2019年03月10日

対IED戦術(1)

対IED戦術(1)
 前回までのシリーズでISISによるテロ攻撃のパターンの1つにIED攻撃があると述べましたが、今回は対IED戦術について開示出来る範囲で書いていきます。米軍を始めNATO諸国における今日の対IED戦術は、①装置の無力化、②部隊の訓練、そして③敵ネットワークへの攻撃、という3本柱から成り立っています。

 ①装置の無力化には、対IED戦術に必要な装備の配備、起爆前の無力化もしくは爆発被害の軽減、爆破効果と死傷者の低減、そしてトレンドの把握と対策の研究が含まれます。

 ②部隊の訓練には、現場の各部隊に対して対IED戦術に必要な訓練プログラムの作成と提供、戦場における事例の迅速な共有、そして統合組織を介した他軍種との事例の共有が含まれます。

 ③敵ネットワークへの攻撃には、発見された装置の解析と鑑識を含めた敵ネットワークの解明のための戦果拡張、並びに戦術レベルから戦略レベルまでに至る作戦及び情報部隊による解析された情報の融合が含まれます。

対IED戦術(1)
 イラク・アフガン戦までも、IEDを無力化する任務はそれを専門とする爆処理班(EOD)が担当していました。これはイラク・アフガン戦以降も同じです。ですが、それまではEOD内部でしか事例の共有はされておらず、また他軍種のEODとの合同訓練でも実施されない限り、他軍種とのEODとの情報交換の正規のパイプはありませんでした。更に、以前でも装置の解析は行われていたものの、その特徴のデータベース化や世界の別の場所での事例との比較については大々的かつ組織的には行われていませんでした。

 イラク・アフガン戦では多国籍部隊による作戦が展開されたことから、米軍内だけでなく、NATO軍やその他の同盟諸国との情報の共有化が部隊の生存性の向上に繋がるとされたことで、組織だった対IED戦術の確立が加速されました。
(2)へ続く



Posted by Shadow Warriors Training at 22:13 │小ネタ