2016年07月24日

対車両テロ戦術(2)

対車両テロ戦術(2)
 では、その様な事件が起こった現場に急行する警察官としては、どの様な戦術が求められるのか?確実に言えることは、負傷者の規模に惑わされて手当てを優先しようとしないことです。残酷に聞こえるかも知れませんが、多重傷害事件で最も重要なことは素早い負傷者のトリアージと救護ではありません。何よりも優先すべきことは、脅威の排除です。

 これが実行されていなかったことで、2008年に秋葉原で起こった事件では救護中の救急隊員・警察官・一般人が、犯人によって背中から刺されるといったことが起こっています。犯人の目の前で動きを止めた者は格好の獲物となってしまいます。救命活動中であれば見逃してもらえる保障は皆無です。「自分には敵意も戦意もなく、人助けをしているのだから犯人は見逃してくれるであろう」と考える理想主義者であれば私は止めません。ですが、被害者を増やさないために、自分が被害者にならないためには、目の前で助けを求めている人を一時的に無視してでも目前の脅威を排除しない限り次の行動はとれません。

 交渉などの知力で何とかなるのは潜在的な脅威に対してのみです。現在進行形の脅威に対して唯一有効なのは武力しかありません。行使すべき武力をためらったり怠ったりしては正義は執行されません。逆に行使する必要のない武力を無差別に用いることも正しい正義の執行にはなりません。「正義なき力は暴力なり、されど力なき正義は無力なり」です。

 速やかに脅威を排除しなければ救急隊を規制線の内側に入れることも出来ません。むしろ救急隊は脅威が排除されるまでは規制線の外側で待機すべきです。となれば銃器対策部隊や特殊班に対してではなく、現場に最も早く到着する地域警察官に対して対アクティブ・シューター戦術の訓練を提供しなければならないことの重要性を、上層部が理解してくれることを僅かな望みをもって希望します。



Posted by Shadow Warriors Training at 23:51 │小ネタ