアクティブ・シューター事件や立て篭もり事件であったものが、このMACTACの定義では、それら1つの「攻撃」は、巧みに計画された全体の一部であり、また次の段階への通過点であると言うことです。また、一連の攻撃の中での初期の段階の攻撃は、それに対応する警察部隊や救急部隊を誘き寄せるための手段であることも特徴です。

 そこでロス市警やラスベガス市警、ロサンゼルス郡保安官事務所などでは既にSWATだけでなくパトロールの警察官(日本で言う地域課員)も参加して、同時多発的な攻撃への対処訓練を実施しており、その流れは全米だけでなく欧州にも広がっています。具体的な訓練内容としては、大規模な部隊を一度に投入せずに常に予備戦力を残して対処すること、SWATと制服警察官との混成部隊での初動を図ることでSWAT戦力の枯渇を防ぐこと、そして救急チームに頼らずに自力で現場で負傷者に最低限のケアを施すことです。

 勿論この様な訓練を実施するには、制服警察官に対して高度な戦術訓練と最低限の戦闘衛生訓練を施すことと、SWATと制服警察官との連携(戦術とコミュニケーションの双方)の強化が必須課題となります。ですが、新たな脅威に対抗するためには、小規模かつ混成部隊による対応を取らざるを得ません。仮に最初の攻撃が唯一のものであり、事件そのものがMACTACの定義に当てはまらないと判断されれば、増援部隊を送り込むことが出来ます。ですが、最初の攻撃がこれから始まる一連の同時多発攻撃の口火であった場合、そこに大部分の戦力を投入してしまうとそこから戦力を分散させることが極めて難しくなります。

 また、MACTACの特徴としては、屋内戦だけでなく繁華街や観光スポットといった屋外での「戦闘」を余儀なくされることが挙げられます。ムンバイやパリの事件でご承知の通り、立て籠もりが発生するまではテロリストは路上で警官隊と銃火を交えていますが、この屋外戦闘は欧米のSWATでもこれまで特に力を入れて訓練してきた課目ではないことから、軍隊レベルでの市街地戦の動きを余儀なくされます。

 具体的には、屋内戦ではスタックを組んだりするなどして部隊が一塊となって行動する戦術が主流であったことに対し、屋外戦では自動小銃などによる一斉掃射での被害を少なくするために複数のツーマン・セルやフォーマン・セルによる分散化された戦術を余儀なくされます。部隊が分散化することで、敵の攻撃が1点に集中することが避けられると共に、その隙をついて射撃と運動(Fire & Maneuver)を用いて敵の虚を突いて攻撃を図ることが可能となります。しかし反面、部隊が分散化することで動きだけでなく全体の火力のコントロールが難しくなり、訓練を重ねていないと結果として分散化されただけで戦力的にダウンするだけになりかねません。
(3)へ続く
  

Posted by Shadow Warriors Training at 23:32小ネタ