2013年08月27日
学習の4段階
おかげ様で色々と忙しくしており、気付くと1週間ほどブログを放ったらかしにしてました。久しぶりの更新ですが、今後も週1位のペースになるかも知れません。
さて、今回のトピックは学習のレベルについてです。タクティカルなことに限らず、世の中の全ての分野に係わることですが、ここではタクティカル・トレーニングを例にとり簡単に説明したいと思います。
第1段階は、無意識的無能(Unconscious Incompetence)と呼ばれるレベルであり、具体的には、知識もテクニックも無い状態のことを表します。例えるならば、射撃の基礎に関する知識とテクニックを知らないことから、的のあちこちに着弾しているレベルのことです。
第2段階は、意識的無能(Conscious Incompetence)と呼ばれるレベルであり、具体的には、知識はあるがテクニックに反英することが出来ていない状態のことを表します。例えるならば、射撃の基礎は知識として知っているものの、錬度不足からテクニックとして習得出来ておらず、結果として集団率が低いレベルのことです。
第3段階は、意識的有能(Conscious Competence)と呼ばれるレベルであり、具体的には、知識もテクニックも習得しているがその実践には集中力(意識)を必要とする状態のことを表します。例えるならば、射撃の基礎について知識も技術も十分習得しており、高い集団率で射撃することが出来るが、その結果を得るには意識的に照準やトリガー・コントロールなどについて気をつけているレベルのことです。
そして最後の第4段階は、無意識的有能(Unconscious Competence)と呼ばれるレベルであり、具体的には、意識していなくとも知識とテクニックを実践することが出来る状態のことを表します。例えるならば、知識も技術の十分習得したうえで、意識せずとも身体が自然と(無意識的に)正しい照準やトリガー・コントロールを実践し、その結果高い集団率で射撃することが出来るレベルのことです。
第1段階から第3段階までは、正しいインストラクションを受けることが出来れば一気に到達します。しかし、第3段階から第4段階へは、単に個人で反復演練すれば到達出来るとは限りません。そこは誰かがストレスを与えながらチェックする必要があります。正しく出来ているか・間違っていないかをチェックすることだけでなく、「無意識的」に出来るようにするためには「意識」出来ない環境を時として作らなければなりません。そのためには、無意識的に行っていることを意識的に教えることが出来るインストラクターを必要とします。
最後に、この第4段階、更にはその上へ向おうとする方のために、以下の言葉を贈ります。
"Amateurs train until they can get it right.
Professionals train until they can't get it wrong."
「素人は出来るようになるまで訓練する。
プロは間違いが起こらなくなるまで訓練する。」
2013年08月21日
テクニックや戦術の4つのカテゴリー(2)
これら4つに分類されたテクニック/戦術は、実は複雑に入り組んでいますので、単純に「実戦用」と「ゲーム用」とに分けることが難しいのです。そこで次に考えるのが教え方ですが、これは大きく分けて2つのパターンがあるでしょう。1つ目は、一般人とプロ(警察官・自衛官など)を一緒に教えて、「ゲームではこう」「実戦ではこう」と同じクラスの中で2通りの説明をするパターンです。2つ目は、同じドリルにゲーム用の説明と実戦用の説明との2通りを準備しておき、一般人とプロとを分けて教えるパターンです。
前者は、より多くの参加者を集められる可能性が高いので、主催者としては収益面でのメリットが高いです。2通りの説明をするのがまどろっこしいですが、時間内にプログラムが収まるようにレッスンプラン(LP)さえしっかり準備していれば問題ありません。しかし、教える(説明する)内容の全てが一般人にオープンなのかと言うとそうではなく、本当に開示出来ないものはLPには含むことが出来なくなり、結果として非開示のドリルなどは後日プロ限定で実施する必要が生じます。
後者は、1クラスあたりの参加人数が少なくなる傾向にあるので、収益面ではメリットが高いとは言えません。LPを2通り準備しておく必要はありますが、開示できる内容と非開示とすべき内容とを始めの段階から区別することが出来るので、必要以上の内容を一般人に教えてしまうことや、本当に必要とされる内容をプロに教えることが出来なくなることがありません。
SWTでは、現時点では後者のスタイルでクラスを教えています。ではどれくらい内容が違うのか疑問を持たれると思いますが、実はドリル自体は90%は同じです。プロ用コースの違いは、残り10%の部分と、各ドリルで説明するレクチャーの内容にあります。たった10%かと思われるでしょうが、実はその10%には彼らプロが現場で生き抜くためのノウハウが詰まっているのです。その内容は例えるならば、一般人には「不必要」を通り越して「不適切」なものも含まれています。
今後開催する予定の部隊戦術コースについては、混成とするか今まで通りとするか引き続き検討中ですが、基本的な訓練は混成とすることも可能かと思います。特にリーダーシップやチームワークなどについては、混成訓練とすることで一般人がプロから多くのことを教わることが出来るのではと思いますので。しかし、一部の内容についてはプロ限定として別個に開催せざるを得ないでしょうね、内容が非常に攻撃的ですし、漏れて悪用されると以後のスクールの運営に悪影響を及ぼしますので。
-終わり-
2013年08月20日
テクニックや戦術の4つのカテゴリー(1)
今回のトピックは、エアガンを用いたタクティカル・トレーニングを教える際に何に注意するかについてです。このやり方はSWTが独自にやっているやり方であり、他のスクールがどの様にやっているのかは知りません。それぞれのスクールにはそれぞれの特徴やその背景となる考え方がありますので、トレーニングを受ける際にはそれら特徴や考え方を理解したうえで、自分に最も適したスクールを選んで下さい。
