スポンサーサイト


上記の広告は1ヶ月以上記事の更新がないブログに表示されます。
新しい記事を書くことで、こちらの広告の表示を消すことができます。  
Posted by ミリタリーブログ at

2016年05月29日

故障排除(1)


 SWTのトレーニング・プログラムでどうしても実施することが難しいドリルの1つに故障排除があります。拳銃や小銃などといった銃の種類を問わず、金属の塊やバネやカムなどの部品がかみ合いながら可動する銃は、時として些細なことから作動不良を起こすことがありますが、戦闘中にこの作動不良を解消させる=故障排除を実現出来ないと、自らの命だけでなく仲間の命をも危険に晒せます。そこで個人レベルの銃器訓練で必須科目の1つに挙げられるのが故障排除なのですが、残念ながらエアガン/ガスガンでは薬莢を使用しませんので、本格的な故障排除のドリルが実施出来ません。営内で行う場合には訓練用のプラスチック製の模擬弾を使わせてくれなかったり、営外で行う場合はキャップ火薬式のモデルガンを使わせてくれなかったりと、残念ながら完璧な訓練環境はなかなか国内には存在しません。

 では故障排除とは具体的にどの様に行うのか?それには先ず起こりうる作動不良の種類とメカニズムから理解する必要があります。発生の原因は様々ありますが、起こる現象は大別すると僅か3つになります。

 1つ目は装填不良です。確実にスライドを引いて薬室に弾を装填することを怠ったり、弾倉が確実に装填されていない状態でスライドを引いたことにより薬室に弾が装填されておらず、引き金を引いた際に「カチッ」と撃鉄が落ちる音がするだけで、弾が発射されない状況です。若しくは、弾そのものに問題があり、不発や遅発といった現象が起こった状況です。

 2つ目は排莢不良です。接触部にゴミなどが詰まることでスライドの開放が鈍かったり、エキストラクター(抽筒子)が確実に薬莢のリムを掴めていなかったことから排莢されるべきであった薬莢が確実に排出されないまま、スライドに挟まって銃からパイプが突き出たような状態(ストーブパイプ)になることです。

 3つ目は2重装填です。弾倉の口の部分が設計された以上に開いてしまったり、エキストラクターが薬莢のリムを掴むことなくスライドが後退したことで、1発が薬室に、もう1発がその真後ろに連なってスライドが閉じた状態になることです。

 何れも実戦だけでなく訓練中にも起こりますが、これらの故障を如何に安全かつ素早く排除出来るかが次弾発射までのタイムラグを減らすことに繋がります。そしてこのタイムラグが長ければ長い程、敵の弾がこちらに向かって飛んでくる時間が長くなります。次回より、上記3つの故障の排除要領を解説したいと思います。
(2)へ続く
  

Posted by Shadow Warriors Training at 23:38小ネタ

2016年05月23日

Fire and Maneuver


 Fire and Maneuver(ファイア・アンド・マヌーバー)とは、日本語で言う「射撃と運動」のことです。簡単に説明すれば、部隊を2つ以上に分け、射撃を継続して敵の機動を制しながら他方を援護する部隊と、他方の援護射撃の下で敵を叩くべく接近するか攻撃を避けるために後退する部隊とが交互に機能して攻撃あるいは離脱といった目的を達成するための戦闘行動です。歩兵戦術の基本の「き」ですが、これは小隊や中隊規模での戦闘だけに限らず、最小単位である2人組(バディー、あるいはツーマンセル)にも適用されます。

 SWTではSmall Unit Tactics-Basic(小規模部隊戦術・基礎)コースとしてツーマンセルやフォーマンセルを主体としたトレーニングを提供していますが、このコースではPistolやRifleのレベル1や2でのトレーニングとは一気に様相が変わります。射撃と運動の一例を見るよい例として挙げたいのが以下の2本の映画です。


 1本目は1995年の映画「ヒート」です。アル・パチーノやバル・キルマーが演じる銀行強盗のチームが警官隊との銃撃戦を繰り広げるシーンがありますが、ここで彼らが互いの援護射撃下で移動や弾倉交換などを実施しているのが射撃と運動です。


 2本目は2000年の映画「プルーフ・オブ・ライフ」です。ラッセル・クロウが演じる元SAS隊員が仲間と共に南米のジャングルにあるゲリラキャンプから身代金目的で誘拐された欧米人を救出するシーンがありますが、5名編成の急襲部隊による連携が射撃と運動です。

