2016年10月30日

海上阻止行動 (1)

海上阻止行動 (1)
 海上阻止行動(MIO/Maritime Interdiction Operation)とは、規制水域に接近する船舶や、疑わしき乗員や貨物を積載した可能性がある船舶に対して、乗船して乗員や貨物の検査を行う行動です。海自や海保の方々は日常的にこの様な作戦に従事したり訓練したりされていますが、陸自や機動隊の隊員のお客様から「教養の一環として知りたい」との声が寄せられましたので、戦術的な肝の部分は伏せながら紹介させて頂きます。

 なお、ここで紹介する内容は、私が過去に受けたNATOのMIOコースの内容に沿っています。よって、海自や海保が有するROEや戦術とは異なるかも知れませんので、予めご理解下さい。

 相手の船舶に乗船した後は、速やかに船舶をこちらのコントロール下に置く必要があります。それを実行するためには、兎にも角にも下記の5ヶ所を押さえる必要があります。
 1.艦橋(ブリッジ)
 言わずと知れた、船の頭脳にあたる部分です。ここでは船のほぼ全てを操作出来ることから、ここを押さえるのは極当たり前のことです。
 2.無線室
 不審船舶が必ずしも単独で行動している保障はありません。増援を呼ばれない為にも、船の「口を塞ぐ」ことは重要です。また、こちらが国連決議などの正当な根拠の基に行動していたとしても、相手が乗船検査を不当に受けさせられているなどといった「アピール」を世界中に放送する可能性もありますので、検査に問題がなく航行を再開しても良いとの判断が下されるまでは、口と耳を塞いで世界から孤立させる必要があります。
 3.機関室
 船の心臓部です。エンジンをコントロールする目的だけでなく、サボタージュ目的でエンジンを破壊・故障させないためにエンジンを守ることを目的とします。
 4.船尾操舵室
 ブリッジに代わり第2の操舵室として機能することから、ブリッジと同じくここも抑える必要があります。
 5.ハロン室
 ハロンとは燃料電池やエンジン、主甲板より下の階など水や泡消火剤にて消火が出来ない場所や無理な場所に充填させて酸素濃度を低減させて消火させる消火剤の一種です。CO2を用いる場合もありますが、この機能を故意に発動させられた場合は主甲板より階下の隊員が窒息死することになりますので、敵対行為としての消火剤の噴射を防ぐために消火剤のコントロール室を押さえます。

 以上5ヶ所は最重要箇所ですのでほぼ同時進行的に制圧させる必要がありますが、制圧後は主キャビン(船長室)も押さえる必要があります。その理由としては、ブリッジなどに置いていない書類などが保管されている可能性があることと、自衛用として船に備えられている武器や弾薬などの保管庫が置いてあるからです。
続く



Posted by Shadow Warriors Training at 23:00 │小ネタ