2020年04月19日

戦闘衛生について(1)

戦闘衛生について(1)
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 さて、連日の報道で医療崩壊という言葉が取り上げられていますが、これに関してTCCCの目線から今回のブログを書きたいと思います。TCCCの現場は常に「医療崩壊」のリスクと共存しています。しかしながら、これは後送先の医療機関における対応能力が原因ではありません。TCCCの現場では、負傷してから応急処置が開始されるまでのタイムラグと、救護開始後の医療資源の枯渇といったリスクに常に晒されます。

 ご存じの通りTCCCには、敵との交戦中の段階であるCare Under Fire(CUF)、敵からの直接的な脅威下に居ないもののCUFの状況へと再び戻る危険性のあるTactical Field Care(TFC)と、TFCの後に医療機関へ後送中のTactical Evacuation Care(TEC)の3段階があります。CUFの段階で出来ることは非常に限られており、その処置は負傷者本人が施すことになります。よって、この段階ではSelf-Aid(自己によるケア)で出来る範囲の事しか処置を施せません。

 例えば敵の攻撃を受けて大腿部に貫通銃傷を負った場合、負傷した隊員が先ずすべきことは何か?負傷部位の確認や止血帯の適用は不正解です。正解は、応戦し遮蔽物の陰に移動する、です。負傷者にとっては負傷そのものが脅威と思われがちですが、その負傷のケアも本人を含めた部隊の生存も敵を制圧することなくしては不可能です。脅威の排除、これこそがTCCCの現場で第一に行うべきことであり、よって衛生兵を始めCLS(Combat Lifesaver)資格を有する他の隊員も、敵を制圧するまでは全員一律に射手としての任務に従事します。もとい、射手としての任務のみに集中する必要があります。

 複数いる中で何故特定の隊員だけが撃たれたのか?闇雲に撃ってきた弾に運悪くたまたま当たった場合は別ですが、その理由は、撃たれた隊員が敵から見えていたからです。隠掩蔽を巧みに利用しながら移動していても、ほんの僅かなスキは出来てしまいます。伏撃にせよ遭遇戦にせよ、こちらが先に見えた敵から排除していくのと同様に、敵も先に見えた順に攻撃してきます。つまり、敵の初撃で負傷した隊員は、手近に遮蔽物となるものが大抵の場合ありません。

 TCCCでは全隊員に止血帯を用いたSelf-Aidを訓練しますが、この様な状況下では、負傷者自身が自らの負傷部位に対する適切なケアが出来難いといった問題があり、また初期処置中の更なる負傷のリスクもあります。よって、適切なケアが施されるまでのタイムラグが発生するのがTCCCの常であることを念頭に置いておく必要があります。

(2)へ続く



Posted by Shadow Warriors Training at 12:03 │小ネタ