 両方とも見て分かる様に、「射撃と運動」には名称には含まれていないものの非常に重要な要素が含まれていることが分かるかと思います。それは、「連携(コミュニケーション)」です。射撃も運動も難しものではありません。射撃は照準を定めて引き金を引けばよいだけで、運動は脚を動かし続ければ良いだけです。これらは何れも個人技であり、個々の演練にてパフォーマンスはどんどん上がります。反面、連携は意識しながら仲間と訓練を続けないと何が重要なのか、何が問題なのかや、どう直せば良いのかが理解出来ないまま悶々とした日々を過ごすことになるでしょう。銃撃戦にて必要なことはたった3つです。それらは、射撃・移動・連携(Shoot・Move・Communicate)です。その中でもチーム戦術として最も重要なのは連携(Communication)ですが、残念ながらそれは最も脆く崩れやすく、相当なレベルの訓練を積んでおかないと効果的に機能することはありません。

 このことから、本来であれば名称は「射撃と運動と連携(Fire, Maneuver and Communication)」とすべきなのですが、何故か何語でも前者の2つだけが名称となっております。この3つの中で最も重要なのは、Communicationなのですが・・・  

Posted by Shadow Warriors Training at 23:58小ネタ

2016年05月15日

羽田空港に犬侵入:SWT的考察


 先日羽田空港の滑走路に4匹の犬が侵入し、空港当局が捕獲に手こずっていたとのニュースがありましたが、単なる野良犬が空港の敷地内に侵入したと見る一般的な見方から角度を変えた考察を述べたいと思います。

 先ず言えるのは、警備態勢の問題です。野良犬が侵入出来る警備上の「穴」が存在したことが事実ですが、犬が侵入可能な隙間はもう少しだけ広げれば人間も通れます。肉眼で犬の存在が敷地内で確認されたことで初めて犬の侵入が発覚したのであれば、警備はフェンスなどの1重しか存在せず、センサーなどによる2重の構えが存在しなかったのか、センサーが感知出来ていなかったことになります。

 壁やフェンスを造ることだけでは侵入が完全に阻止出来る訳ではないものの、残念ながら上層部も警備要員もそこを突破される可能性を低く見積もってしまいます。そこで人が常時警戒出来ない部分はセンサーなどの機械を用いて人の目を補うことをしますが、所詮機械ですので故障や誤作動を起こします。この故障や誤作動は非常に厄介で、警備要員にとって「狼少年」的な存在となりますので、心の隙を作る原因となります。仮に今回センサーが感知していたとして、現場の確認がされていなかったのであれば、構造的な問題だけでなく人的な問題も発生していたことになります。

 ここまでは誰でも言える事ですし、警備経験者であればこのセンサーによる「狼少年」問題はよくお判り頂けると思います。ですが対テロ警備の目線から言うと、今回侵入した犬が本当に野良犬だったのかが気になります。サミットやオリンピックが近付いているこの時期にこの「事件」が起きたのは対テロ警備の目線からは非常に気になります。と言うのも、警備の構造上や人的な「穴」を探るために、誰かが意図的に空港近くに犬を放った疑いがあるからです。流石に人間が突破すると大事になりその後の警備態勢が厳格なものになりますが、犬が犯人と結論付けられた場合はそれほど人や金をつぎ込んだ警備態勢の強化はされません。何らかの目的を持った連中がこのことを理解した上で、日本の首都にある国際空港の外周警戒態勢を探るために今回の「事件」を起こしたのであれば、野良犬を捕獲しただけでは解決されません。

 テロは精神異常者などによる突発的な犯行とは異なり、明確な目的と計画を持って実行されます。その成功の為にテロリストは下見を含めた入念な計画を行いますが、その1つの方法として「模擬攻撃」を仕掛けます。警備側の能力を試すために、わざと突破するフリをしたり、爆発物らしき物を設置したりと、あらゆる方法を用いて警備の隙やパターンを探そうとします。犬4匹の発見から捕獲までに要した時間がテロリストに与えられていた場合、その間にどれだけの破壊や殺戮が可能であったのかを想像して下さい。

 もし今回の4匹の犬の侵入が、当局の対応のスピードや能力を試すために意図的に行われたことであったとすれば・・・非常に恐ろしいことです。

 *このブログは不特定多数の者の目に触れることから、具体的な対策などについての言及は避けさせて頂きます。  

Posted by Shadow Warriors Training at 23:51小ネタ

2016年05月08日

車は遮蔽物にあらず(2)


 ではドアなどを貫通した弾丸はどの様な弾道を描くのか?こればかりは予測計算することは不可能です。キャリバー50で撃った場合はほぼ真直ぐ反対側も突き抜けるでしょう。しかし、拳銃弾や小銃弾は片側を貫通した時点でかなりの運動エネルギーが失われますので、そのまま真直ぐ反対側に到達することが、逆に稀です。大抵の場合は大きく軌道を変えて、思いもよらぬ弾道を描きます。そして最初に着弾した射入口側の正反対側とは全く別の場所から射出します。

