2017年09月10日

巷でよく見る間違い(1)

 最近ではアドバイザーが就くことで細部までリアリティーにこだわった映画やテレビシリーズを見ることが出来ますが、まだまだ全てとは言えません。また、海外のトレーニング・スクールでも全てのディテールまでこだわって指導している訳ではないことから、ネットの映像や画像では間違ったことが直されないまま世に出回っています。そこで前回装備品の着装方法について言及した続きとして、何点か紹介したいと思います。

巷でよく見る間違い(1)
 まずはスリングについて。長物を拳銃と併せて使用する場合は、スリングの向きに注意する必要があります。特に1点式スリングの場合は、右利きの射手は右肩から左脇にかけてスリングの輪となる部分が通るようにしなければなりません。そうすることで手を離した際に、長物が自然と身体の左側に、つまり腰の拳銃とは逆方向に流れることになります。これを逆側にしてしまうと、吊り下げた長物が拳銃のあたりにぶら下がってしまい、トランジッションの妨げとなってしまいます。

 なお、2点式の場合は、スリングを肩にかけるのではなく首にかけるのが最も使い勝手が良い方法になります。私は2点式を好みますが、その理由は、背嚢を背負っていてもスリングの引っ掛かりが少ないので小銃が取り回し易いことと、何らかの作業などのために背嚢を背負ったまま小銃を身体から外す必要があっても簡単に実施出来るからです。また、リグやベストの胸や背中の部分にスリングが重ならないことから、スリングと装具の引っ掛かりも少ないのも理由の1つです。

 ただし、首にかけるやり方は小銃の重さが首にかかりますので、携行時には少し銃を持ち上げる様にして首への負担を減らす必要があります。ですがそれだけで首への負担を軽減出来るとは限りませんので、普段から首周りを鍛えておく必要はあります。

巷でよく見る間違い(1)
 次に挙げられるのは、移動時のマズルの向きです。銃を両手で保持した方がリテンションが強く、万が一敵と格闘戦に陥ったとしても、銃を取られ難いといった利点があります。ただし、両手での保持を意識するあまり、上の写真のように銃口を左右に振っていては、銃器安全四則にも反しますし、なんせ横にいて銃口を向けられている味方が非常に気分が悪いです。

 屋内戦などで移動速度が遅い場合はマズルダウンで構えても移動に差し支えないですが、野戦のように早い速度で移動する必要がある状況では、マズルアップが望ましいです。理由は、マズルダウンでは銃が脚の動きの妨げになるばかりでなく、万が一姿勢を崩してしまった場合の銃口の地面への接触を避けられるためです。また、味方を跨ぐ必要があっても味方に銃口を向けることもありません。

 近年のCQB訓練の影響でマズルダウンがあたかも正しいかのような誤解が蔓延していますが、米海軍SEALではベトナム戦争時代からマズルアップでの移動を部隊SOPとしており、現在でも陸軍や海兵隊などの他の特殊部隊においてマズルアップに利点を見出せない部隊は存在しません。勿論マズルダウンでの移動が最適とされる場面はありますが、状況に応じてアップがダウンを使いこなせれば良いのであって、上の写真のような横方向へ銃口を向けることだけは避ける必要があります。
(2)へ続く



Posted by Shadow Warriors Training at 23:27 │小ネタ