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Posted by ミリタリーブログ at

2017年06月27日

欧州遠征訓練を終えて


 昨夜、欧州遠征訓練より帰って来ました。元イスラエル特殊部隊員の指導の下、ドイツ、オーストリア、ベルギー、デンマークの軍人やSWAT隊員達とCQB三昧の日々を過ごしてきました。渡航中は、ロンドン、パリ、ブリュッセルでテロ事件が発生し、ベルリンでも一時緊張が走りましたが、滞りなく訓練を終えることが出来ました。しかし、その後訪れたプラハでは中央駅での爆破予告事案に居合わせてしまいましたが、万が一の爆発と2次被害を想定して早急に駅や繁華街から離脱することで事なきを得ました。

 多国籍なチームを組むと、やはり戦術よりもリーダーシップとコミュニケーションが作戦成功への鍵となることを改めて感じました。全員がある程度の技術・戦術レベルに達していますので、部隊として動き出すと目的を果たすためにそれぞれが粛々と行動しますが、その第1歩を踏み出すきっかけをリーダーが明確に示さないと、言葉の壁もあって中々上手く機能しないことを痛感しました。

 今回参加したドイツ人、オーストリア人、オランダ人はある程度聞き取りやすい英語を話しましたが、ベルギー人だけはフランス語訛りの強い英語を喋ることから中々スムーズな意思の疎通が出来ませんでした。そこで、苦肉の策(?)として日本語訛りのアメリカ英語を話す自分がチームリーダーの職を命じられ、イギリス英語を教わったヨーロッパ人に日本人がアメリカ英語で指示を出すという特殊なチーム編成となりました。自分としては戦術よりもリーダーシップとチームワークを学ぶ機会が得られたことが大きかったので、期待していたよりも良い内容の訓練となりました。

 という事で無事に帰国してきましたので、本日より通常業務に復帰しています。トレーニングの予約も随時受け付けておりますので、よろしくお願い致します。

 写真はドイツでの訓練後の写真で、前列右から3人目が自分です。チェコでの写真は時間もなく撮れませんでした。悪しからず...内容については機会をみて後日お伝え出来ればと思います。  

Posted by Shadow Warriors Training at 00:03小ネタ

2017年06月11日

たかが弾倉交換、されど弾倉交換


 突然ですが皆さんは弾倉交換を何秒で出来ますか?ただ単に新しい弾倉を装着するだけでなく、確実に薬室に初弾を装填するまでです。 弾倉交換を素早く行う理由は、勿論攻撃の間隙を短くするためです。そこで先程とは少し違った方向から質問をさせて頂きます。弾倉交換は何秒以内に行うことが必要であると思いますか?

 単独で闘っている状況であれば、余裕はありませんので1秒でも早く行うことが求められます。しかし、仲間がいる場合は少しですが余裕があります。そこでは自分が何秒で弾倉交換出来るかではなく、仲間が何秒で弾が尽きるかが基準になります。例えば小銃で命中精度と射撃速度の適度なバランスを保った場合、1秒に4発までが現実的な射撃速度になるでしょう。そして28発入り弾倉を装填していた場合、弾倉が空になるまでには7秒を要します。という事は、仲間が弾切れになった時点で即援護出来るようにするには、7秒以内がベンチマークとしてはじき出されます。

 7秒以内での弾倉交換と聞けば非常に簡単に聞こえます。しかし、移動しながらや弾納に手が届きにくい窮屈な姿勢であった場合は、7秒はあっと言う間に過ぎます。更に、手元でさえ見ずらい低照度・無照度環境である場合は、ほぼ手探りで行いますので、普段の練習なくしては7秒は短く感じるはずです。

 また、弾倉交換には手順/シークエンスがあります。ヒントはこの写真に隠されていますが、このシークエンスを間違って練習していると、戦闘中に空の銃を持って右往左往することに繋がります。加えて、小銃から拳銃へのトランジッションが必ずしも正解とは限りません。確かにトランジッションは弾倉交換よりも早く弾を敵に対して撃ち続けることが出来ますが、拳銃で当てることが出来ない距離でトランジッションしたところで何の意味もありません。

 同じ弾倉交換といった単純な動作であっても、車内などの狭い空間であったり、窮屈な姿勢であったり、歩きながらであったり、走りながらであったり、暗闇であったりと、様々な状況下で行うことで違う結果が表れます。訓練や練習において最も重要なのは、己の限界を知ることです。出来ることしか見えない様では成長しません。逆に、出来ないことに気付き、それを克服・改善する道筋を見いだせた者にしか、成功へ辿り着く資格は与えられません。弾倉交換に限らず、異なる状況下で何か動作を行うことで自身の弱点が見えてくるはずです。あとは長所をさらに伸ばして、短所を克服するだけです。それに必要なことはひたすら練習を続けることに限りますが、その前に必要なことは弱点を見つけることになります。  

