2016年11月14日

防弾盾について

防弾盾について
 一時期アメリカのSWATでは、建物の入り口までは盾を用いてスタックを組んで接近するも、バテリングラム等でドアを破壊して部隊の突入が完了した途端に盾を捨てて奥の部屋の掃討を行うといった戦法が流行っていました。確かに防弾盾は重くてかさ張りますので、狭い廊下や奥の部屋への移動には一見不向きなように思えますが、ロクな遮蔽物がない環境では唯一の遮蔽物と成り得る盾を捨てるのは部隊を危険に晒す行為となります。

 CQBの3原則である速度(Speed)、奇襲(Surprise)、攻撃性(Violence of Action)を持ってすれば相手の反応速度を上回るので、重い盾がなくとも被弾の可能性は低減させられるとの考え方もあります。確かにフラッドはこの考え方に基づいた戦術ですが、警察部隊が直面する現場は必ずしもフラッドが有効な戦術とは言えません。警察部隊が直面する現場では、人質立て籠もりや、自殺志願者などの籠城など、相手が地理的・戦術的に優位な状況にある現場です。

 ここで言う「地理的・戦術的優位」とは、特定の建物や部屋に陣取ることで犯人はその場と周辺の状況(構造や障害物などの情報)を警察部隊より詳しく知っており、加えて外部からの進入路が限られていることから警察部隊が突入してくる方向が予期出来ることを言います。つまり、立て籠もりの様な状況では、何らかの防護なしでは接近が感付かれた際に攻撃を喰らって味方に損害が発生する危険性が高いのです。

 よって、建物の入り口で防弾盾を捨ててしまうと、その奥の部屋や廊下で犯人と遭遇した際の防護を失うことになります。同時にバテリングラムなどの突入用特殊工具も入口のドアだけでなく各部屋のドアを破壊する必要が生じる可能性がありますので、フェンスや玄関のブリーチングに成功したからといって身軽に成りたい一心でその場に捨ててしまうと、後で部隊の衝力を削いでしまうことになります。

 また、防弾盾を携行する隊員は、盾を保持した状態で射撃が出来るように訓練されるべきです。盾を保持する隊員の後ろにいる隊員は、盾を持つ隊員の肩越しにしか前が見えないので視界が狭くなります。視界が狭いということは、射界も狭いということです。特にコーナーでは大抵の場合、盾を持つ隊員の方が後ろの隊員よりも先に前方の状況を見ることになります。よって、確認と同時に素早く対処すべき脅威がいた場合に備えて、盾を携行する隊員が盾を携行した状態で射撃出来る能力を有していた方が望ましいのは理解出来るかと思います。なお、盾を携行した状態でも高い命中性をアシストできる道具を挙げるとすれば、レーザーサイトになります。

 ただし、レーザサイトの取り扱いには注意が必要ですので、無駄に頼らないようにする必要がある事も留意して下さい。詳しくは当スクールのLow-Light Operationsコースで説明しています。



Posted by Shadow Warriors Training at 22:11 │小ネタ