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Posted by ミリタリーブログ at

2016年06月26日

対アクティブ・シューター戦術

 フロリダ州オーランドのゲイクラブ「パルス」で起こったアクティブ・シューター事件は、死傷者数が約100名に及ぶ米国史上最大規模の事件となりましたが、この事件への対処要領について、オーランド市警察の判断と戦術が問題視されています。今回の事件では、事件発生時刻が0202時でしたがSWATの突入が0505時と、実に3時間後であったことが問題視されています。

 2015年11月にパリで起こった一連のテロ事件の現場となったバタクラン劇場では、事件発生(実行犯の劇場への侵入と無差別発砲の開始)が2140時であったことに対し、パリ警視庁の介入部隊であるBRIが劇場に突入したのが2215時と、実に僅か35分後のことでした。

 アクティブ・シューター事件では、犯人の数や武装、現場で巻き込まれた(取り残された)人の数などが突入部隊にとってタイミングや戦術を左右させる要因として考えられていますが、その辺りのややこしいことは抜きにして単純に被害者数の増加の要因が何かだけを考えると、犯人が警察部隊と交戦するまでどれだけの時間を自由に動き回れたかが自ずと答えとして挙がるはずです。

 1999年のコロンバイン高校での事件以降、対アクティブ・シューター戦術は大きく方向性を変えました。それまでは、現場を封鎖し、犯人の居場所を特定して、その場に釘付けする間、専門部隊(交渉班やSWATなど)の応援を待つことが一般的な戦術でした。しかしながら、そもそもアクティブ・シューター犯の目的は人質を取ることでも注目を集めて主義主張をメディアに伝えさせることでもなく、ただ単に目に見えた無抵抗な人間を無差別に殺傷することにあります。その違いが理解されてからは、現場に先着した警察官が単独で突入し、1秒でも早くアクティブ・シューター犯を無力化させる戦術が訓練されています。また、単独での突入が危険と判断されたり、複数の警察官が現着した場合も想定して、2~4名といった最小限の人数で臨時的にチームを組んで突入する戦術も訓練されています。

 もし今回、オーランドの事件でもっと早い段階で突入が行われていたら犠牲者の数は少なかったかも知れません。これが今回オーランド市警が直面している問題です。なお、一般警察官の場合は突入するとなっても最低限の装備しか身に付けていませんが、少なくとも防弾プレートと戦闘衛生キットは欲しいものです。因みに下の写真は、オーランド市警察のSWAT隊員が犯人から撃たれた弾を防いだケブラー製ヘルメットの写真です。その下は、昨年11月にバタクラン劇場に突入したBRIの隊員達がテロリストから撃たれた弾27発を受け止めた防弾シールドの写真です。




  

Posted by Shadow Warriors Training at 19:46小ネタ

2016年06月19日

コンバット・シューティングに要求される命中精度とは?


 検定射撃と競技射撃は共通した目標を有しています。人型標的であれブルズアイ標的であれ、的の中心に出来る限り弾痕を集めるといった、高い命中精度を競うことが1つの大きな目標となっています。では戦闘射撃ではどの程度の命中精度(=集弾率)が要求されるのか?戦闘射撃に要求される命中精度はコンバット・アキュラシー(Combat Accuracy)とも呼ばれますが、それは実は検定射撃や競技射撃において目標とされるほどの高い集弾率とは異なります。

 上の図は何れも10発を撃った際の弾痕を表しています。左側は検定射撃や競技射撃において皆が目標とする究極の理想でしょう。全弾がど真ん中に命中しており、中には同一弾痕も含まれ、部隊内で「スナイパー」や「ゴルゴ」などといったあだ名が付けられることでしょう。しかしながら、この命中精度を実現する為に一つ犠牲にしたことがあります。それは速さ(スピード)です。制限時間こそあれど、時間を目一杯使って集中力を維持しながら高い命中精度を実現した訳ですが、残念ながら実際の銃撃戦ではそうはいきません。実際の撃ち合いでは相手の弾に当たる前に相手に当てる必要があります。

 かと言って、スピードだけを重視すると高い命中精度を実現することは困難となり、下手をすると中央の図に示した様な辛うじて的には当たっているものの弾痕はバラバラに散らばることになるでしょう。確かに相手より先に撃ったことは、高い命中精度の為に時間を掛けて自らを危険に晒すことよりは評価されるでしょうが、相手より先に撃つだけでは不十分です。必要なのは、相手より先に当てることです。拳銃弾や小銃弾では敵の脇腹や肩に当てた程度では無力化させることは出来ません。

 よって結論としては、コンバット・アキュラシーとはある程度高い命中精度を目標としながら早い射撃速度を実現させた射撃となります。それが右図で示したような着弾になります。この中心の円の直径が実際にどの程度が理想的なのかはここでは開示しませんが、相手との距離や移動速度の変化に左右されることなく、命中精度と射撃速度のバランスを維持して右図の様な集弾率を目指すのが特にCQBで必要とされるコンバット・アキュラシーになります。

 詳しい内容やノウハウについては、実際にトレーニング・コースを受けるまでのお楽しみとさせて頂きます。  

Posted by Shadow Warriors Training at 22:53小ネタ

2016年06月12日

故障排除(3)


 遮蔽物の陰に入った場合でも、遮蔽物に向かう途中の場合でも、故障排除のやり方に変わりはありません。また、拳銃・短機関銃・自動小銃といった銃の種類による違いもありません。

1)装填不良の場合の故障排除の要領は、「たたく・引く・狙う・撃つ」です。英語で言う「Tap・Rack・Bang」です。
先ずは、弾倉が確実に銃に填まった状態を作るために、弾倉底板を叩いて弾倉を確実に装填します。
次に、スライドを引いて薬室に弾を装填します。
最後は、狙いを定めて引き金を引くだけです。

