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Posted by ミリタリーブログ at

2016年12月26日

PSD訓練(3)


 では基本的にディフェンシブな戦術に特化したPSDチームに攻撃的なCQB訓練は必要なのか?車列警護やエンバス・デバス、攻撃を受けた際のBreak Contactドリルだけででは不十分なのか?確かに攻撃を受け難くするためのスムーズな移動と、攻撃を受けた場合でも被害を最小限に食い止める適切な戦術を訓練を十分にしていれば、大抵のケースではなんとかなるでしょう。ただ、本当に最悪のケースとして挙げられるのは、警護対象者の救出が必要になる状況です。

 会議や会合などでは、武装警備員の同席が認められない場合が多々あります。その場合は、PSDチームは建物内か敷地内の別のエリアで待機せざるを得ません。しかしながら、警護対象者の命を狙う者にとってはまたとない襲撃のチャンスとなります。その様な状況で会議場が襲撃を受けた場合は、PSDチームは素早く「非武装ルール」を破って会議場へと急行し、警護対象者の救出に向かう必要性が生じます。よって、警護対象者を見つけ出すまでの間と、救出してから脱出するまでの間には屋内外を問わず高いCQB戦術が要求されることになります。

 また、PSDチームが攻撃を受けた際には増援部隊を素早く派遣しますが、派遣される即応部隊(QRF/Quick Reaction Force)はCQB戦術に留まらず敵性勢力に伏撃を仕掛けたりと攻勢に特化した任務を任されます。QRFはCAT(Counter-Assault Team)と呼ばれることもありますが、彼らは専門のチームではなく、同じ部隊に所属する複数あるチームの中で順番にPSDチームとQRFに分かれて任務に就きます。よって、普段の訓練でも全員が同じ訓練を受けます。また、PSDチームに人数的な余裕があればQRFの到着まではPSDチームを2チームに分けて、それぞれをPSDチームとCATとして機能させたりもします。

 ではその様な事態に陥った際に最も重要なことは何か?正確な射撃?卓越した戦術?確かに大事なことですが、最も重要なことは素早い状況の判断とその判断に基づく対応力です。そしてその対応力の中には、仲間との情報の共有や的確な指示が含まれます。最新の装備を貸与されていたところで数で勝る敵を相手にした場合は1人では多勢に無勢です。味方との連携なくしては勝利(=生存)は勝ち取れません。という事でパート1・2からの繰り返しになりますが、コミュニケーションが非常に重要なウエイトを占めます。

 また、敵の第一撃から離脱出来たとしてもQRFとの連携にもコミュニケーションが欠かせません。提携作戦にせよ超越交代にせよ、確実な連携なしでは戦術上の優位性を保てないばかりでなく、最悪の場合は同士討ちを起こしてしまいます。それらを防ぐためにもAICは普段から徹底して指示や連携に主眼を置いて訓練しますし、自分が最初に死んだ場合を想定して副隊長や班長などにそれらの要領を教えることも怠りません。ランボーの集団は集団であってチームではありません。チームとは共通の目的・目標を有する統率された組織です。その統率に必要なのはShootでもMoveでもなく、Communicateです。
終わり


  

Posted by Shadow Warriors Training at 22:51小ネタ

2016年12月18日

PSD訓練(2)


 上の写真はAICが機能しているPSDチームの訓練風景です。AICは即座に敵性勢力から離れつつも最も手近な遮蔽物へと警護対象者を移すことに専念しながら、PSDチーム全体のコントロールをします。

 最も典型的な編成は、AIC1名を含んだ5名で警護対象者を囲うような配置です。四角形で囲うボックス型と菱形で囲うダイアモンド型の何れかが用いられますが、どちらも火力優勢と機動力に一長一短があります。AICが最も避けるべきことは、チームが射撃に集中し過ぎてAIC/警護対象者と離れすぎてしまうことです。欧米の軍隊には規模の大小の違いはあれPSDチームが存在しますが、やはり新隊員訓練ではチームを1つの塊として動かすことに苦労するそうです。

 と言うのも、通常軍隊では敵を殲滅する事を第1に考えますので、どうしてもそれまでの歩兵戦術から頭と身体を切り離せていない隊員は、敵に向かって攻撃・前進してしまうそうです。しかしながらPSDチームの目的は警護対象者を護ることであり、そのためには応戦しながらの離脱が通常取るべき戦術(TTP)となります。よってPSD訓練の内の射撃訓練ではBreaking Contactドリルが徹底して行われます。一時期サバイバルゲームでも「コンタクト・レフト!」など叫ぶのが流行っていたようですが、一方向からの攻撃への対処はハッキリ言って簡単です。伏撃(アンブッシュ)をより効果的なものにするためには、L字型に配置して敵を2方向から攻撃します。よってBreaking ContactドリルではこのL字型アンブッシュへの対処も繰り返し演練しますが、その際にAICがしっかりと部隊に攻撃方向と離脱方向を指示しないと、さらに部隊がバラバラとなり最悪のケースでは拳銃しか持っていないAICだけで警護対象者を護ることになってしまいます。

