2015年01月31日

トレーニングの目的(3)

トレーニングの目的(3)
 では教える側として注意すべきことは何なのか?その2の最後で「実戦ではドリルで習ったテクニックにアレンジを加える必要がある」と書きましたが、その一例を説明して受講生の思考回路を刺激したり視野を広げることが挙げられます。残念ながらトレーニングでは想定し得る全ての状況を再現することは不可能です。そこで一部を再現して実施する訳ですが、そこでは全てのテクニックが必ずしも必要であるとは限りません。

 敵の攻撃を受けた後に応戦しながら遮蔽物の陰に移動し、敵の攻撃をかわしながら反撃する。これを実現させるために必要となるテクニックは、「ターン&ピボット」、「移動間射撃」、「遮蔽物の陰からの射撃」、「銃撃戦後のフォローアップ」と大きく分けて4つになります。しかし、現実世界では何が起こるか分かりません。よって、インストラクターは受講生に対して、「負傷時の対処」、「故障時の対処」、「味方との連携」、「複数標的への対処」などと言った、ドリルでは必要とされなかった様々な別のテクニックも状況に応じては組み合わせて用いる必要があることを説明しておく必要があります。

 そして特に教える側として重視すべきは、出来るだけ多くのオプションを提示することです。ここで言うオプションとは銃器の運用の仕方や戦術のことです。受講生はそれぞれが所属する組織の訓練方法や規則に沿ったやり方が身体に染みついています。そこでインストラクターは、組織のルールに従わない様々なテクニックを教え、想定される状況でどのテクニックや戦術が受講生にとって最も現実的かを体験させる必要があります。また、やや現実離れしたテクニックも実際に体験させることで、「出来やしない」と思っていた誤解を解き、そのテクニックもオプションとして提示することも重要です。

 トレーニングはインタラクティブであるべきです。教える側と教わる側との間で色々な考え方などが双方向で行き来するのがベストです。一方的に喋り続ける教え方と単に聞くだけの教わり方が組み合わさっては、何も生まれないばかりか何も残りません。何かを意識して能動的に学ぶ側とその熱意に応えてフォローアップを怠らない教え方が組み合わさってこそ、学んだテクニックや戦術が頭と身体の両方で理解され、単なる受講の記録や記憶ではなく、イザという場合に身を助けるための「武器」となります。

 と言うことで3回に渡って長々と持論を述べましたが、要するに、学ぶ側は「単なる経験のために受講するのではなく最悪の状況で自分の身を守れる技を身に付けると言った高い意識を持つこと」、教える側は「単に知っていることを伝えるだけでなくトレーニングの翌日に受講生が実弾を発射する状況が生じたとしても様々なテクニックを駆使して戦えれるように手助けすること」、がタクティカル・トレーニングの本来の姿であると考えています。

 わざわざ休みを利用して個人で受講料を払ってでも何かを学ぼうとされるSWTの受講生の方々には常々頭が下がります。この3部作が、これからトレーニングを受けようとされている特にプロの方々が、これまでのプロ用コースの受講生と同等の高い目的意識を持って受けに来て頂くための助言となれば幸いです。



Posted by Shadow Warriors Training at 21:41 │小ネタ