2)排莢不良の場合の故障排除の要領も1)と大差ありません。
違いがあるのは、スライドを引く動作です。拳銃の場合は非利き手でスライドを引く際に同時にストーブパイプとなって突き出した薬莢をはじき飛ばします。短機関銃や自動小銃の場合は、利き手だけで排莢口を下に向ける様に銃を構え、非利き手を傾けた銃の下側を通して排莢口から突き出た薬莢を引き抜いた後に、非利き手でスライドを引いて装填を完了させます。

3)2重装填の場合は、先ず1)と同じ要領で故障排除を試みます。運良く引っ掛かった薬莢が外れれば故障は直ぐに解消されるので素早く射撃を継続することが出来ます。1)と同じ要領でも故障が排除出来ない場合は、正規のやり方で2重装填を解消します。
先ずは、弾倉を抜きます。大抵の場合、2重装填の原因は弾倉の送りにあることが多いので、抜いた弾倉の再利用はしません。もう一度2重装填を起こしてしまう確率が高いので、残った弾を後に利用するためにポケットなどに押し込むか、そのまま地面に落とします。もし移動中に意図せず落としたとしても回収を試みることは自殺行為ですので、決して脚を止めずに敵から「撃たれ難い」状況を維持することに集中します。
次に、マグウェルから指を入れて中に引っ掛かっている薬莢を取外したり、スライドに引っ掛かっている薬莢を引っこ抜きます。
そして、非利き手でスライドを3回素早く引いて薬室に残った薬莢を抜くと共に、詰まったゴミを排除してスライドが正常に動く状態を作ります。
最後に、新しい弾倉を装填して、スライドを引いて薬室に弾を込め、狙いを定めて射撃を再開します。

これらの動作を移動しながら行う場合は、銃を直視することはありません。一時期撃ち終わった銃を傾けて薬室の状態を確認してから再装填するやり方が一部で流行りましたが、あれは全く役に立ちません。その理由としては、1)戦闘中に敵から目を離して銃を直視する行為は戦術的に非有効であり、2)夜間やローライトの状況で薬室の状態を確認することは出来ない、です。それよりも、脚を動かしながら上記の1)、2)、3)の排除要領を両腕が自動的に実施して射撃を再開出来るようになる方がはるかに重要かつ戦術的に有効です。

しかし、拳銃を除き、3タイプの故障排除を片手で実施するのは移動間では極めて困難です。よって、被弾して片腕が使えなくなることと銃の故障がほぼ同時に発生したのであれば、地物や装具や身体の一部に銃を依託して銃を安定化させなければ、片手で故障排除を実施することが出来ません。従って、腕一本だけで短機関銃や自動小銃の故障を排除するためには、遮蔽物の陰に入る必要があります。

これら3タイプの故障排除は訓練用のプラスチック製の薬莢を用いれば安全に実施することが出来ますので、このブログをお読みのプロの皆様は、是非ともプラスチック製薬莢の使用許可を部内で取って頂き、
1.両腕を用いた移動間における演練
2.利き腕だけを用いた遮蔽物の陰での演練
3.非利き腕だけを用いた遮蔽部の陰での演練
4.夜間やローライト環境において、上記3つのケースでの演練
を実現して頂きたいと願っております。
終わり
  

Posted by Shadow Warriors Training at 22:05小ネタ

2016年06月04日

故障排除(2)


 では前回説明した3タイプの故障が発生した場合、具体的にどの様にすれば良いのか?何れのタイプの場合でも先ず行うことは回避行動を取ることです。ここで言う回避行動とは、
 ・敵から遠ざかるために移動する
 ・遮蔽物の陰に隠れるために移動する
 ・既に敵に知られている自分の位置から離れる
といった行動のことです。勿論、回避行動だけでは不十分な場合が殆どです。こちらから弾を飛ばさない間は向こうから弾が飛んできます。従って、自らの生存率を上げるためには、
 ・仲間の援護射撃下で移動する
 ・拳銃などにトランジッションして射撃しながら移動する
といった応戦もここで言う回避行動に含まれます。

 恐らくこの段階で既に実戦的な射撃訓練に慣れていない方は、やり方の違いに戸惑っているかと思います。なぜなら、通常の射撃訓練や検定射撃では安全管理の観点から、引き金から指を離して銃口を的方向に向けたまま安全装置を掛けて故障の状態を確認する、といった手順が義務付けられており、その場から動くことは同じく安全管理上の理由から「危険」とされているからです。ですが実戦においてはこの様な安全管理上の手順こそが危険です。それは、実戦での最優先課題は敵から撃たれ難くすることであり、その為には遮蔽物を巧みに活用するか、脚を動かし続けて敵から狙われ難くする回避行動が必要であるからです。
 
 どれだけ訓練を積んでも故障排除にはある程度の時間を要します。どれだけ訓練を積んでも、故障排除には弾倉交換やトランジッションよりも長い時間を要します。よって故障排除は、
 1)遮蔽物の陰に隠れて実施する
 2)遮蔽物がない場合は、回避行動を取りながら実施する
の2つの選択肢しかありません。これを自分が今置かれている状況でどちらがベストかを瞬時に判断し、素早く実行することが求められます。

 では、次回は上記2つの状況下での故障排除要領を説明します。
(3)に続く


 SWTでは標的の中心に弾痕を集める様なトレーニングは提供していません。よって、純粋に射撃の成績を上げたい方にはもしかすると不向きかも知れません。反面、SWTのコースが教える内容は銃を持った敵に対して銃を使ってどう戦うのかに特化していますので、実戦で如何にして生き残るのかを模索されている方に対しては、自身を持って受講をお勧めしています。  

Posted by Shadow Warriors Training at 21:49小ネタ