まずテクニック/戦術をカテゴリーに分類します。SWTでは次の4つに分類しています。
A.実戦で使える
B.実戦で使えない
C.ゲームで使える
D.ゲームで使えない
まずAを検証しましょう。そもそも実銃での戦闘を模して安全に楽しめるためのスポーツとして発展したのがサバイバル・ゲームですので、殆どのテクニックや戦術は実戦のものが流用されています。ところが、実戦では至近距離での射撃や格闘戦を混ぜた射撃技術などがありますが、ゲームでは安全管理や参加者間のトラブル防止の観点から使用することはありません。よって、Aには、CとDの両方の要素が含まれています。
次にCを検証しましょう。ゲームではBB弾を防ぐことが出来るならば薄い扉を盾にしたりすることが可能ですが、実戦ではそうはいきません。反面、仲間との連携や個人の射撃技術など、実戦に即したものもあります。従って、Cには、AとBの両方の要素が含まれています。
さてBはどうでしょうか。物陰に隠れたまま銃口だけを相手にむけて数百発を撃つなんてのは実戦ではあり得ませんが、ゲームでは適用することも可能です(ゲームの個別のルールは別次元の話として置いておきます)。しかし逆に、敵が立て籠もっている建物の上層階への移動にエレベーターを使うことは、相手に動きを読まれるだけでなく自らの退路を断つことにもなりますので、実戦でもゲームでも使えません。従って、B=Cではなく、BにはCとDの両方の要素が含まれています。
ではDはどうでしょうか。離脱中に5㎞離れた位置にある迫撃砲陣地からの火砲支援を受けるなんてのは現実世界ではあり得ますが、ゲームでは実現不可能な芸当です。しかしながら、実戦でもゲームでも、動いたり遮蔽物の陰に入ったりせず、標的射撃よろしく複数の相手に対して同じ位置から射撃すると、撃つと同時に撃たれてしまいます。従って、D=Bではなく、DにはAとBの両方の要素が含まれています。
-後半へ続く-
2013年08月16日
射撃の基礎とテクニックの違い
SWTのトレーニングでは海外の特殊部隊などでも実証済みのプログラムを教えていますが、射撃の基礎とテクニックに至っては国内の各機関で教えられているものから少し異なります。用語の説明から始めますが、射撃の基礎とは、狙った場所に弾を命中させるために必要最低限な技術のことであり、射撃のテクニックとは、より正確かつより早く、狙った所に弾を命中させるために必要なプラスアルファの技術です。
射撃の基礎と言うと、国内ではグリップや呼吸のコントロール、それに姿勢(スタンス)などが含まれますが、SWTではそれらはプラスアルファのテクニックであり基礎とは位置付けていません。SWTでは射撃の基礎はサイトピクチャー、トリガーコントロール、フォロースルーのたったの3つだけと教えています。特にCQBではこの3つだけを忠実に守れば然るべき結果を得ることが出来ます。更に言えば、CQBでは完璧な両手によるグリップは要求されず、またウィーバーやアイソセレスなどといったスタンスに至っては全く気にする必要がありません。むしろ、両手での完璧なグリップや競技射撃のお手本のようなスタンスを重視していては、戦術面を疎かにしてしまいます。
ほんまかいな?と思う方は、是非一度トレーニングを受けてみて下さい。SWTでは、何をするかだけでなく、理論的にも実践的にも何故そうなのかを教えています。
射撃の基礎と言うと、国内ではグリップや呼吸のコントロール、それに姿勢(スタンス)などが含まれますが、SWTではそれらはプラスアルファのテクニックであり基礎とは位置付けていません。SWTでは射撃の基礎はサイトピクチャー、トリガーコントロール、フォロースルーのたったの3つだけと教えています。特にCQBではこの3つだけを忠実に守れば然るべき結果を得ることが出来ます。更に言えば、CQBでは完璧な両手によるグリップは要求されず、またウィーバーやアイソセレスなどといったスタンスに至っては全く気にする必要がありません。むしろ、両手での完璧なグリップや競技射撃のお手本のようなスタンスを重視していては、戦術面を疎かにしてしまいます。
ほんまかいな?と思う方は、是非一度トレーニングを受けてみて下さい。SWTでは、何をするかだけでなく、理論的にも実践的にも何故そうなのかを教えています。
2013年08月09日
インストラクター列伝(4)
法執行機関の職員、および一般市民(銃器携帯許可者)に対しての、武力行使の原則・武器使用基準・法的責任・心理ケアなどに関しての第一人者であり現在もその道の権威であるMassad Ayoob氏です。長年ポリス・インストラクターとして実戦的なシューティング・トレーニングを実施していましたが、近年は講演を中心に活動されているようです。
法執行機関の職員・軍人・一般市民の分け隔てなく、攻撃を受けた極限の状況下での自己防衛訓練に定評の高いAndy Stanford氏です。OPSという訓練スクールを経営されていましたが、今は教官職を退いています。が、その経験と知識をベースに、現在でもオンデマンドで活動を続けられています。
同じく極限の状況下での自己防衛訓練に定評の高いRob Pincus氏です。ICEというスクールの代表を務めておられます。彼のスクールのコースは、的を「撃つ」のではなく敵と「闘う」ことに重点を置いたプログラムで、Combat Focus Shootingと呼ばれています。
Stanford氏もPincus氏も直接クラスを受けたことはありませんが、間接的に両名が提唱するSurgical Speed Shooting(Stanford)とCombat Focus Shooting(Pincus)を受けました。色々なスクールで教えられているプログラムを受けることは、自分にとっての「ツール」を増やすことにあります。様々な局面に対応するには、技術も戦術も複数有している方が有利であるからです。私はこの様な様々なプログラムから、ベストと思われるものをミックスさせて、当スクールのコース(一般用・プロ用共に)に反映させています。