Posted by Shadow Warriors Training at 01:55小ネタ

2017年06月04日

ターゲット・ハードニングとは?(2)


 では、ターゲット・ハーデニングそのものは有効であったとして、軍と警察の混成部隊での警備やパトロールは有効と言えるのでしょうか?政治的に見れば有効と言えます。国が一丸となってテロに対する強い意志を見せつける意味合いを持ちますので、国内外への強いアピールになります。法律的な観点から言うと、これはそれぞれの国ごとに異なる問題です。我が国の様に治安出動として自衛隊を出せることは出来ても、残念ながら治安出動だけでなく自衛隊の存在そのものに反対する輩が大勢いますので、国際社会から見て当たり前と思える行為でも国内では反対運動の矛先と成り得るでしょう。

 では、戦術的な観点からはどうでしょうか?上の写真はアメリカのとある都市のSWATの訓練の様子です。お判りの様に、隊員の制服が統一されていません。その理由は、この部隊は複数の警察機構に所属する警察官から構成される、合同SWATチームであるからです。日本でも小規模の自治体が自前の消防機関を有することなく、周辺の自治体と合同消防本部を構成することがありますが、その様な感覚に近い部隊と思って頂ければ良いと思います。通常のパトロールや犯罪捜査は各自治体ごとの組織で行えるものの、人数や予算の関係からフルタイムのSWAT部隊を有することが難しいことから、選抜訓練を修了した警察官をそれぞれの組織から出して、構成する全ての自治体での事件に対処する部隊として機能させており、各自治体が警察組織を有するアメリカでは珍しことではありません。

 この様な部隊では、毎月各組織か隊員が集まって、合同で訓練を行います。そうしなければ部隊として機能することは期待出来ません。SWAT戦術を訓練したからといって、SWAT隊員として機能するとは限りません。何故なら、SWAT部隊は個人の寄せ集めではなく、チームで物事の解決に向かう組織だからです。交戦時の対処要領や、負傷者発生時の手順、通信要領や用語など、部隊として機能するために各隊員が同じ手順や戦術を認識・共有すべきことが多々あります。


 ですが、前回のブログで例として挙げた上の写真の様な警察官と軍人との混成チームの場合、それら対処要領や手順などが完璧に認識・共有されていると言えるでしょうか?これは普段から合同訓練を行っていないと、その場しのぎでアピールのために組まれたチームでは到底無理な話です。例えば、合同チームがパトロール中に武器を持った男を発見した場合、合同訓練を通じて対処要領を徹底していないと何が起こり得るでしょうか?考えられる最も典型的な例は、警察官が男に対して武器の放棄を命じたと同時に、軍人が男を射殺することでしょう。また、攻撃を受けた場合は、警察官は応戦しながら遮蔽物を目指し、遮蔽物の陰から戦いながら応援部隊を待つでしょうが、軍人は遮蔽物の陰に入り一旦身の安全を確保した後は、相手の動きを見ながらFire & Maneuverを用いて敵の殲滅に向かうでしょう。

 何れも対処要領として悪いことではありません。それぞれの組織が必要とされる要領を繰り返し訓練してきたことから咄嗟の判断として身体が動いただけの話です。警察官として正解の行動がとられたと同時に、軍人としても正解の行動がとられただけの話です。しかし、混成チームとしてはバラバラの動きをとった訳ですから、部隊としては失格となります。ウイングマンが付いて来ていると思っていたら、後ろの方の遮蔽物の陰に居たままだった。部屋に突入する前に出した手信号の意味が伝わっていなかった。スタックの前に居る隊員が再装填や故障排除を行う際に、自分たちの部隊のやり方とは異なる動きをしたことで、撃ち合いの最中に部隊が廊下の真ん中で身動きが取れなくなった。些細な認識の違いや、要領・手順の共通化を怠ると、時として人命に係わる問題が発生します。

 従って、政治的な物の見方と戦術的な物の見方は必ずしも同じ方向を向いている訳ではないので、普段からの手順・要領の統一化が図れないままアピール目的で何かをやろうとするのは非常に危険です。ただ、それを分かっていながらも、昔は第一戦にいたはずの偉いさんも雲の上の立場に立つと、残念ながら政治的な物の見方した出来なくなってしまうのが現状ですが...
終わり
  

Posted by Shadow Warriors Training at 19:15小ネタ