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Posted by ミリタリーブログ at

2013年05月31日

反復演練


 メディカル・トレーニング中の1コマです。両手は使えるが暗闇の中との想定。腕に被弾したバディーの助けを呼ぶ声の方法に這って行き、バディーに負傷の詳細を確認した後に、ターニケット(止血帯)と圧迫包帯(Hバンデージ)を用いてケアしているところです。
 
 訓練は段階的に難しくなっていき、最終的にはフル装備で複数の患者(リアルなメイク付き)をケアしたりします。その際にはもちろんトリアージが必要になりますが、戦闘衛生ではトリアージよりも大切なことがあり、それを疎かにすると「訓練中止、やり直し!」となります。
 
 止血帯の使用に関しては様々な意見がありますが、動脈性出血を伴う創傷を負った場合、ものの数分で失血死する可能性がありますので、銃傷のケアでは必須アイテムです。  

Posted by Shadow Warriors Training at 09:41小ネタ

2013年05月27日

タクティカル・インストラクターとは?

 私はTactical Firearms Instructorコース以外にも、アメリカの公的機関や私的団体が提供するインストラクター・レベルのコースを4つ修了しています。また、過去には、所属していた組織において教官や訓練指導員として勤務していました。タクティカル・インストラクターとはその名の通り、戦術や戦闘技術に特化したインストラクターです。しかし、単にその分野における深い知識や経験を有しているだけでなく、一般的なインストラクターとは大きく異なる「要件」や「心構え」を備えていなければなりません。そこで今回は、私の経験を基に、タクティカル・インストラクターの基本的な要件や心構え等について書いていきたいと思います。

 一般的にインストラクターには5つの役割が求められます。それらは、教育者・コーチ・モティベーター・模範者・評価者です。教育者としては、新しいことを教えたり、過去に教えたことを復習させることで、訓練生の新たな運動スキルを成長させます。一方、コーチとしては、反復演練させたり、成功へのヒントを与えることで、訓練生がテクニックを習得する手助けを行います。また、モティベーターとしては、訓練生の相談に乗ったり、1人1人に応じた練習方法やレベルアップに関する助言や動機付けを行います。さらに模範者としては、教えた理論を自らの行動により実践することで、訓練生の良き例となることに徹します。最後に評価者としては、訓練生との間の私的な関係に左右されることなく公平に「可否」の判定を下します。ここで「否」とされた課題があった場合は、前述の全ての役割を通じて訓練生がその課題を克服し、最終的に「可」と判定されるまで努力を惜しみません。

 ひとつ断っておきますが、ここで言う「可否」の判定と「レベル」の判定とを混同しないで下さい。トレーニングとは、訓練生に技術や理論を提供してそれらを植え付けるためのものであり、訓練生のスキル・レベルを評価判定するためのものではありません。スキル・レベルの判定は「検定」などと呼ばれ、トレーニングとは別の次元のものです。技術の習得のために「訓練」を受け、その技術を維持するために「練習」をし、そしてその技術レベルを計るために「検定」を受けるのです。更に、この「訓練→練習→検定」のサイクルは繰り返されなければ意味がありません。それは、今それが出来なければ、過去に出来ていた事実はただの「記録」であって「実力」とは見なされないからです。

 これら役割を果たしながらトレーニングの提供や評価判定をするにあたることから、インストラクターに求められる一般的な要件としては、
  1)訓練生の間違いに気付き、その場で修正出来ること。
  2)訓練生1人1人の価値観を尊重し、それぞれに応じた教え方を実践出来ること。
  3)常に新しい知識・技術を得るために、自らのトレーニングを継続すること。
  4)新しい情報や技術を訓練生にフィードバックすること。
  5)常に訓練生の立場でトレーニングの内容や教え方を見直すことが出来ること。
  6)訓練生の錬度を客観的に評価出来ること。
  7)提供するトレーニングの内容が、新しさ・現実性・関連性を満たしていること。
などが挙げられます。なお、これら以外にも人間性、教え方、訓練の内容などに関する事がまだまだ沢山あります。

