2017年12月16日

戦場での輸液について(2)

戦場での輸液について(2)
 では、先ず、フリーズドライ血漿とは何なのか?これは乾燥状態にある血漿で、200mlの水で数分(3~6分)で負傷者に対して使用できる血漿製剤になるものです。血漿製剤とは血液から出血の防止に必要な各種の凝固因子が含まれる血漿を取り出したもので、一般的な医療のための製剤は、品質を保持するために-20度以下で凍結されています。しかし、最前線では冷凍装置を設備する余裕がなく、また移動中の部隊が冷凍装置を持ち歩くことも出来ません。また凍結状態のままでは使えないないことから、使用前には常温に戻す手間が必要になります。この様な欠点があることから、戦場での簡易な取扱いを目指して1994年にフランス陸軍がフリーズドライ血漿の採用を開始しました。

米国では(日本でも)血液製剤を介した肝炎の媒介が問題となり認可が下りていませんが、フランスでは過去に比較してより厳しい規準と技術で検査された血液から造られるフリーズドライ血漿は様々なリスクが極めて低いと判断され、実用化に至りました。フランス製のフリーズドライ血漿は、少なくとも10人以上から採られた血液からなり、希釈されることで抗原抗体反応のリスクを下げていると言われています。ただこの点については各国の認可機関による更なる検証が必要なため、現にアメリカでは未だFDAによる認可は下りていません。ですが、特殊作戦司令部(USSOCOM)のリクエストから始まったホワイトハウスとFDAの協力により、2020年までに米国内にて生産が可能な体制の確立を目指して動いています。

また、このフリーズドライ血漿は常温で2年間の保存が可能であり(凍結血漿製剤は1年間)、全ての血液型の負傷者に使用することが可能とされています。なお、米軍では作戦に持ち出して未使用のまま持ち帰られたものは、検査の後、訓練用として使用されるます。現時点では味方の陣地や医療施設から遠く離れた場所で活動するUSSOCOMに所属する部隊でしか使用されていませんが、FDAによる認可が下り国内生産が可能となった後は戦地に赴く一般部隊での使用も期待されています。
(3)へ続く



Posted by Shadow Warriors Training at 00:33 │小ネタ