2018年04月22日

戦闘衛生に関する補足(1)

戦闘衛生に関する補足(1)
 SWTのトレーニングでは残念ながら戦術的・技術的内容を履修する時間には限りがあるといった都合上、戦術的に深い内容の議論をする時間を設けることが出来ませんので、SWTにてCLS訓練を受けた方、これから受ける予定の方、他で同種の訓練を受けた方の区別なく、戦闘衛生に係わる検討すべき事柄をいくつか紹介したいと思います。

 先ずは患者集合点(Casualty Collection Point / CCP)についてです。

 戦闘の正面に火力を集中する必要性があることは明らかですが、正面に火力を集中し過ぎると万が一突破された際に内部が被害を被ります。ですが正面の部隊は周辺の警戒として自らの後方も見ており、また十分な火力を有していることから、正面の部隊を後方から攻撃するには攻撃側もリスクを伴います。しかしながら患者集合点は十分な戦闘行動をとることが出来ない負傷者と彼らのケアで精一杯な衛生隊員しかおらず、敵の不意の攻撃に非常に脆弱です。

 従って、正面に火力を集中するのは勿論ですが、同時に患者集合点の強靭化も考慮すべき課題になります。患者集合点が攻撃されると部隊としては内線への対応を迫られるだけでなく、心理面での被害も被ります。自分が負傷しても味方に十分護られないのではないか?自分が敵の突破を許したがために負傷した味方を犠牲にしたのではないか?これらの様な心の迷いが生じると正面の戦闘に集中することが難しくなりますので、敵としてはそこが狙い目となります。主力と戦わずして敵戦力の減退化を図れれば、戦略的な成功を得ることが出来ます。

 負傷者を狙うと聞くと非常に卑怯な行為のように思えますが、それは警察比例の原則や専守防衛といった縛りの中で戦いを強いられるがための思考回路です。敵はそんなこと知ったこっちゃないです。むしろ、敵はこちら側の法的・モラル的な縛りの隙をついてきますので、患者集合点が狙われることは敵が正規軍であろうが非正規軍であろうが最初から覚悟すべき課題です。

 従って、戦闘の激化に伴い不自由なく戦闘行動をとれる隊員を数名患者集合点に配置することをSOPに取り入れると共に訓練しておく必要があります。
(2)へ続く



Posted by Shadow Warriors Training at 23:56 │小ネタ