2016年06月12日

故障排除(3)

故障排除(3)
 遮蔽物の陰に入った場合でも、遮蔽物に向かう途中の場合でも、故障排除のやり方に変わりはありません。また、拳銃・短機関銃・自動小銃といった銃の種類による違いもありません。

1)装填不良の場合の故障排除の要領は、「たたく・引く・狙う・撃つ」です。英語で言う「Tap・Rack・Bang」です。
先ずは、弾倉が確実に銃に填まった状態を作るために、弾倉底板を叩いて弾倉を確実に装填します。
次に、スライドを引いて薬室に弾を装填します。
最後は、狙いを定めて引き金を引くだけです。

2)排莢不良の場合の故障排除の要領も1)と大差ありません。
違いがあるのは、スライドを引く動作です。拳銃の場合は非利き手でスライドを引く際に同時にストーブパイプとなって突き出した薬莢をはじき飛ばします。短機関銃や自動小銃の場合は、利き手だけで排莢口を下に向ける様に銃を構え、非利き手を傾けた銃の下側を通して排莢口から突き出た薬莢を引き抜いた後に、非利き手でスライドを引いて装填を完了させます。

3)2重装填の場合は、先ず1)と同じ要領で故障排除を試みます。運良く引っ掛かった薬莢が外れれば故障は直ぐに解消されるので素早く射撃を継続することが出来ます。1)と同じ要領でも故障が排除出来ない場合は、正規のやり方で2重装填を解消します。
先ずは、弾倉を抜きます。大抵の場合、2重装填の原因は弾倉の送りにあることが多いので、抜いた弾倉の再利用はしません。もう一度2重装填を起こしてしまう確率が高いので、残った弾を後に利用するためにポケットなどに押し込むか、そのまま地面に落とします。もし移動中に意図せず落としたとしても回収を試みることは自殺行為ですので、決して脚を止めずに敵から「撃たれ難い」状況を維持することに集中します。
次に、マグウェルから指を入れて中に引っ掛かっている薬莢を取外したり、スライドに引っ掛かっている薬莢を引っこ抜きます。
そして、非利き手でスライドを3回素早く引いて薬室に残った薬莢を抜くと共に、詰まったゴミを排除してスライドが正常に動く状態を作ります。
最後に、新しい弾倉を装填して、スライドを引いて薬室に弾を込め、狙いを定めて射撃を再開します。

これらの動作を移動しながら行う場合は、銃を直視することはありません。一時期撃ち終わった銃を傾けて薬室の状態を確認してから再装填するやり方が一部で流行りましたが、あれは全く役に立ちません。その理由としては、1)戦闘中に敵から目を離して銃を直視する行為は戦術的に非有効であり、2)夜間やローライトの状況で薬室の状態を確認することは出来ない、です。それよりも、脚を動かしながら上記の1)、2)、3)の排除要領を両腕が自動的に実施して射撃を再開出来るようになる方がはるかに重要かつ戦術的に有効です。

しかし、拳銃を除き、3タイプの故障排除を片手で実施するのは移動間では極めて困難です。よって、被弾して片腕が使えなくなることと銃の故障がほぼ同時に発生したのであれば、地物や装具や身体の一部に銃を依託して銃を安定化させなければ、片手で故障排除を実施することが出来ません。従って、腕一本だけで短機関銃や自動小銃の故障を排除するためには、遮蔽物の陰に入る必要があります。

これら3タイプの故障排除は訓練用のプラスチック製の薬莢を用いれば安全に実施することが出来ますので、このブログをお読みのプロの皆様は、是非ともプラスチック製薬莢の使用許可を部内で取って頂き、
1.両腕を用いた移動間における演練
2.利き腕だけを用いた遮蔽物の陰での演練
3.非利き腕だけを用いた遮蔽部の陰での演練
4.夜間やローライト環境において、上記3つのケースでの演練
を実現して頂きたいと願っております。
終わり



Posted by Shadow Warriors Training at 22:05 │小ネタ