2014年08月20日
スタック!
一昔前は銃口安全方向と言えば上方でした。それがキルハウスでの訓練が一般的になってきた頃から下方へと変更されましたが、実戦では臨機応変にどちらも使い分けるのがベターである、と過去のブログでも説明しました。
この写真を見て頂ければ、必ずしもCQBでは下方が最善の銃口安全方向とは言えないことがお分かりだと思います。もしスタックを組む際に銃口が下方を向いていたとしたら?銃口を前方の脅威に向けようとすると、前にいる隊員の背中を下から上へなめるように銃口を向けることになります。逆に最初から銃口を上方に向けていれば?前の隊員の身体に銃口を向けることなく、前方の脅威に対して銃口を向けることが可能となります。
戦術は状況を支配することはありません。状況が戦術を支配します。もっと具体的に言えば、状況が戦術を左右します。単純に安全性のみを考慮するのではなく、交戦時といった極限の状況下で如何に安全と危険のバランスを保つのかを考えながら訓練する必要があります。
因みに先頭の隊員の小銃にはサプレッサーが装着されていますが、最近アメリカでは警察特殊部隊(SWAT)でのサプレッサー装着率が高くなっています。理由としては発射音を抑制することによる隊員間のコミュニケーションのし易さや、犯人への指示・警告の伝わり易さといったことが挙げられますが、もう一つアメリカならではな理由があります。それは、大きな発射音により難聴などの被害や精神的苦痛を訴える第3者からの訴訟を減らすためです。他に手段がなくやむなく発砲することで事件を解決した警察に対し、訴訟大国アメリカでは、その射撃音に対して訴訟を起こす連中がいるのです。
この事は対岸の火事として傍観することなく、我が国の治安機関も積極的に研究を始める必要があると私は思います。
2014年08月09日
FBI射撃検定(2)
では、前回の続きとして、2013年1月から実施されているFBIピストル射撃検定の内容を紹介します。
新検定
弾数:60発(60点)
採点方法:命中弾は1点、非命中は0点
検定基準:エージェントは48点(80%)以上、教官は54点(90%)以上
射撃方法:全弾をコンシールドホルスターからドローして射撃する
使用標的:QIT-99シルエットターゲット
ステージ1
距離:3ヤード
弾数:12発
1)利き手のみで3発;3秒以内
2)利き手のみで3発;3秒以内
3)利き手のみで3発、持ち替え、非利き手のみで3発;8秒以内
ステージ2
距離:5ヤード
弾数:12発
1)両手射ちで3発;3秒以内
2)両手射ちで3発;3秒以内
3)両手射ちで3発;3秒以内
4)両手射ちで3発;3秒以内
ステージ3
距離:7ヤード
弾数:16発
1)両手射ちで4発;4秒以内
2)両手射ちで4発;4秒以内
3)両手射ちで4発、エマージェンシー・リロード、両手射ちで4発;8秒以内
ステージ4
距離:15ヤード
弾数:10発
1)両手射ちで3発;6秒以内
2)両手射ちで3発;6秒以内
3)両手射ちで4発;8秒以内
ステージ5
距離:25ヤード
弾数:10発
1)号令と同時に遮蔽物の陰に移動、立射ち(両手)で3発、膝射ち(両手)で2発;15秒以内
2)同じドリルを繰り返し
以上が現行のFBIピストル射撃検定課目となります。残念ながら、まだまだ「完璧」な実戦的射撃からはほど遠いですが・・・
欲を言えば、故障排除と移動間射撃が追加されるべきです。勿論、別の検定課目としてローライト射撃が必要です。
SWTはFBIや連邦航空保安官を始めとした様々な機関やスクールの検定課目をノウハウとして蓄積しております。今後、プロ用と一般用に各種の検定課目だけを詰め込んだ「Qコース(Qualification/検定コース)」を作成する予定ですので、ご興味をお持ちの方はご期待下さい。
2014年08月04日
FBI射撃検定(1)
前回の記事でFBIの射撃検定が改変されたことを紹介しましたが、折角の機会ですので1997年から2012年まで実施されていた検定項目と2013年から実施されている検定項目を両方とも紹介したいと思います。
旧検定
弾数:50発
採点方法:FBI Qターゲットを用いてボトル部への命中は2点、それ以外への着弾は0点として計算(計50発×2点=最大100点)。
旧式Qターゲットはこんなやつです
検定基準:85%以上で合格、教官は90%以上
ステージ1
距離:25ヤード
制限時間:75秒
弾数:18発
号令と同時にホルスターから銃を抜いてプローンの姿勢から6発を発射。デコック後に膝射ちの姿勢に移行し、バリケードの利き手側から3発を発射。スタンディングの姿勢に移行し、バリケードの利き手側から6発を発射。膝射ちの姿勢に移行し、バリケードの非利き手側から3発を発射。
ステージ2
開始距離:25ヤード
制限時間:6秒間で2発。3秒間で2発を4回。
弾数:10発
25ヤードラインでスタンバイ。号令と同時に15ヤードラインまで移動し、ホルスターから銃を抜いて6秒間で2発を発射。デコック後にローレディの構えをとる。3秒間で2発を発射し、デコック後に再びローレディの構えをとることを4回繰り返す。
ステージ3
開始距離:15ヤード
制限時間:15秒
弾数:12発
15ヤードラインでスタンバイ。号令と同時に7ラードラインまで移動し、ホルスターから銃を抜いて15秒間で12発を発射。なお、この15秒間にはリロードの時間も含む。ステージ3終了後は、銃に5発、スペアマガジンに5発を用意する。
ステージ4
開始距離:7ヤード
制限時間:15秒
弾数:10発
7ヤードラインでスタンバイ。号令と同時に5ヤードラインまで移動し、利き手のみでホルスターから銃を抜いて5発を発射。両手でリロード後に、非利き手に持ち替えて非利き手のみで5発を発射。
以上が2012年12月まで実施されていた検定課目です。2013年1月以降の新検定課目については次回のブログで紹介します。