 そして、タクティカル・インストラクターは上記に加えて、
  1)何故その技術を教えるのかを理解し、理由を説明できること。
  2)反対に、何故特定の技術を教えないのかも理解し、理由を説明できること。
  3)誤ったことを教えた場合、訓練生の命が危険に曝されることを理解していること。
といった要件も求められます。これは、タクティカル・インストラクターが訓練生の明日の命を預かる立場にあることから当然のことです。テクニックの戦術的背景を理解していなかったり、見た目重視で戦術的価値の低いテクニックに固執する等は、この世界では一切通用しません。

 タクティカル・インストラクターにとって、訓練を提供することや検定を受けさせることは単なる通過点であって、最終目標ではありません。同様に訓練生にとっても、訓練を受けることや特定のレベルに達することは単なる通過点であって、最終目標ではありません。タクティカル・トレーニングの世界における最終目標とは、「戦いに生き残る」ことなのです。そのためタクティカル・インストラクターは、訓練生の命を預かる覚悟を胸に、自らも積極的に様々な訓練を受けながら理論や技術の研究に日々研鑽していかねばなりません。また、戦術や戦闘技術だけに留まらず、指導方法を始め、チームワークやリーダーシップの育成方法などに関する学術的な分野の勉強も続ける必要があります。

 残念ながらこのページで全てを書くことが出来ませんので、今回は基本的なことを述べるまでとしました。この世界に入って間もない方々や、これからこの世界に入る予定の方々にとって、今回のコラムが何かの役に立てば幸いです。  

Posted by Shadow Warriors Training at 01:08トレーニング哲学

2013年05月25日

ナイフによる攻撃

 イギリスにて反英思想を持つイスラム原理主義者によるテロと呼べる殺人事件が発生しましたが、今回は爆発物や銃器でなくナイフを用いていたことが大きな特徴と言えます。我が国と同じ位とまではいきませんが、英国も銃規制が厳しい国です。しかし、ナイフとなれば入手が容易であるだけでなく、犯人が携帯していても銃器より隠匿性が高いことから、法執行官にとっても発見が容易でないことが大きな問題です。

 一般的に銃を用いた犯行よりもナイフを用いた犯行の方が殺傷性が低いと思われがちですが、それは大きな間違いです。その攻撃範囲内においては、刃物(ナイフに限らず料理用の包丁なども含む)は銃器と同レベルの殺傷能力を有しています。FBIがアメリカにおける殺傷事件について興味深い統計を出していましたので、以下に紹介します。
 ・警察官を標的とした事件のうち、攻撃が刃物によるもので警察官が死亡した割合:3%
 ・警察官を標的とした事件のうち、攻撃が銃器によるもので警察官が死亡した割合:4%
 ・銃器による負傷者のうち、傷を負ったことにより死亡した割合:10%
 ・刃物による負傷者のうち、傷を負ったことにより死亡した割合:30%

 また、別の研究によると、
 ・ナイフによる攻撃は正確で、かつ、弾丸よりも深い傷を負わせることがある。
 ・至近距離での攻撃では、ナイフの持つ殺傷能力は銃器のそれを上回る。
とされています。ナイフを振り下ろす際の運動エネルギーは、被害者の体に接触する際に刃という非常に面積の小さな部分に集中することから、至近距離で攻撃されると深く大きな傷を負うこととなります。

 さらに、鑑識や解剖の立場から見た刃物による攻撃は、
 ・典型的な殺人事件において、刃物による傷は肋骨の間を貫けて深さ3~4センチ程に達している。
 ・殆どのケースにおいて、被害者は複数の傷を負っている。典型的な死因は、最後の数回の攻撃にて受けた傷とされている。
 ・刀身の短いものでも、肋骨に守られていない腹部の場合、傷の深さは8~10センチにまでに達する。
 ・3センチの長さがあれば、肋骨を貫ける。
 ・4センチの長さがあれば、心臓に達する。
といった特徴が挙げられます。

