2017年05月08日

MACTACについて(2)

MACTACについて(2)
 このMACTACでの問題・課題は、これまで高度な戦術訓練を受けてきたSWAT隊員だけでなく、一般の制服・私服警官もがこの新たな脅威に対応しなくてはならないということです。これまでは単独のアクティブ・シューター事件や立て篭もり事件であったものが、このMACTACの定義では、それら1つの「攻撃」は、巧みに計画された全体の一部であり、また次の段階への通過点であると言うことです。また、一連の攻撃の中での初期の段階の攻撃は、それに対応する警察部隊や救急部隊を誘き寄せるための手段であることも特徴です。

 そこでロス市警やラスベガス市警、ロサンゼルス郡保安官事務所などでは既にSWATだけでなくパトロールの警察官(日本で言う地域課員)も参加して、同時多発的な攻撃への対処訓練を実施しており、その流れは全米だけでなく欧州にも広がっています。具体的な訓練内容としては、大規模な部隊を一度に投入せずに常に予備戦力を残して対処すること、SWATと制服警察官との混成部隊での初動を図ることでSWAT戦力の枯渇を防ぐこと、そして救急チームに頼らずに自力で現場で負傷者に最低限のケアを施すことです。

 勿論この様な訓練を実施するには、制服警察官に対して高度な戦術訓練と最低限の戦闘衛生訓練を施すことと、SWATと制服警察官との連携(戦術とコミュニケーションの双方)の強化が必須課題となります。ですが、新たな脅威に対抗するためには、小規模かつ混成部隊による対応を取らざるを得ません。仮に最初の攻撃が唯一のものであり、事件そのものがMACTACの定義に当てはまらないと判断されれば、増援部隊を送り込むことが出来ます。ですが、最初の攻撃がこれから始まる一連の同時多発攻撃の口火であった場合、そこに大部分の戦力を投入してしまうとそこから戦力を分散させることが極めて難しくなります。

 また、MACTACの特徴としては、屋内戦だけでなく繁華街や観光スポットといった屋外での「戦闘」を余儀なくされることが挙げられます。ムンバイやパリの事件でご承知の通り、立て籠もりが発生するまではテロリストは路上で警官隊と銃火を交えていますが、この屋外戦闘は欧米のSWATでもこれまで特に力を入れて訓練してきた課目ではないことから、軍隊レベルでの市街地戦の動きを余儀なくされます。

 具体的には、屋内戦ではスタックを組んだりするなどして部隊が一塊となって行動する戦術が主流であったことに対し、屋外戦では自動小銃などによる一斉掃射での被害を少なくするために複数のツーマン・セルやフォーマン・セルによる分散化された戦術を余儀なくされます。部隊が分散化することで、敵の攻撃が1点に集中することが避けられると共に、その隙をついて射撃と運動(Fire & Maneuver)を用いて敵の虚を突いて攻撃を図ることが可能となります。しかし反面、部隊が分散化することで動きだけでなく全体の火力のコントロールが難しくなり、訓練を重ねていないと結果として分散化されただけで戦力的にダウンするだけになりかねません。
(3)へ続く



Posted by Shadow Warriors Training at 23:32 │小ネタ