2017年05月14日

MACTACについて(3)

MACTACについて(3)
 更に、MACTACでは警察官に考え方と心構えの変化を余儀なくされます。これまでのアクティブシューター事件や立て篭もり事件における警察部隊到着後の犯人の行動は、投降したり自殺を図ったり、ある程度の抵抗(反撃)を行うといったパターンに分けることが出来ます。しかし、MACTACで対峙する敵は高度な訓練を受けたテロリストであって、場合によっては警察部隊よりも強力な火力を有しており、警察部隊に対して反撃してくることが十中八九確実です。連中は元から警察部隊を殺害・排除してでもテロ行為を計画通りに遂行することを作戦としており、その作戦の中において警察部隊との交戦は始めから想定・計画されています。その為、投降や自殺は期待出来ず、警察部隊は当初から強大な火力を有するテロリストの徹底抗戦を受ける「覚悟」を持って現場に赴く必要があります。

 従って、欧米ではアメリカのNTOAといった団体を始め、MACTACはSWAT用ではなく一般の警察官を対象としたトレーニングコースとして存在します。そこでは射撃や戦術だけではなく、重武装かつ死を覚悟し警察部隊の殺害を作戦目標の1つとするテロリストとやり合うための心構えも訓練します。そこでは場合によっては「逮捕」を目的とした警察官としてのメンタルを捨て、「脅威の排除」を目的とする軍人としてのメンタルを備える必要性を提起されます。そして訓練生がもしこのメンタルの切り替えを躊躇したり出来なかった場合は、コースの中で行われる想定訓練で必ずと言って良いほど「殉職」することになります。

 幸い日本国内ではパリやムンバイの事件の様なことは起きていませんが、未来は不確かです。起こるとも言えなければ、起こらないとも言えません。ただ確かなのは、「敵」が用いてくる新しい戦術に対応出来なければ、市民や仲間を守るどころではなく自分自身も守れないと言う事です。捜査や鑑識が新たなテクノロジーを用いた犯罪に対応し続けるのと同じで、地域課や機動隊も新たな脅威に対応し続けなければならない運命にあります。テロリストが国内に浸透を図り、このMACTACが定義するレベルの攻撃を2020年のオリンピックで企てないことを祈るばかりですが、残念ながら平和を希求するだけでは安全は確保されません。対処能力としては勿論、抑止力として対応策を講じなければ、敵にとってソフト・ターゲットと見なされます。
(4)へ続く



Posted by Shadow Warriors Training at 20:36 │小ネタ