 相手の攻撃がナイフであろうが銃器であろうが、最も大事なことは警戒態勢を緩めないことです。これは何も戦地での話しだけでなく、街中でも該当します。携帯でメールを打ちながら歩いていたり、周囲の音が聞こえない程の音量で音楽プレーヤーを使用している等、周囲の状況を観察することが出来ないと攻撃対象にされたり攻撃の予兆を掴んだりすることが出来ません。

 平和な日本でも、通り魔などによる殺傷事件が至る所で発生しています。武術的なディフェンス・テクニックをここで書くことは出来ませんので、このブログでは警鐘を鳴らすだけに留めておきます。周囲をよく観察し、疑わしい人物がいたら手元と腰周りに注意して下さい。攻撃は通常、手から繰り出されるものであり、武器は大抵の場合、腰周りに隠匿されています。

 もう一度言っておきます。反撃の技を習得するのは2の次です。最も大事なことは、警戒態勢の維持と異常事態の早期発見に努めることです。  

Posted by Shadow Warriors Training at 23:34小ネタ

2013年05月24日

メディカル・キットについて(5)

 この様なキットを所有する際には、必ず最低でも年に1回はTCCC/CLS訓練を受けて制度の変更などを含む新しい知識と技術を習得して下さい。勿論、コレクションとして保有する場合を除きますが、せっかく持っているなら訓練を受けておいた方がイザという時に助かります。また、訓練を受けたなら、次の訓練までの間にひたすら練習を繰り返すことも大事です。その際、夜間の戦闘を想定して目隠しをした状態でも必要なアイテムだけを素早く取り出して使用出来るように演練することも必要です。実際、私は、目を開けた状態と目隠しをした状態で、両手・右手だけ・左手だけの3パターンの合計6通りで演練して錬度維持に努めています。もちろんその際には規程時間内に所定の動作が終えられるか否か、ストップウォッチを使って計測します。
 ここではあえて使い方の説明はしませんでした。見よう見まねで使われると、とんでもない事故を引き起こす可能性があるからです。射撃訓練に費やす時間と同等に、戦闘衛生訓練に費やす時間も重要です。自分のことは自分でケアする。仲間のことは自分たちでケアする。衛生兵による、ある程度高度なケアを受けられるのは、銃撃戦が止んでからです。

 Shadow Warriors Trainingではプロの方々を対象に、これらのアイテムを用いて、米軍TCCC/CLSプログラムに基づいた戦闘外傷ケアのトレーニングを企画しております。また、一般の方々に対しては、内容の一部を変更した、大規模災害時における外傷ケアのトレーニングを企画しております。詳細につきましては準備が整い次第、サイトにアップ致します。  

Posted by Shadow Warriors Training at 13:50小ネタ

2013年05月24日

メディカル・キットについて(4)




 小物類として、手術用グローブ(ラテックスフリー)、鉗子、三角巾、ガムテープがあります(写真上段)。また、経鼻エアウェイと医療用ローション、緊張性気胸のケアのためのカテーテルとアルコールパッドも取り出し易いようにセットしてます(写真中段)。そして最後になりましたが、四肢の負傷時に先ず必要となる止血帯もあります(写真下段)。止血帯は、SOFTTなどのバーを巻いて締め付けるタイプの高価なものがありますが、この写真の伸縮性バンドのものは5分の1程の価格でほぼ同一の働きをします。
 なお、メディカル・ポーチに入れている止血帯は予備のものです。止血帯は被弾直後に必要となりますので、チェストリグとベルトにも1つずつ専用のポーチに入れて携行します。  

Posted by Shadow Warriors Training at 13:39小ネタ