2018年07月22日

射場のデザインと訓練レベルについて(4)


 ではこのシリーズの最後に、キルハウス(シュートハウス)は必ずしも全方位型射場であるべきか?について何点か述べさせて頂きます。360°方向に射撃が可能なキルハウスを建設するには、広い土地と多くの予算が必要になります。例えば官公庁によく見られる部屋の配置を模したキルハウスを建てる場合、通常の官公庁のレイアウトと同じサイズで造る訳にはいきません。何故なら、壁や扉の全てに対弾性能を持たせる必要がありますので、通常の壁や扉よりも分厚くなります。よって、部屋の内寸は同等でも、壁などの厚みが増すことから、敷地面積も通常の建物より広いものを必要とします。

 さらに、一度設置した防弾設備が永遠に使えることはないので、被弾の状況にもよりますが点検と保守(交換)が必要になります。これを怠ると、対弾性能の弱くなった部分に運悪く命中した弾が壁を突き抜けるといった事故に繋がります。

 
 弾が集中的に当たる場所は、勿論、標的の後ろ側になります。そこで、上の写真のように、標的を設置するターゲット・スタンドそのものに高い対弾性能を持たせたものを使用して標的後方の壁面への損害を少なくさせるといった方法もあります。ただしこの手法には1つ問題があります。それは、射手の技量です。いくら標的に集中する弾を食い止める措置がなされても、射手の腕が悪く標的そのものを外れた弾があった場合は壁面の損傷は間逃れません。


 では予算に限界があり、対弾能力のある壁や扉を用いたキルハウスが造れない場合は、いかに工夫すればより実戦的な訓練が出来るのか?その答えは標的の設置方向にあります。部屋や廊下がどの様な構造であれ、標的の設置方向をダウンレンジ側に統一させれば、標的とその後方の壁を突き抜けた弾は、ダウンレンジにあるバックストップにて喰い止められます。例えば北側にバックストップのあるレンジにベニヤ板などで仮設のキルハウスを造る場合、部屋や廊下がどちら向きかを問わず全ての標的を北を背にして設置させます。


 そうすることでキルハウスの造りによらず射撃方向は全て北側に統制されますので、パイプとビニールシートの組み合わせからなる移動式のキルハウスでも訓練は可能です。

 弾が突き抜けることを前提とした簡易型のキルハウスを用いることは、安全管理上あまり好まれないのは理解しています。ですが、実際の家屋を掃討する場合、その家や部屋は弾を完全に喰い止めることは可能でしょうか?多くの場合、不可能です。よって、突入前の作戦立案には、部隊の突入方向や射撃方向、移動する際の合図や位置関係の把握などをチームで話し合う必要があります。つまり、対弾性能のあるキルハウスを用いるよりも、簡易型キルハウスを用いる方が射撃以外の重要な部分をも訓練科目として実施することが可能となります。

 金をかければそれこそインスタ映えする施設を造ることは可能ですが、訓練に必要なことは金をかけた施設を用いて訓練した気分に浸ることではなく、頭を鍛えることです。レンジであろうばキルハウスであろうが、設備の不自由さを逆手に取れば、逆により実戦的な訓練が可能になります。
終わり
  

Posted by Shadow Warriors Training at 23:11小ネタ

2018年07月08日

射場のデザインと訓練レベルについて(3)


 また、バリケードは出来る限りリアルなものを用いるのがより効果的です。この写真の様に実車を用いることで、隠れながら射撃をするにはどの様な姿勢が望ましいか、どの様な装備品の配置が好ましいか、といったことを訓練にて見出すことに繋がります。更に、ペラペラの板からなるバリケードと異なり厚み(奥行き)があることから、バリケードの向こう側がクリアか否かの確認が容易でなくなります。よって、バリケードの向こう側に脅威が残った可能性のある場合を考慮したバリケードの使い方も学ぶことが出来ます。


 加えて、1人で演練した後は、ペアやチームで同じセッティングで訓練をすることで、ペアやチームでのバリケードの使い方や注意点を実体験を持って学習することが可能となります。

 そして訓練生にストレスを与えるオプションが必要であれば、煙幕や閃光手榴弾を用いたり、民間人を模した撃ってはならない人形などを無造作に配置することも出来ます。なお、この場合、撃つべき標的と撃ってはならないものは出来るだけ似せるべきです。識別のために全く異なるものを使うのは見ただけで撃つ・撃たないの判断が容易に出来ますので基礎段階以外ではあまり意味がありません。むしろ、見分けがつき難いほうが、より標的に対する認識と思慮深さがそれぞれの射手に問われますので、特に煙幕などで視界が悪い場合はストレス度の高い非常に有意義な訓練が可能となります。
(4)へ続く
  

Posted by Shadow Warriors Training at 20:20小ネタ

2018年07月01日

射場のデザインと訓練レベルについて(2)


 ダウンレンジが1方向である場合、多くの場合は射手を一列に並べて一斉にダウンレンジに向けて撃つ事が実施されていますが、上の写真の様に障害物を上手く配置すれば、弾の飛ぶ方向はダウンレンジに統制しつつも、より実戦的な射撃訓練が可能となります。

 この写真の様に障害物を配置することで、単にバリケード越しの正面にある標的を撃つだけの単調な訓練から1歩進めることが出来ます。射手と障害物と標的を直線1列に並べずに、レンジの所々に大きさや形状の異なる障害物を配置して射手をレンジの一方の端から他方の端まで移動させることにより、射手は自らと標的の位置関係を把握しながら障害物から最小限の露出で標的を撃つといった「空間認識能力」の向上を訓練することが出来ます。

 射手と障害物と標的を1列に並べたレンジでは、バリケード越しの射撃といった基礎技術の訓練は可能ですが、実戦的な状況を再現するには射手と障害物と標的を角度をつけて配置することが必要となります。ドリルはその都度障害物と標的の位置を変えることで、射手はそれぞれの位置関係を「考えながら」移動と射撃をすることを強いられますので、先の「空間認識能力」を戦術的な側面から鍛えることが出来ます。
(3)に続く
  

Posted by Shadow Warriors Training at 21:37小ネタ