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Posted by ミリタリーブログ at

2023年03月24日

銃撃戦を安全に経験するには(5)


 人間は極度のストレス下におかれると予期せぬ心理的・生理学的な現象を経験します。よく知られている現象の1つが目の前の一点しか見えなくなるトンネルビジョン(視野狭窄)がありますが、周りの物音や発声が聞こえなくなる聴覚障害もあります。その様な現象が起こった場合でも敵の動きに対して回避や応戦などの行動をとれる様になるには、フラットレンジでのトレーニングだけでは不可能です。

 銃の取り扱いも同様で、フラットレンジでは多種多様な邪魔やプレッシャーの中で落ち着いて弾倉交換や故障排除が出来る様に訓練しますが、Force-on-Force訓練では視野狭窄や聴覚障害、その他人間の行動に悪影響を及ぼす心理的・生理学的現象の下でもその様なガンハンドリングが「自動操縦」の様に行えるか否かを試すことが出来ます。

 競技射撃では職人的な射撃技術が勝敗を左右しますが、実戦では戦術的柔軟性が生死を左右します。そこで必要なものは形や理想への拘りではなく、撃たれないための、もっと極端に言えば生きるための執念になります。その執念(マインドセット)を身に着ける、または必要性を理解するためにあるのがForce-on-Force訓練になります。言ってみればフラットレンジでの訓練は射手を育てるためにあり、Force-on-Force訓練は戦術家を育てるためにあります。

 そこでよく受ける質問として、フラットレンジで基礎を身に着けてからForce-on-Force訓練を受けるべきか、それともForce-on-Force訓練を先に受けるべきか?がありますが、これには答えはありません。なぜ答えがないかと言うと、フラットレンジでの訓練とForce-on-Force訓練はそれぞれ一度きりで終わるものではなく、それぞれで学んだことを別の訓練で試し、またそれを繰り返すことが必要だからです。

 訓練とは学習目標に達するための手段ではありますが、それだけではなく、失敗を経験する機会でもあります。その失敗があればあるほど、技術や戦術の習得に向けた「本気度」のレベルが高まります。そして射撃や戦術訓練において「本気度」を上げるきっかけとなるものがForce-on-Force訓練になります。死ぬことなく、しかしながら多くの教訓を得られる銃撃戦のシミュレーションとして、Force-on-Force訓練をお勧めします。

終わり
  

Posted by Shadow Warriors Training at 09:54小ネタ

2023年03月06日

銃撃戦を安全に経験するには(4)


 また、レンジでのドリルやマッチでは、敵となる標的の位置や使用するバリケードや構造物の位置が固定されていることから、それぞれの課題やステージで行うべきことは技術的にも戦術的にもそれらに応じてパターンが決まっています。勿論、技術や戦術の基礎を身に着けるためにはそれで良いのですが、それらを絶対的なデフォルトとして理解したり身体に染み付けてしまうと、現実の世界では通用しません。

 Force-on-Force訓練では自由意志を持った生きた人間が「敵」となることから、動いたり隠れたり、そして撃ち返してきます。ここでパターン化した技術や戦術が染み付いていると、予測不可能な動きをしてくる敵に対応することが出来なくなります。何故か?人間は悲しいことで、訓練や経験していないことをいきなり実際の場で適切に対応することが出来ません。逆に言えば、実際の場でのパフォーマンスレベルは訓練で鍛えたレベルかそれ以下までしか発揮することが出来ません。

 決まったコースやドリルにおける固定された標的だけを撃つトレーニングしか経験がない場合、身体に染み付いたパターンから逸脱した行動をとる生きた人間を相手に戦うと、それに対する経験値の低さから思考が停止してしまいます。この思考停止の長さは人によってそれぞれですが、一瞬であれども回避行動や応戦に遅れが生じ、結果として撃たれることに繋がります。人間は対応すべき選択肢が増えたり、対応すべき相手の行動が予期せぬものである場合、リアクションを取るまで時間を費やしてしまいます(詳しくはOODAループやHickの法則を調べて下さい)。

(5)へ続く
  

Posted by Shadow Warriors Training at 00:24小ネタ