 繰り返しになりますが、1人でランボーを気取るならばShootとMoveだけで事足りますが、2名以上いる場合はCommunicateを疎かにすると部隊として機能しません。ただ、一度撃ち合いが始まると射撃している者は射撃だけに集中しがちになります。そうなると視野も狭まり、仲間の声も聞こえ難くなり、動くべきタイミングで動けない(動かない)ことになってしまいます。それを如何に防いでチーム全体を1つの塊として動かすかはチーム全体の習熟度だけでなく、AICの腕の見せ所になります。  

Posted by Shadow Warriors Training at 10:19小ネタ

2016年12月12日

PSD訓練(1)


 10年以上前にアメリカのとあるPMCの一員としてアフリカでPSDとして派遣されるために海外で本格的な射撃・戦術訓練を受けたのが全ての始まりでした。結局現地の情勢があまりにも悪化したことから警護対象が全て撤退してしまい、その為にPSDとしての派遣もなくなりましたが。その後も継続的に海外で実戦的な訓練を受け続けていることから、PSD訓練を施して欲しいとの依頼もたまに受けます。

 PSD訓練を提供するのは可能なのですが、PSD訓練に興味のある方はPSDのごく一部分しか見ていない傾向にあります。彼らは一様に射撃しながらの警護対象者の防護しか考えていない様ですが、実際にはPSDチームは1発も撃つことも撃たれることもなく警護対象者を移動させることに全力を注ぎます。応戦は最悪の状況下で採られる戦術であり、実際問題その様な状況では生存率は50%です。またPSD訓練は戦術訓練ですので、そこで必要とされるハイレベルな射撃技術はそれまでに身に付けている必要があります。

 因みに上の写真はネット上から拝借したものですが、皆さんの目にはどう移りますか?

 どこの誰がネットに挙げた写真か知りませんが、ハッキリ言えるのは、これはプロモーションの一環で撮影されたものです。それも本格的なPSD訓練ではありません。プライベートジェットから直ぐにリムジンに警護対象者を乗せていない点だけでなく、この写真には本物のPSDチームに必要不可欠なものが写っていません。それは、AIC(Agent In Charge)です。AICは軽装備で警護対象者の直ぐ斜め後ろに位置し、チーム全体を指揮しながら警護対象者の誘導を任務の1つとします。このAICなしでは万が一攻撃を受けた際に、警護対象者とPSDチームの動きがバラバラになってしまい、結果的に警護対象者を見殺すことに繋がります。

 応戦時に射撃(Shoot)と移動(Move)は誰でも出来ます。ただし、チームとして対象者を護るといった任務を果たす為には先の個人技である2つだけではチームワークが発揮されません。そこに連携(Communicate)がなければ、皆がバラバラになります。そしてPSDチームでこの一番重要なCommunicationを司るのが、AICになります。  

Posted by Shadow Warriors Training at 00:25小ネタ

2016年12月07日

米国でのトレーニングから帰国しました


 先の週末にアメリカでトレーニングを受けて、昨日帰国しました。受講してきたコースはShivWorksのCraig Douglas氏(写真)によるExtreme Close Quarter Conceptsです。このコースは、格闘戦における銃の運用、至近距離(0~3m程度)での射撃、素手・ナイフなどの武器を用いた相手との格闘術、反撃の際の状況判断と武器使用基準の判断、相手の銃の奪い方、等などを計24時間に渡って簡易な防具と訓練用非致死弾(Simunition FX弾)を用いたフルコンタクト格闘訓練です。

 相手は下手をすると自分の2倍程の体重のある無駄にデカいアメリカ人ですから、かなり良い訓練が出来ました。おかげで2日目終了時には腕が挙げられないまで上腕二頭筋がパンパンに腫れ、首が動かせない位に顎から鎖骨にかけて筋肉痛になるなど、筋力的には今までで一番しんどい訓練でした。ただ、持久力と俊敏さではクラスの中でも上位に位置していたと思いますので、疲労でバテることはありませんでした。

 訓練は屋外の射場で行われ、2日目と3日目は10℃に満たない気温と小雨の中、投げ技や寝技で泥だらけになりながら銃を抜く機会を造って相手に撃たれる前に撃つと言ったことを、朝8時から夜7時までミッチリ楽しんできました。勿論その過程で銃は作動不良を起こしますので、格闘中の故障排除や再装填など、非常に実戦的な内容に満足して帰って来ました。ただ、内容が内容なだけに、全身筋肉痛・打撲・擦り傷・切り傷だらけでの帰国となりました。

 百聞は一見に如かずということで、中々文章で説明してもこのコースの完成度と重要性を伝えることは難しいのですが、国内の銃を携行して職務に就かれるプロの方々には必須の訓練内容であると断言出来ます。ECQCは、道場での見栄えを気にした技や度重なる練習が必要な難し技は一切なしの、路上や戦場で生き残るための本能と術を訓練するためのコースです。興味のあるプロの方は是非SWTまでご連絡下さい。ある程度の人数が集まることが出来るならば、日本に来てコースを教えて下さるとCraig氏より同意を得ております。  

Posted by Shadow Warriors Training at 22:00小ネタ