2017年05月26日

ターゲット・ハードニングとは?(1)

ターゲット・ハードニングとは?(1)
 先日イギリス・マンチェスター市で発生した爆破テロの後に、ロンドン市内をパトロールする警察官と兵士の様子です。国家のテロに対する確固たる姿勢が見れる、非常に「絵」になる光景です。この様な態勢を見せることで、次の事件の抑止に繋がるといった考え方がありますが、実際のところ効果としてはYESでもありNOでもあります。

 何も警備体制が敷かれていない施設よりも、非武装でも警備員が常駐する建物の方がテロ攻撃を受け難かったり、警棒だけを所持している警備員が就く施設よりも、臨時的であっても警察官が警戒にあたる施設の方がテロ攻撃を受け難いのは統計的に見て事実です。この様にテロ攻撃や犯罪などの標的になり易いソフト・ターゲットを、警備体制・反撃態勢を整えて攻撃を受け難くさせることを、ターゲット・ハードニング(発音的にはターゲット・ハーデニング/Target Hardening)と言います。

 そもそもテロリストは被害規模を大きくしてメディアの注目を集めることを目的としていますので、連中にとっての作戦の成否はどれだけ多くの人を犠牲に出来るかに係っています。そのため、商業施設・交通の要所・観光地といった人が多く集まったり行き来する場所が標的(ターゲット)として狙われますが、この写真のような「見せる警備」を行うことで、テロリストを人の集まりに近づき難くすることが期待出来ます。限定的ではあるものの抑止効果として一定の効果があることから、先に述べた実際の効果としては「YES」と言えます。

 反面、当初よりテロリストが警察官や軍人を標的としている場合には、反撃態勢を高めることで被害の規模を最小限にすることは期待出来ても、テロ攻撃そのものを抑止することはあまり期待出来ません。よって、この様なケースでは実際の効果は「NO」と成らざるを得ません。

 戒厳令を敷いて全ての交差点、駅、空港、港、政府施設、商業施設に重武装の警察部隊や軍隊を配置すれば、テロリストの行動は制限され結果として抑止効果が発揮されます。ですが民間人の日常にも支障が出ることと、物理的に人数が足りないので不可能です。そこでターゲット・ハードニングでは先に述べた大多数の人が集まる場所や交通の要所、攻撃の標的とされやすいシンボル的なランドマーク(ウエストミンスター大聖堂が写真の例です)、攻撃を受けた際の二次被害が懸念されるインフラ施設や化学工場などに優先的に警備部隊を配置します。

 当然、主要箇所に集中配備することでターゲット・ハードニングが成されないソフト・ターゲットのままのとなる箇所も出てきます。しかしその様な場所は、元々人の行き来が少なかったり、シンボル的な意味合いがない等、テロリストにとってメディアの注目を浴びない場所ですので、100%起こり得ない保障はありませんが統計学的に見て攻撃を受けるリスクが低い場所であると判断された場所になります。
(2)に続く



Posted by Shadow Warriors Training at 22:33 │小ネタ