2017年04月23日

OPSECの弊害(3)

OPSECの弊害(3)
 従って、新しい技術や戦術を学びたい高い意識があっても、なかなか情報交換をする機会が与えられなかったり、ようやく情報が提供されたところでそもそも開示された段階で一定の制限が掛けられていたことから、真新しい情報が少なかったり肝心の部分が抜けていたりすることがある様です。

 それでも自分や仲間たち、強いては市民や国民を護るために彼らはどうしているのかと言うと、1つの例としては、情報交換や訓練の提供を行う非営利組織のメンバーに登録することです。この動きはアメリカでは特に盛んであり、警察署長クラスの学会とも呼べるIACP(International Association of Cheifs of Police)や、SWAT隊員等を対象としたNTOA(National Tactical Officers Association)、警察や憲兵隊の教官等が会員となるILEETA(International Law Enforcement Educators and Trainers Association)など多数存在します。そこでは組織の垣根を越えて、同じ高い意識を有する多くの仲間と知り合うことができるだけでなく、それら団体が提供する情報や訓練を受けることも出来ます。勿論、それら団体は「業界」のトップを目指すべく現職や退職した専門家が役員となって日夜研究を重ねているだけでなく、今ではそれら団体が提唱するスタンダードがその「業界」のスタンダードとして認識される程に成長しています。

 そしてもう1つの例が、民間のスクールで訓練を受けることです。世の中には思い付きで始めたとしか思えないほど程度の低いスクールも幾つか存在しますが、大抵の場合はそれまでの宮仕えの経験で感じた「必要とするトレーニングが受けられない」といった葛藤をバネに、「必要とする人に必要なことを提供する」ことを理念として設立されています。特に特殊部隊出身者から直接学べる機会は現職であってもそうそう有るものではなく、彼らの実戦経験に基づいた理論や戦術は、それこそ一般隊員や警察官が求めていたものです。それらスクールでは、同じ志を有する仲間と新たなネットワークを築き、互いの組織を離れて一緒に訓練出来る環境が与えられます。

 では、それら団体やスクールで学んだ内容が他に漏れる危険性はないのでしょうか?勿論、参加者の身分を審査することで、情報を提供して良い人物か否かは最初の段階で成されています。そして、訓練参加にあたては誓約書などで第3者への情報開示についての制限や免責について確認を取っています。これはSWTでも行っています。しかし、残念ながらリークする危険性は皆無ではありません。ですが、それは最初からある程度腹をくくっています。それをビビッていては商売になりませんし、それを気にして情報の開示を躊躇うようではOPSECが足枷となっていた宮仕え時代と変わりません。むしろ、例え官庁からクレームが上がったとしても、「おたくの組織でこのレベルの内容を教えてへんさかいに、皆うちを頼って来るんでっせ。それが面白うないんやったら、あんたらが自分らで教えたらどうでっか?」と逆に発破をかける位の心意気で皆運営を続けています。

 結局のところOPSECは必要です。守るものは守らなければなりません。しかしながら、それが自らの組織の発展や向上への障害となっている事実を知らなかったり見逃していては、元も子もない話です。OPSECを厳しくして必要とされる情報や戦術の共有を拒むのか、漏れる覚悟で必要とされるものを提供し全体の戦力強化に繋げるのか、今も昔も西も東も変わらず天秤は常に揺れ動いたままです。揺れ動いたまま苦労するのは天秤を握った上層部ではなく、揺れる天秤に振り回される現場なのですが・・・
-終わり-



Posted by Shadow Warriors Training at 19:27 │小ネタ