 何故弾道が変わるのか?それは、車のドアやエンジンルームの内部には様々なパーツがあり、弾丸がそれらパーツにかすったりすることで本来真直ぐ飛ぶのに必要な回転が損なわれ、運動エネルギーが大きく奪われるからです。真直ぐ貫通した場合は、射出口もほぼ円形になりますが、弾が勢いを失い空中で縦や斜め回転しながら反対側を貫通した場合は、縦長や横長の「キーホール(鍵穴)」型の射出口を形成します。では、極端に軌道を変えた弾丸は貫通した先でどの程度の威力を有するのか?弾道重量、着弾時の速度、着弾した物体の材質、着弾後に他に正常な弾道の妨げとなった物体の素材や衝突角度、等などが複雑に絡み合いますので、残念ながらこれも予測計算することが不可能です。

 では、全ての弾が貫通するのか?答えはNOです。特に高速で飛翔する軽量な弾丸は、貫通力が低いです。では、全ての弾が喰い止められるのか?これも答えはNOです。偶然、途中で弾道の妨げとなる物体に接触しなかった弾丸は、ある程度威力を失ってはいるものの反対側も十分に貫通します。興味がある方は廃車の反対側に標的を設置して、複数の口径の銃で撃ち比べてみて下さい。ある時は貫通したのに、ある時は貫通しないといった同じ口径の銃でも異なる結果が出ることに驚かれると思います。

 10発中10発が貫通するのか?残念ですが答えはNOです。しかし重要なのは、そのうち何発かは確実に貫通することです。このことから安易に車を遮蔽物として利用すれば安心であると考えるのは危険であり、止めるのが得策です。では、前回のブログで隠蔽物として利用することは矛盾していないのか?なにもそこに最後まで籠城する訳ではなく、敵から姿を隠しながら反撃し、敵の動きを止めてより安全な場所に移動するまでの「一時的な目くらまし」として利用するだけですから、矛盾はないと考えます。

 ただし、ここでいう「一時的」とは本当に限られた時間です。威力を失ったからと言い、貫通した弾丸は人体を傷つける威力は十分に有しています。腕がやられたらもう一方の腕で闘えますが、足がやられたら機動力を失うことになります。よって、遅かれ早かれ被弾して機動力が失われるといったリスクを軽減させるために、即座に反撃して敵を足止めさせる程度の時間が、ここで言う「一時的」に該当します。

 効果的に車両の陰から射撃する方法や、敵がその様な射撃姿勢を用いた場合にシャーシの下に弾を通して当てる方法など、実戦的なトレーニングにご興味がある方は、是非SWTのFighting PistolやFighting Rifleを受けてみて下さい。
終わり
  

Posted by Shadow Warriors Training at 22:46小ネタ

2016年05月01日

車は遮蔽物にあらず(1)


 映画やドラマなどでは車を遮蔽物として使用しているシーンがよく見られますが、実戦で車は遮蔽物として使用出来るのでしょうか?結論から言えば、NOです。車は遮蔽物としては使い物になりません。「〇〇口径までなら一般車でも食い止める」、「エンジンブロックなら小銃弾でも止める」など、出所が不正確なネットの情報などを頼りにこの件については色々な意見が飛び交うでしょう。もし、「車は遮蔽物として使い物にならない」と唱える私にチャレンジしたい人が居れば、逆に質問させて頂きます。実際に実銃で車を撃った経験はありますか?

 車は金属の塊ではありません。板状に成形された金属やプラスチックなどが幾重にも重なっただけの構造物です。燃費の向上のために、近年では更なる軽量化が図られ、昔に比べて金属製部品が使用される比率は年々低くなってきています。自動車関係の仕事に就かれている方は構造をよくお判りでしょうが、シャーシは頑丈な金属製ですが、ボディーは薄い板から出来ています。よって、アメ車であろうが日本車であろうが、フェンダー、ドア、ボンネット、屋根はいとも簡単に拳銃弾でも貫通します。従って、ドアを盾代わりにして射撃するような真似は現実世界ではあり得ません。例え防弾仕様に改造してあっても、足が丸見えですので、全く意味がありません。私が敵なら喜んで足を撃ちます。防弾仕様車ならドアを閉じた状態が一番頑丈ですので、あえて車を止めてドアをあけて射撃するようなアホな真似はせず、アクセルを吹かして危険地帯から走り去れば良いだけの話です。

 では車が走行不能に陥ったら降車して車そのものを遮蔽物として使うのか?だだっ広い場所で他に身を隠す場所が無ければ致し方ありません。少しでも身を隠すために車の陰に入るしかありません。ただし、「陰に入る」=「身を守る」ではありません。ここで言う「陰に入る」とは、「隠蔽物の陰に入る」という意味です。決して「遮蔽物の陰に入る」訳ではありません。
(2)へ続く
  

Posted by Shadow Warriors Training at 23:20小ネタ